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雪のように君は…

 何かが物足りない。肌に触れるぬくもりがない。  ベッドシーツから彼と自分の匂いがする。  ゆっくりと目を開くと、隣にいたはずの啓慈がいない。  シャワーでも浴びに行ったのだろうと、何十分もベッドの上で待っているが、帰ってくる気配はない。いつも、一緒に風呂に入りたがっていた彼が、真白を放置しておくはずがないだろう。  嫌な予感に、大きく首を横に振りながら、何度も深呼吸を繰り返し、寝起きの子どもみたいにベッドの上できょろきょろと啓慈の姿を目で探す。  何度も転びそうになりながら、シャワールーム、クローゼットなどありとあらゆる部屋の中を何度も何度も探し回った。  けれども、彼はいない。  間違い探しのように、彼の痕跡をたどる。  よくわからないメーカーのミネラルウォーターを一気飲みしながら、ふとサイドテーブルに視線が行く。『ごめん、別れよう。 啓慈』といつも持ち歩いているルーズリーフに走り書きのメモを残し、雪のように消えていた。  数時間前、もしかして数十分前か数分前まで一緒にいた彼が、忽然と消えた。  あんなに愛していた啓慈(こいびと)が、目の前からいなくなるなんて……。  急いでラインにメッセージを送ろうと、カバンの中からスマートフォンを取り出し、アプリを開くが、アプリを消したらしく、名前がない。電話も通じない。学校用のメールはかろうじて通じているらしく、何があったのか問うメールを送るが、返事は帰ってこないかもしれない。  現実を直視できず、滂沱の涙を流しながら、大声を上げて泣いた。子どものように、誰かに助けを求めるように、声が枯れるまで泣いた。

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