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第15話 - 2
「ルイ君あそこ鍛 えたことある?」
え、あそこを?「鍛 える」?
ふざけているのかと思えば、海斗 くんはいたって大真面目だ。言ってる事と表情とのミスマッチが可笑しくて笑い出しそう。ボクは必至で堪 えた。
「いや、ない、かな」
「ああ、そうなんだ…… イヤ俺だってそう安易 に相談してるわけじゃないんだぜ。ルイ君今笑いそうになってたろ? 笑いたかったら笑ってもイイけどさ。
俺も今までいろいろ試してみたわけだよ。その結果、もう自分でやるのは限界だと悟 ったからこそ、こうしてここに来たのだよ」
「聞いていいかな。色々って何試したの?」
たずねると海斗くんはしばらく左の天井を見上げ、大きく息をついた。
「まあ、色々っつったら色々だよ。 ルイ君だって聞いたことくらいあるだろ? 熱めのお湯と冷たい水を交互にかけるとか、ペットボトルでたたくとか。風呂のカラダ洗うタオルでゴシゴシするとか」
ボクは思わず吹き出した。
「へ、へえ! すごいね!」
「えールイ君はホントに知らないの? 中学の時とか男子はそういう話するのがフツーだろ?」
「そんな話聞いた事、ん? あったかなぁ? でも聞いてもやらないよ! 海斗くんやったの?」
「うん、まぁね。」
サラッと答える海斗くん。しかもどこか誇らしげ。
「ウ……ごめんチョット待って」
ボクはうつむいて堪えたが、つい笑いが止まらなくなった。
海斗くんも一緒に笑い出す。空気がほぐれ、海斗くんが饒舌になる。
「いやぁそんなの普通だぜ? もっとスゴイのもあるんだから」
「え、どんなの?」
「軽石とかな!」
「軽石でこするの? うわぁーソレ痛そう! まさかソレもやったの?」
「さすがに軽石は無理だった」
そしてニヤニヤしながら続けた。
「でもやったヤツがいたんだよ!
クラスの男子がその話で盛り上がった次の日から1週間くらい学校来なかったんだよね。まさかってみんなで言ってたンけどさぁ、こないだ同窓会で本人が言ったんだ。
やっぱやったんだって。
そうしたらさ、ビックリするほど腫れ上がって痛すぎて『学校行けねー』ってなって、親には『腹痛てぇ』って言って、病院行ったんだって。でも近くの病院だとバレるかもってンで、自力で電車で遠くの病院まで行ったんだってさ。その道中も痛くて痛くて忘れられないんだと! バカっぽいだろ! さすがにそこまでやらねぇだろフツー。考えたら分かるじゃん、軽石は絶対ヤバいよ。ってか逆にそいつスゴくない? スゲーよマジで。もうコレ一種の武勇伝だろ」
2人して爆笑してしまった。
「そこまではやらなかったけどさ、俺は俺なりに努力したワケ。安易な気持ちで先生に頼ろうってンじゃないの」
「そうか、海斗くんもいろいろ大変だったんだね」
「大変っていうか…… まあそうかな」
「なんでそこまでして強くしたいの? すごい早漏なのか?」
「どうだろ。それは分からないけど…… なんていうか、男のロマンだよ」
「男のロマン!」
海斗くんがこんなヤツだったとは。ボクはしばらく腹の底で笑いがおさまらなかった。
「そんなに笑うなよー 恥ずかしくなっちゃうだろ!」
「ご、ごめん!! もうちょっとだけ笑わせて、おさまらない……!
あ。で、予約ね? 先生のカウンセリングね。いつにする?」
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