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第15話 - 3
(海斗くんのターン)
先生が用意してくれたのは、ドレッシングのようなボトルに入ったオイル状のものだった。「気が向いたときに局部に塗って使いなさい」という。「口に入っても問題ない、毒性も中毒性もないので安心しなさい」ということだった。フタを開けると、バニラのような良い香りがする。
やったぜ、コレで俺も……!
恥ずかしくてルイ君にも先生にも言えなかったけれど、実は俺が相談に行った本当の理由はただの「男のロマン」ではない。
こんなことがあったからだ。
大学の1つ上の学年に通称ともちゃん、横屋朋美(よこやともみ)という女の先輩がいる。俺は一浪だから同い年だ。コレがすごい美人でとにかくモテる。
信じられない事にそのともちゃんが俺に言いよって来たのだ。色々あって今は距離を置いているが。
結構いい感じに進んで、何度かベッドに誘われた。
俺は天にも昇る気持ちだった。
なのにいざ大事な時になると俺のムスコが勃ってくれない。
ともちゃんは「気にしないで。緊張してるのね」と言っていたが、数回チャレンジの結果全敗だ。正確に言うと4回か。2回はベッドにインしてまさに今!って時。萎えて萎えてどうにもならない。情けなさ過ぎだ。あと2回は誘われかけたところで察知してはぐらかし、自ら対戦を避けた。信じられねえ、こんなチャンスをこんな事で逃す自分が。
誰にも言えず落ち込んでいたある日、俺は駅で誰かに突き飛ばされ、長い階段を転げ落ちて入院。その後なんやかんやあって彼女とは会わなくなった。
あんな誰もが羨む美女を逃したのはあまりにも惜しいが仕方ない。だってどうしようもないんだもん。
それよりも、俺は悩んだ。
なぜだ。
なぜ俺のムスコは……
病気かとも思った。が、セルフでやるには全く支障ない。これまで通りビンビンだ。
いったい何が問題でああなった?
色々調べたが原因が分からない。
病院にも行った。
ところが特に機能に問題はない。「精神的なものでしょう」と医師は言った。「緊張していたんでしょうね。リラックスすれば大丈夫」
確かに、ひとりでは問題ないのだから、やっぱりあの時リラックスできてなかっただけなのかも。
しかしその後も、別の女子とも何度かチャンスはあったがどうにも勇気が出ない。俺から逃げてしまう。「またダメかも……」って思うと、どうしても先に進めねえ。
このままじゃ俺、もう一生誰かとセックスできないかも……
それで恥を忍んでルイ君に相談したのだ。
蘆屋先生はその世界ではかなりの有名人らしい。
その先生に特別に作ってもらったんだ。この薬さえあればもう大丈夫だろう。
相談してよかった。
これで一安心だ。
さてどうやって試そうか。
自分ひとりの時は問題ないんだから意味ないけど…… まあでもまずは試してみないと。
急いで下宿へ帰って手を洗い、ティッシュ箱を手の届くところに置いて服を脱ぎ、ボトルを手にした。
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