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蕭蕭と

 忙しなく仕事に追われる日々を何年も過ごしている。身近に親しいと思える人もいない。周りの人間とは事務的にしか付き合いが出来ず、以前の友人達もみな自立して精一杯で、気が付くと僕はすっかり孤独だった。  地元にいる家族にはどう話していいか分からず、そんな状況であることへの恥ずかしさと情けなさが入り混じってもうずっと連絡出来ずにいた。同じようなターンで毎日を繰り返すほどに僕の心は磨り減って、何もかもに取り残されているのだと錯覚していく。  そんな中でこうして床に伏せると抑えきれない不安が僕の全てを覆い尽くそうとしてくる。もしも明日、目覚めなかったとしたら、誰が僕を見つけてくれるのだろうか。そんな絶望感に簡単に陥る。冷たい布団と暖まらない室温と、無情な時計の音がひたすらに僕を追い詰め続けるのだ。  熱が出て陰鬱とした日の夜中に、部屋のチャイムが鳴るようになったのはいつからだっただろうか。  扉を開けると必ず白いファーが僕を待っている。彼はどうしようもない僕のために舞い降りた奇跡の使者なのだと、僕は信じてやまない。  たとえどんな真実や事情が背後に待ち受けているとしても、それを疑えるほど僕はもう正常ではない。  ただただ、寂しくて潰れてしまいそうだった。今もそれは変わらず、僕は毎回こうしてひたすらに縋るばかりなのだ。  僕のための使者はそんな惨めな僕を相手に、ふわふわと抱き締めて何も言わず宥めてくれる。彼は、僕が僕で居られるための奇跡そのものなのだ。

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