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その頃は2人はまだ鳳勝会に所属していなかった。遠い、昭和の60年代の頃だ。月岡はススキノの側の小さなレコード店でアルバイトをして日当を稼いでいた。自分はといえば相変わらず怠惰に日々を過ごし、悪事を働いて小金を稼ぎ、そして気が向くままに月岡の部屋に転がり込んでは欲のままに月岡を抱き、また気まぐれに部屋を出ていくことを繰り返していた。 この頃の室田は、月岡としか寝ていなかった。 室田が意識的にそうあるべきだとも、そうしようと思った訳では無い。だが、盛り場に出て、誰かに声を掛けられ誘われても全く気分は乗らなかった。なにをしていても、誰といても脳裏には常に月岡の顔が、不健康に痩せた身体が、堪えるような喘ぎがちらついていた。 月岡も当然自分としか寝ていないだろうという予測は、若さ故、というよりも室田生来の傲慢さと不遜さ故のものだった。一度自分が手を付けた物は自分だけの物だと信じて疑わない自分の性質を、室田は嫌いではなかった。 真冬のある日のことだった。月岡の家には1週間ほど前にふらりと立ち寄り、即席ラーメンを啜りながら世間話をして以来顔を見せていなかった。連絡を取ったことはない。月岡の狭いアパートには、当然のように固定電話などは存在していなかった。 軋む階段には雪が降り積もっていた。大家は出掛けているのか、雪かきなど気の利いたことはされていない階段を滑らぬように慎重に踏み、月岡の部屋へと向かっていく。雪国に建てられた建物としてそれなりの防寒はされているものの、やはり家賃相応に安っぽい扉を乱暴な音を立てて開いた。 「おい。いんのか、ーー…、」 狭い畳敷きの部屋は小綺麗に整頓されている。ストーブで暖められた部屋のその隅に目をやった刹那、室田の頭が白く染まった。 声を掛け、返ってきた視線は2人分だった。月岡と、自分の知らない男。2人は自分のよく知る薄い布団の上、寄り添うように掛け布団の中に包まり呆然とした眼差しでこちらを見ている。白くなった室田の頭に、瞬時に血が昇った。履いている物を脱ぎ捨てる。唯ならぬ剣幕を察知し、起き上がった知らない男の相貌を確かめる間でもなく、衝動のままに横っ面を殴った。 「室田!」 「…てめぇ誰のもんに手ぇ出してると思ってんだ」 壁まで吹き飛んだ男は、酷く軟弱な顔をしていた。月岡の知り合いだろうが、街でたむろする仲間ではないことは見て取れた。後に月岡が勤めるレコード店の店長だったと知るその男のひ弱そうな顔の真ん中に垂れる赤い筋と、口の中を切ったのか唇から落ちる血が畳を汚していた。続いて身を起こし、室田を制すべく腕を伸ば月岡の気配に気が付く。激昴すると手がつけられなくなる自分の性質を知っている月岡に背から羽交い締めにされるも、それを振り払い月岡の顔もまた音を立てて殴り付けた。 「てめぇも何してんだ。優。俺がいねえうちに男連れ込むなんていい度胸じゃねえか」 お前は俺の物だ。 他人が人のものに手を出したことよりも、自分のものが自分以外の人間に身体を許したことが赦せなかった。 月岡の痩せた相貌から、炯々とした眼差しに睨み付けられる。何かを言おうと開きかけた口を封じるように尚も逆の頬を殴った。その手で骨ばった肩を畳の上に押し付け、激情に任せて背に馬乗りになる。突然の闖入者にただ呆然と佇む他人を、興奮で充血した目で見遣ると、男は命じられるよりも早く衣服を掻き集めて転がるように部屋を出て行った。 室田は、これまでより最も手酷く月岡を貪った。 自分以外の他人が入り込み、擦った痕跡の残る双丘の奧、窄まりをまだ半端に勃起した亀頭で割り、そのまま腰を押し付けた。焦燥感に駆られ、膝までしか下ろしていないパンツに絡まるベルトの立てる金属音、ストーブの上に乗ったヤカンが立てる音に月岡の声が混じるも、それが悲鳴が喘ぎかの判別は付かない。体内で育つ熱塊で激しく肉壁を擦り、限界まで奥を穿つ。室田の動きに合わせるかのように反り、尚も抵抗すべく振り返ろうとする月岡の肩に載せたままの手に体重を掛け、逆側の肩に強く噛み付いた。 「…ッ…!痛ぇ…っ、」 皮膚が裂け、血が滲む。鉄の味が、今の自分は獣同然だと知らしめる。それでも幾度も肩口や背の窪みに吸い付き、歯を立てては痕跡を残す。 お前は俺のものだ。 月岡には見えない場所へと痕を刻み、この身体に触れようとする人間を牽制する為の痕を刻み続けた。畳を搔く月岡の細い手首を捉え、強く握り締める。やがて諦めたように脱力する月岡の身体を覆うようにして胸板を押し当てては、外耳を甘く噛んだ。 「っ…、ぅ、」 悲鳴に近かった声は、やがて潜めるような甘い喘ぎに変わっていた。震える唇に唇で触れたい。そう思うも、月岡の頭部は畳に向かって伏せられたまま上がらない。ぐり、と腰を押し付けると、背や腰がびくびくと震え、室田の熱を締め付ける。 これは自分のものだ。 なのにどうしてこの男は、自分の行為に応じて唇を寄せてはくれないのだろう。 どこか遠くで過ぎる疑問に不意に頭がクリアになる。月岡の反応を確かめるように下肢の間に手を伸ばした。下腹部に付きそうな程に固くなった屹立を探り当てた室田は内心で安堵の呼気を吐き出す。 室田の指に反応した雄から白濁が散る。掌に迸る熱に導かれるように、室田もまた月岡の奥深くへと音を立てるようにして精を吐き出した。 。°.。❅°.。゜.❆。・。❅。。❅°.。゜.❆。

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