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第9話

 男は部屋に入ると、コートと帽子、手袋をはずして、入り口のコート掛けにかけた。男は、ストーブに火を起こした。薄暗い部屋に、あたたかいストーブの火が、明るくチロチロと揺れた。その内に、ストーブにかけたやかんがシュンシュンと音をたてはじめた。男は、ストーブで沸かしたお湯を器に注いで、小さな四角い木目の浮き出た古びたテーブルに置いた。  男は、ジュリアンに椅子に座って白湯を飲むようすすめた。ジュリアンは、無骨な革の手袋を取った。ジュリアンの手が丸い陶製の器を包み込むと、かじかんだ指先からじんじんとあたたかさが伝わってきた。 「寒かっただろう?」 男は、大柄な体躯を折って、質素な小さな木のテーブルについているジュリアンの片手を取った。男はジュリアンの手首に口づけした。

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