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第4話

「せっかくだから、こっち」 「あ」  一度下ろされた風花の手を取り、しっかりと手を繋ぐ。男同士で手を繋いでいたら、普段なら目立つかもしれない。けれど幸い今は雪が降っていて周りには人がいない。いたとしても大して気には留めないだろう。 「どうせ誰も見てないから。それにほら、はぐれるといけないからな」  恥ずかしがられて外されてしまわないように、早口で言い訳をしてからさっさと歩き出す。  手袋越しだから、手を繋いでいる感は普通より薄い。本来なら片方ずつ外して握り合った手を俺のダウンのポケットに突っ込む方がそれらしいだろう。  けれど自分の手に風花の指が絡まる想像をしただけでちょっと勃ちそうで、頭を振ってその想像をかき消した。今日の雪のごとく、真っ白で純粋な心で行こうじゃないか。  そしてなんとか辿り着いた駅ビルで、暖を取るのを兼ねて休憩タイム。一通り映画の感想を喋り終わった後、風花はまた今日の天気のことを謝った。  それで聞いたところ、なんでも周りと距離を取っていたのは自分の「雪男」体質を気にして、ということだった。  楽しみに出かけた時に雪を降らせてしまうと悪いから、という理由らしい。出かけるたびに季節外れの雪を降らせたことが何度もあり、そんな自分が嫌になって誰かと出かけなくなったのだと。ちなみに夏の場合は雪の代わりに冷たい雨が降るそうだ。徹底している。  俺はそんなのたまたまだと思うけれど、本人には深刻な悩みらしい。あんまり口にはしないけれど、昔それでなにかあったようで、風花は外の雪を見てはごめんと謝り続けた。まあ確かに楽しみに外出するたび雪に降られちゃそりゃへこむだろうけど。  ただ、悪いけど俺の方は、デートを断られ続けた理由が俺自身じゃなかったとわかって上機嫌でしかない。  それどころか俺といる風花のこの可愛さを見てほしい。若干、「友達と出かける楽しさ」が強い気もするけれど、少なくとも俺といるのを楽しんでいることに変わりはない。  そうやってゆっくりとお茶を楽しんで、体が温まったのを見計らって今度は買い物に出ることにした。特に買いたいものはないけれど、ぶらぶらと歩くこと自体がデートっぽいじゃないか。 「お」  そんな中目に入ってきたのは店頭に飾ってあったニット帽。明るすぎない赤で、デザインもシンプルかと思いきや細かいところで凝っている感じが風花っぽい。 「これさ、次デートするとき被ってきて。そうしたらもっと遠くからでも風花ってわかるから。あ、マフラーもいいかも」  自由に見ていってというスタイルなのか店員が近づいてこないのをいいことに、ニット帽とマフラーを取って風花に当ててイメージしてみる。少し可愛すぎるだろうか。あんまり目立つとそれはそれで俺が困るけど、雪の中ならこれぐらいでもいい気がする。 「……次?」 「次のデート。……あ、デートって言い方イヤだった?」 「そうじゃなくて」  もしやただの友達とのお出かけ気分だったのだろうかと不安になったけれど、それは即座に否定してくれた。好きだからデートしてくれと言い続けていたおかげでそこは勘違いではなかったらしい。  戸惑ったように俺の持つニット帽とマフラーを受け取った風花は、自分の胸元に引き寄せてそこに視線を落とした。 「次のこと、考えてくれてるんだ」 「そりゃそうでしょ」  意外そうな声で呟かれて、当然だろうと当たり前の答えを返す。一回限りで終わらせるつもりなんてまったくない。これからもっともっと仲を深めて距離を縮めなきゃならないんだから、手加減なんてしていられないんだ。むしろ早いところ風花の気持ちを手に入れないと、俺が悪いオオカミになってしまいそうで恐い。

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