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第15話 - 5
そこから一番近い定食屋で昼を食う。いつもの定番コースだ。
ここは安くて地魚料理が旨いのだ。
ケイは刺身定食、俺はアジフライ定食。
「日本はいいなあ。こんな旨いのが食べられるんだもんな」
「アメリカだって美味い物あるだろ。いつも何食ってたの?」
「ハンバーガーとかタコスとか。こんなの気軽に食べられる店はなかった」
「へえ。ハンバーガーいいじゃん。スゴイんだろ?」
「僕はおにぎりの方がいい」
ケイは高校1年までアメリカに住んでいたが、俺よりも和食好きだ。パンより米を好む。
この定食屋をケイが気に入っている理由はもう一つある。地元漁師の家族が営んでおり、とにかく魚料理が旨い。俺らのことも覚えてくれてて、特に息子の仁(じん)さんはサーファーで、俺たちにとって良い兄貴分だ。
「あれ、お前らそんなにゆっくりしてていいの? 今日はこの後お天気荒れるよ。早くしないと帰れなくなるぞ」
「ああ今日は僕たち泊まりなんですよ」
「そっかあ。潮見荘?」
「いや、今日はあそこは予約とれなくて、青海ホテルです」
「ああ、あそこいいよね。特に貸切露天風呂。屋上階にあってさ。下の大浴場もいいけど、貸切は岩風呂で雰囲気がいいよ。温泉キター!って感じする。半分室内だから台風来ても入れるんじゃない?」
「へええ いいっすね」
「せっかくだから入ったら? どうせ台風で他に客いねえだろうよ。ゆっくりできていいンじゃない?」
そんな話をしているうちに、どんどん空がまっ暗い雲で覆われてきた。
チェックインには少し早いけど、早めにホテルに向かうことにした。
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