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第11話 - 10
「ルイ君、みんなに煎茶を入れてくれますか。
こちらで一緒に飲みましょう」
お茶のセットを持って、みんなの囲むテーブルに加わった。
3人とも放心している様子だ。
お茶を一口飲んで落ち着いたのか、海斗くんが神妙な顔で口を開いた。
「先生、ありがとうございました。
実はオレ、どうしたらいいか分からなくて怖かったんです」
もともと饒舌ではないタイプの海斗くんなんだけど、ポツリポツリと言葉を選びながらこれまでの事を話してくれた。
海斗くんは、出会って間もなくトモちゃんに告白されたそうだ。
一目を惹く容姿で人気者の彼女に告白されて悪い気はせず、誘われるまま一緒に食事や買い物に行くようになり、そして部屋に誘われた。
清純そうなイメージのトモちゃんだが、部屋に入ると積極的で、キスをしてベッドに押し倒された海斗くん。
「据え膳食わぬは男の恥」と、一度は流されベッドインした海斗くんだったが、トモちゃんの行動とそれまでのイメージとのギャップがどうにも汚らしく思えて、気持ちも下半身も萎えてしまったのだそうだ。
トモちゃんはそれでも何とかしようと精一杯粘ったけれど、トモちゃんが頑張れば頑張るほど、海斗くんは情けなく、嫌悪感が増すばかり。
気まずい気分でトモちゃんの部屋を後にした。
その日以降、海斗くんはトモちゃんと距離を置くようになった。
同じ頃、圭太くんの誘いでサーフィンに行くようになり、平日も休日も圭太くんと過ごすことが増えた。
トモちゃんからの連絡も少なくなり、ほっとしていたら、金縛りに合うようになった。原因不明の下痢が続くようになったのも、その頃からだ。
最初は風邪か何かだろうと気にしていなかったけれど、金縛り最中に黒い影が見えるようになった。その影は日を追うごとにはっきりした形になり、転落事故の前ごろには、その黒い影が女の形に見えていた。
気味悪く思っていたけれど、誰に何と相談したらよいか見当も付かず。
そんな時に、ユミちゃんまでが転落しそうになった事を聞いて動揺。
そこへボクが登場したという。
やけに素直に蘆屋先生の指示に従ってくれたのは、そういうワケだったのだ。
「でもオレは童貞ではないので」
海斗くんの話はそこで終わった。
海斗くんは童貞ではないことについては妙にハッキリ、何度も言っていた。
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