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第11話 - 9
それから一週間ほど経った。
海斗くんが、退院したらそのまま蘆屋先生のところに来たいという。圭太くんとユミちゃんが病院に行き、ボクは蘆屋先生のところで先生と一緒に待つことにした。
先生は奥の小部屋で準備があるというので、ボクは手持ち無沙汰。
気分が落ち着かずじっとしていられない。店中のテーブルを拭いて行ったり来たりして待っていた。
しばらくすると、3人がやって来た。
奥のテーブル席に案内し、蘆屋先生に声をかけた。
先生はボクに、3人に水を飲ませるように言って、しばらくするとセラピーの時の白衣姿で現れた。
「やあ、よく来てくれました。早速始めましょう」
先生は3人の額に水をかけて、それから白い小さな人形の形をした紙を配った。
「これからお浄めをします。
私が良いというまで両手でこの白い紙を挟んでいてください。目は閉じて。
良いというまで目も開けてはいけないよ。声も絶対に出してはいけない。
何があっても驚かないでください。
いいですね、手と目と口、私がいいと言うまでは絶対に目を閉じていてくださいね。
それからルイ君。
君は奥の部屋に入って、扉を閉めていてください。
私が良いというまで絶対に、こちらに入って来ないようにね」
先生の口調はいつも通り静かだけれど強くて、緊張感が伝わって来る。
ボクも3人も、黙ってうなずいた。
それから、先生から呼ばれるまで、ボクは奥の部屋でじっと座って待っていた。
店の方からは先生が何かを唱える低い声がゴニョゴニョ聞こえてくる。何を言っているのか分からない。よく聞こえない。
そう思っていると突然、先生が怒鳴るような声が聞こえてきた。ビックリした。先生のそんな声、初めてだ。
「去りなさい! あなたにはあなたの居場所に帰るんだ! 誰も侮辱などしていない! 自分の場所に帰るんだ!」
それからトーンは落としているけれど結構大きな声で「恥じなくてよい」「無意味な執着だ」などと諭す言葉が断片的に聞こえてきた。
しばらく静かな時間が流れて、先生がドアをノックして開けた。
「ルイ君、お待たせしました。終わりましたよ」
時計を見ると、40分くらい経っていた。もっとずいぶん長い時間が経ったような気がする。
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