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第6話

 そんな気持ちを秘めながらも、結局お互いに選んだものを買って相手にプレゼントをして、今度のデートの時にはそれをつけようという約束をした。  次の約束があるって、なんだかすごくいい。映画を理由にしなくても会えるって、めちゃくちゃいい。 「それじゃあ……って言いたいとこだけど、なんか、ごめん」  「これはちょっとすごいな」  天気を鑑みて少し早めに別れようと思って外に出たけれど、見事な雪の積もりっぷりに風花がしょげている。ここまで来ると壮観だ。  そして風花理論でいけば、今日がとても楽しかった証拠になる。 「電車も動きそうにないし、タクシーってわけにも……」  とはいえ実際問題どうやって帰れるかと考えて、隣の風花を見て思考が方向転換する。  帰れないのなら、しょうがなくない? 「どこか泊まれるところ……」  俺の口から洩れた呟きが聞こえたのか、風花が視線を雪から俺に移す。  真っ先に思いついたのは、昨夜までの俺の検索結果。この近くにある、男同士で泊まれるラブホの位置。  一応念のために調べておいたけど、思っていた流れではない。が、無理な流れでもないのではないか。むしろとても自然なのではないだろうか。 「その、帰れないから、泊まってったりとか」  じっと俺を見ている瞳がなにを探っているのか、寒さとは別の寒気が背筋を震わす。  さすがに最初のデートでお泊りはないだろうか。いや、まだどこに泊まるとまでは言っていないから、ワンチャンビジネスホテルを見つければいけるんじゃないか。でもどうせなら調べておいたホテルの方が場所も設備も値段もわかるから素早く無駄はないと思うんだけど。  だからといって軽蔑はされたくない。雪のように冷ややかな目で見られたくはない。俺にはちゃんと、じっくり事を進める心構えがあるってことを、どうやって説明したものか。 「えーっと、すぐ近くに恋人同士で泊まるようなホテルがあるんだけど、やましい気はなくて、ただ宿泊場所としてどうかな、と」  寒さで舌でも凍ったかのようにたどたどしい説明は我ながらだいぶ怪しい。なにもしないからと言って家に上がり込む男と同じくらい不審だ。  それでも風花にその気がないなら本当に無理やり手を出す気はないんですと両手を上げて痴漢じゃないアピールをすれば、ぱちくりとまばたきをされ。 「やましい気ないの?」 「え、いや、すごくありますけど」  意外そうな顔で聞かれたものだから思わず敬語で返す。  そりゃあもちろんありますとも。あるに決まってる。そこに嘘はつけない。  俺は風花を抱きたいし、していいならいくらでもしたい。でもその気持ちを抑えられるくらいに風花のことが好きだ。今日一日でその気持ちはより強まった。  だからこそ、風花が帰りたいというのならなんとしてでも無事に返すし、手を出すなと言われたらしばらくは頑張って「待て」をする。 「じゃあ、そこ行こう」  そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、風花はあっさりと俺の考えを認めた。  この流れでわかってないなんてことはさすがにありえないだろう。ぼやかしはしたけれどそれがわからないほど鈍くはないだろうし、だからつまりそこに行こうというのは。

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