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第10話

「何か腹に入れた方がいいだろう」 男は、台所の小さな鍋の蓋を取って覗いた。 「スープでいいか? あたたまるぞ」 男は、ストーブからやかんをおろして、代わりに鍋をかけた。しばらくすると、コトコト、クツクツと鍋の中で、具材が踊る音がしてきた。具が入っているスープらしい。しかも、いい匂いまでしてきた。 「お腹が空いただろう? 外は寒かったから。ずっと、街頭に立っていたのか?」 ジュリアンは男の問いに頷いた。 「ひもじいのは、つらいだろう。どうだ、ここに、私と住まないか?」 ジュリアンは、黙っていた。願っても無いことだったけれど、まだ、どんな人物かわからなかった。 「行くところがないのだったら。クリスマスシーズンを一人で過ごすのは、お互い寂しいじゃないか、と思ってね」 男は言い訳のように言った。

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