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第24話

 実際、ジュリアンは、職務上、多くの大人と関わらねばならなかったが、大人を前にすると、自分も大人であるにも関わらず、ひどく気後れした。大人にいいように使われて、誰にも助けてもらえなかった過去が、ジュリアンを怯えさせた。しかし、大人に立ち向かった時の記憶が、逃げ出した先でかくまってくれた大人の存在が、励まし支え応援してくれた大人たちの存在が、ジュリアンの行いを支持してくれる後援者たちが、慕ってくれる子らの愛が、ジュリアンに勇気と自信を与えてきた。何度もくじけそうになりながら、ここまで来た。  そんな金は出せないと、後援者に怒鳴られたり、前代未聞だから支持できないと上司に言われたり、そんな前例はないから許可できないと役人に言われたりするたびに、ジュリアンは、恐怖に震えた。たぶん、ジュリアンのように、乳幼児期からの不安定な親子関係、両親の不和、等のない人間は、ここまで怯えることはなかっただろう。  けれど、その都度、教会の神父が、親代わりとなって、ジュリアンを励ましてくれた。神父は、ジュリアンの過剰な崇敬と依存を、自分からそらし、神への依存にうまく導いた。だから、好意を持ったり、親しくなると、脅迫的なまでに性的な関係に進んでしまうジュリアンの癖が、改善されたのだった。性的行為に及ばなくとも、自分を支持してもらえると、ジュリアンは学びなおした。長い長い時間をかけて。  危うい自分を利用しようとする悪に、ジュリアンは、打ち勝ったのだ。

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