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第4話

 男はジュリアンの手を引いて、雪の積もる道を大股で歩き出した。ジュリアンは遅れをとらないように、スカートとダボダボのブーツで必死について行った。 「黒い氷に気をつけろ」 と男は、つるっと滑りそうになったジュリアンの腕をぐいと引いて、叱るように注意した。ジュリアンは男を見上げた。 「黒いところは、雪が溶けて濡れているように見えるが、石畳みが黒く凍っているんだ」 寒さのせいか少し赤ら顔になった男の顔から、白く凍りそうな息が吐かれた。男はジュリアンの肩を腕で抱いた。 「もう少しだから、気をつけて歩け」 男は、ぶっきらぼうに言った。道は歩道も車道の境目も分かたず真っ白だ。 「溝にはまるな。あんまり端を歩くと溝に落ちる」 男はジュリアンの腰を抱いて、ぐいと自分の方に引き寄せた。  早く食事にありつきたい。あたたかい湯気のでた具のたくさん入ったスープをすすりたい。ほくほくした黄色いジャガイモ。オレンジ色の人参の香り。煮込んだ緑のキャベツの甘さ。願わくば鶏肉の端切れが入っていますように。

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