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第12話 - 9

蘆屋(あしや)先生、ルイ君、ご無沙汰しております。 その節はお世話になりました。 職場での引継ぎや留学の準備などで忙殺されご連絡遅くなりましたが、無事先月からニューヨークでの新しい生活が始まりました。 先週からMBAコース前の語学クラスからスタートしています。 日本で十分に準備してきたつもりでしたが、こちらで実際にクラスが始まると自身の能力不足に心が折れそうになることばかりです。今日の授業では、宿題が出ている事さえ聞き取れておらず、小池に教えられ愕然としてしまいました。 生活面でも慣れない事ばかりで目がまわりそう。 小池に助けられてばかりで、文字通りあいつがいなければやっていけない状況です(笑) あれから自分なりに色々と考えました。 ジョージとはレッスン終了後会う機会もなくなって、彼の方の仕事も忙しくなった様子だし、私自身も多忙を極めておりまして、いつの間にか遠い思い出のようになってしまいました。 楽しい時間ばかりのまま、しかも短い期間だったからでしょうか、もしくは物理的距離と心理的距離は比例しているのかもしれませんね。 小池とは留学の準備で密にやりとりするうち緊張も解け、というより、やはり実際やるべきことが多過ぎて、あれこれ言っていられない状況の中、実務以外の部分を時間が解決してくれたというべきかもしれません。こちらで同じ学校に通うことになり、アパートも、一緒に住む事になりました。 もともと気の置けないヤツでしたし、 よく気の付くタイプな上に、私よりも優秀な人間です。 私は学校でも生活でも助けられてばかりです。 学業面では嫉妬する事もありますが、まだ本コースが始まる前からこんな調子で、協力し合わなければ乗り切る自信もない状態ですからそうも言っていられません。 彼の告白に対する明確な返答は実はまだしていません。 しかし、確実にずっと一番そばにいた人物だし、今も一番近くで最も信頼できる人間で、 これからもそばにいてほしいと自分が思っているということを、ここへ来て確信するようになりました。 近いうちにその事をあいつに伝えたいと思っています。 私は恋愛経験豊富な方ではないので、これが恋なのかどうか正直やはりまだわかりません。 でもここでの新しい生活、あいつと2人で闘っていきます。 お二人にどうしてもお伝えしたく、ずいぶん端折りましたがご報告とさせてください。 お二人もどうぞお元気で。 岡山 英二

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