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第23話
手前の書斎には、机の前に、明かりとりの小窓があったが、その窓の外には、ジュリアンが、ひどく棘のある蔓薔薇を植えていたから、誰も近寄れないはずだった。
二十年以上の空白を早く埋めたくて、時の後ろ髪を引っ張るように、二人は慌ただしく下を脱いだ。下だけ脱いだ姿は、無防備で滑稽だった。ジュリアンは、膝まづいて、ヨーンの前を隠すシャツを除けて、手でヨーンのペニスを弄った。性器もすっかり大人になっていた。
「あ……」
ヨーンが声をもらした。
ジュリアンは、ヨーンの先を口に含んだ。こんなところで……。背徳を制止する考えが頭をよぎった。
孤児院や寄宿舎では、風紀の乱れをおそれて、同性愛を厳しく禁じていた。それでも、さっき窓から覗いていた生徒たちのように、こっそり、危うい、友情にしては行き過ぎた関係を育もうとする生徒はあとをたたなかった。そういった間違った方向に進みそうな生徒たちを教え導き、立派な大人として手本を示すのも、校長の役目だった。だから、常日頃、気をつけて、街にすら出かけず、学内に引きこもって生活していたというのに。
見方を変えてみれば、ジュリアンは、いまだに子どもであって、大人たちを恐れていた。自分を支配して暴力をふるう大人たちを。それで大人たちの跋扈する外の世界には出ないで、子どもたちの世界に埋没している、とも考えられた。
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