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第2話

朝起きてまず目に入ったのは、白いカーテン。 地が市松の模様織だけど、他の色は入ってない、真っ白のカーテン。 あんたに頼まれて、おれが探してきた。 次に気がついたのは、あんたが枕カバーの代わりにしている、白いタオル。 有名ブランドのとかじゃなくて、でも手触りはこだわった産地ブランドの、優しい白いタオル。 蒲団から起き上がって、リビングに行ったおれを出迎えたのは、白いセーターを着たあんた。 「おはよう」 「おはよ。飯できてるよ」 「起こしてくれたらよかったのに」 「うん。準備できてから、楽しく起こそうと思ってた」 「なんだそりゃ」 カフェインが苦手なおれのために、マグカップに注がれたのは、牛乳。 面倒だろうに、おれが好むからとわざわざミルクパンで温めてくれたもの。 店で見つけてついうっかり手がのびちゃった、と笑ってテーブルにのせられたのは、白いロールパン。 「ハイジの白いパンって書かれてたら、どんなにおいしいものかって思っちゃってさあ」 「何故にハイジ?」 「あれ、知らない?」 「いや知ってるけど、白いパンが謎」 椅子に腰かけてパンを食べてみる。 うん。 普通になんて事のない、ロールパンだよな。 「今、ものっすごい歳の差感じた」 首を傾げるおれを見て、あんたががっくりとうなだれる。 「なんでよ?」 「ハイジ憧れの白いパンが通じねえ」 「ああ、そういうネタなんだ?」 「そういうシーンがあるんだよ」 そんな会話を交わして、朝の支度をして。 それぞれに出勤。 「今夜、鍋でもするか。寒くなりそうだしな」 マスク越しにあんたが白い息を吐いた。 寒い冬の朝。

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