10 / 31
第10話
「何か腹に入れた方がいいだろう」
男は、台所の小さな鍋の蓋を取って覗いた。
「スープでいいか? あたたまるぞ」
男は、ストーブからやかんをおろして、代わりに鍋をかけた。しばらくすると、コトコト、クツクツと鍋の中で、具材が踊る音がしてきた。具が入っているスープらしい。しかも、いい匂いまでしてきた。
「お腹が空いただろう? 外は寒かったから。ずっと、街頭に立っていたのか?」
ジュリアンは男の問いに頷いた。
「ひもじいのは、つらいだろう。どうだ、ここに、私と住まないか?」
ジュリアンは、黙っていた。願っても無いことだったけれど、まだ、どんな人物かわからなかった。
「行くところがないのだったら。クリスマスシーズンを一人で過ごすのは、お互い寂しいじゃないか、と思ってね」
男は言い訳のように言った。
ともだちにシェアしよう!