4 / 5

第4話

「白い!」 鍋をあけて出たのは、そんな一言。 「雪見鍋だから!」 自慢気にあんたは胸を張る。 こういうとこ、めっちゃかわいい。 「っていうか、ネギも白いじゃん。緑んとこ、どこいったの?」 「明日、味噌汁にいれる」 「なるほど」 あんたは、雪見鍋は白じゃないといけないという。 実家でそうだったんだって。 白い鱈。 エノキ。 ネギの白いとこ。 大根おろし。 豆腐も、焼き豆腐じゃダメなんだそうだ。 白菜は芯の方を入れていたらしいけど、葉先の方が好きだからといって、この家では入れていない。 あんたは自分の生まれた家のことをあんまり話したがらないけど、おれはそういうのを聞くのが割と好き。 「寒くなったよな。予報通りだ」 「うん。鍋が嬉しい」 「そりゃよかった、しっかり食え」 「あんたもな」 はふはふしながら、鍋を食う。 おれ、魚の鍋はあんたと一緒になってから好きになった。 昔はあんまり食べたことなかった。 「酒はほどほどにな」 「うん。あんたもな」 鍋をつついて、さしつさされつ。 この後のことを想像して、顔をあわせてニヤニヤした。 だってほら、今夜は金曜の夜だからね。

ともだちにシェアしよう!