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第14話 - 4

ドアを開けると、ホテルの一室のように、心地よい白からベージュの色でコーディネイトされ、整然と片付いた広いリビングスペースが広がっていた。壁には抽象的な大きな絵が1枚、そして感じのよい観葉植物が配され、一角がキッチンになっている。 「あれ、ルイ君ここは初めて?」 「はい」 「ふうん」 キョロキョロ見まわしているボクに暁星(あきら)さんが意外そうな顔をした。 優斗さんがキッチンに向かいながら声をかける。 「もう少し飲む? それとも、もう風呂に入ってやすむ?」 「先に風呂に入りたいな。そうすればもう、いつでも寝れるだろう? ルイ君、先にお風呂使うかい?」 「ああ、兄さん入ってよ。ルイ君は僕の部屋のバスルームを使えばいいから。ルイ君、こっちにおいで」 「あ、はい」 「あ、そう。へええ。じゃあそうしようか」 先生に促されてついていくと、玄関脇の扉を開けた。 「2室、コネクティングルームにしたんだよ。そのドアからこっちは僕の私室。手前が寝室とバスルーム、奥は作業部屋。さ、このバスルーム使って。タオルはこれ使っていいから。もうパジャマでいいよ。持って来た?」 「ありがとうございます。はい、スウェット持ってきました」 「じゃごゆっくり」 パタンとバスルームのドアが閉じられると、ボクはバスルームを見まわした。 広めの脱衣スペースに洗面台、洗濯機。きちんと畳まれたバスタオルとタオルが2組。本当にホテルみたいだ。古びた雑居ビルの外観とはずいぶんイメージが違う。先生、こんなところに住んでるんだ……  風呂を出てリビングに戻ると、暁星さんと優斗さんがソファで話していた。専ら、一番上のお兄さんの帰国話で盛り上がっているようだ。 「お先に失礼しました」 「ああルイ君。さっぱりした? じゃ、僕も入ってくるね」 ボクと入れ替わりに優斗さんが立ち上がった。 「暁星さん、寝る時浴衣なんですね」 「ああ、そうだね。普段はほとんど和服なんだよ」 「小さい時からですか?」 「うん」 「学校に行く時も?」 「ああ、僕はね、学校にはほとんど行っていないんだ」 「え?」 「ウチはそういう家でね。独自の教育を受けるんだよ。ああ、でも一番上の兄は普通に学校に行ったんだけどね、大学まで。家を出てね。普通に会社に勤めて、何年か前に辞めて、今はバリで暮らしてるんだ。 優斗も、中学までは学校に通ったんだよ。 僕は家を継ぐと決めていたからね。覚える事がたくさんあって、学校に行く暇がなかったんだよ。」 知らなかった。 というか、ボクは先生の事をほとんど知らない。 なんと返事をしてよいか分からないでいると、暁星さんが笑い出した。 「ルイ君、それは、何も聞いてなかったっていう顔だね。 優斗とはどこまでいってるの?」 へ? どこまでって……? ますます戸惑っていると、暁星さんが今度は吹き出した。 「ああ……いや、ごめんね。優斗が他人に自分から関わっているの、初めてみたから。てっきり親しいつきあいをしているのかと」 「ああでもボク、先生と知り合ってからだいぶ経ちますよ。最初に会ったのは中学の頃で。バイトも大学入って少ししてからずっと来てるんで、もう何年だろう……、7,8年くらいは。」 ボクは慌てて、少し早口で答えた。 「そうかそうか。ああ愉快。」 何が愉快なんだろう。全然分からないけど、なんとなくボクも調子を合わせて少し笑ってみせた。 それが、何か的外れだったのだろうか、暁星さんはますます愉しそうに笑う。 ボク、何か変なこと、言ったっけ? 「ああ失敬。  そうか、7、8年ねえ。長いよねえ。  中学からじゃ、ルイ君、ずいぶん成長してるんじゃない?」 「はい。最初会った頃から、20センチくらい背が伸びました」 「20センチ! 伸びたねえ! 今何センチだっけ?」 「178です」 「そうかぁ~。まだ伸びそうだね?」 「はい、大学入って3センチ伸びました」 「ほう、成長期だねえ」 そうだ。ボクは高校の時に20センチ近く伸びたのだ。特に高2の夏休み。 あの頃は体が痛かったりしたものだ。 「ルイ君は彼女いないの? 彼氏とか?」 ん? 彼氏とか? まあ、先生のセラピーはほとんど男同士の恋愛相談ばかりだもの。普通か。 「ええ、今はいません」 「今は、って事は、前はいたんだ?」 「はい、まあ。」 「どんなつきあいだったの? 聞いていい?」

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