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第6話
「身寄りがないのか? 知り合いの家もおんだされたんだな?」
ジュリアンは、こっくり頷いた。男は、下着姿のジュリアンをつかまえた。ジュリアンは自分の上着とズボンをかろうじてつかんだ。男はジュリアンを担ぎ上げると大通りに向かった。ジュリアンは、男の肩の上から街の景色をぼんやり眺めた。びっくりしている道行く見知らぬ大人や子どもの目。無関心に足早に過ぎていく人々。さらわれるジュリアンを誰も助けてはくれなかった。ただ見ているだけ。ジュリアンは声をたてなかった。声をたてても誰も助けてくれないと思ったから。自分を担いでいる男に怒られると思ったから。
ジュリアンは馬車の中でクッキーを与えられた。かたいけれど乾燥したフルーツが入った、甘いお菓子だった。ジュリアンは、ものも言わずに貪った。男は笑った。
「そんなに腹が減っていたのか。言うことを聞いておとなしくしていれば、こんな菓子くらい、いくらでも食べられるぞ」
割腹のいい男は笑った。それが半年前のこと。
男は馬車の中で、ジュリアンの下半身を撫でた。ジュリアンは身じろぎするのがやっとだった。動いている馬車から飛び降りることもできないし、ただ食べかけたクッキーを口に咥えてかたまっていた。男の手がジュリアンの下着の上から撫でていた。手が、下着のパンツとシャツの中に交互に入ってきた時、ジュリアンは、衝撃でボロボロとクッキーをこぼした。
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