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1-12-1 年下の男の子(1)

家の玄関先。 僕の手には、男の子の小さい手。 男の子は、僕を見上げる。 ニコッと、微笑んで上げると、男の子も、照れた面持ちで微笑み返す。 叔母さんは、片手を上げて言った。 「……ということだから、めぐむ君、お願いね」 「はい、分かりました」 僕は、男の子の手をぎゅっと握りしめた。 男の子の名前は、ユータ。 僕のいとこだ。 今年、幼稚園の年長さん。 来年は小学生だなんて早いものだな。 思わず感慨にふける。 ついこの間は、抱っこしてあげたけど、年長さんともなると、抱っこするのも嫌がりそうだ。 今日は、ユータの母親、つまり叔母さんが同級会があるとかで一晩留守にする。 あいにく、叔父さんも出張中だそうで、ユータをうちへ預けに来たのだ。 僕とユータは、叔母さんが、マンションの廊下から見えなくなるまで手を振り続けた。 大きくなったと言っても、まだ幼稚園生。 一晩といえど、両親と離れ離れになるんだ。 さぞ、寂しいだろう。 優しく、ケアしてあげなきゃ。 僕は、ユータの手を取って、家の中に入る。 そして、しゃがんで言った。 「ユータ、泣かないで偉いぞ!」 僕は、ユータの頭をそっと撫でる。 あどけない表情で、キョトンとしている。 戸惑った表情にも見える。 もしかして、状況をちゃんと掴めてないのかな。 「大丈夫だからね」 僕は、ユータ頰に優しく手を添える。 かわいい。 ユータは言った。 「めぐむ兄ちゃん! 早く、遊ぼうよ!」 「あれ、ユータ寂しくないの?」 「寂しくないよ。なんで?」 あれ? 驚いた。 今時の幼稚園生ってこんなに大人びているもの? 僕は、ユータに手を引っ張られながらリビングへ向かった。 結局、ユータの希望もあって僕が面倒をみることになった。 お母さんは、何かとユータの世話をやきたがったが、ユータが「めぐむ兄ちゃんがいい!」と突っぱねて、ようやく諦めた。 どうも、お母さんは、わんぱくな男の子の世話をやきたかったようだ。 僕がおとなしくて、手がかからない子だったせいかもしれない。 「そうね、残念」 お母さんは、そう言って肩を落とした。 「ねぇ、お兄ちゃんの部屋で遊ぼうよ!」 ユータはそう言って、僕の腕を引っ張った。 「へぇ、ここがめぐむ兄ちゃんの部屋なんだ」 ユータは、部屋を見回すと、ベットの縁にちょこんと座った。 「ユータ、もっと小さい頃に来たことあるんだけど、覚えてない?」 「よく覚えてないや」 「そっか、まだ小さかったからね」 そうなのだ。 ついこの間遊びに来た時は、ユータを抱っこしてあやしてあげたっけ。 子供の成長は早いとつくづく思う。 僕は、ユータを改めてみる。 短く切った前髪。 一見、上品そうだけど、イタズラ好きそうなキラキラした目。 にっこりした笑顔がキュンとくる。 僕の可愛い従兄弟の男の子。 「なんで、僕の顔をじろじろ見るの? 何か付いている?」 ユータは、口の周りを手の甲で拭う。 「ううん。なんでもないよ」 僕は、慌てて目を逸らす。 幼稚園の年長さんともなると、しっかりと自分の意見を持って喋る。 こうやって、普通に会話できるのが不思議だけど、とっても嬉しい。 「ところで、めぐむ兄ちゃん。恋人いるの?」 「へっ? こいびと?」 僕は、何かの聞き間違いかと思って聞き直す。 まさか、幼稚園生の口から恋人なんて言葉が出てこようとは。 「めぐむ兄ちゃんって、高校生でしょ?高校生って恋人いるんでしょ?」 「そんなの、誰が言っていたの?」 「幼稚園の先生。あれ? もしかして、兄ちゃんは恋人いないの?」 ユータは、僕を残念な目で見る。 全く、最近の幼稚園の先生は何を教えているのか。 僕は、悔しくなってついムキになって言った。 「いっ、いるに決まっているじゃん!」 「えー? 本当かな?」 ユータは、じとっと疑いの目を僕に向ける。 「もう! 生意気!」 僕は、ユータの髪の毛をシャカシャカ撫でた。 僕は、トレーに載せたジュースをユータに渡す。 ユータは、美味しそうに、チューっと飲んだ。 ああ、そうだ。 ユータの為に用意していたんだった。 僕は言った。 「ねぇ、ユータ。ゲームする?」 「えっ? ゲームあるの? していいの?」 「うん、いいよ」 僕は、最近はあまり使ってなかった携帯型のゲーム機をユータに手渡す。 「やった! これ、やりたかったんだ! 友達みんな持っているんだけど、ママ買ってくれないんだ」 「そっか、なら思う存分やっていいよ」 やった!っとユータの叫び声。 ユータは、喜々としてゲームをやり始めた。 生意気でもやっぱり子供なんだ。 僕は、ゲームに夢中になるユータを眺めながら、クスっと笑った。 夕ご飯ととり、お風呂の時間。 僕は、ユータに尋ねる。 「お兄ちゃんと一緒に入ろっか?」 「うん!」 「ユータは、自分で服を脱げる?」 「そんなの当たり前だよ!」 ユータはささっと服を脱ぎ、一目散にお風呂場へ入った。 「ユータ、痒いところある?」 「ううん、大丈夫」 僕は、シャカシャカとユータの髪の毛を洗ってあげる。 最後にシャワーでシャンプーを流すと、ユータは気持ち良さそうに顔を拭った。 「ねぇ、お兄ちゃん?」 「ん? なーに?」 「お兄ちゃんのチンチンってちっちゃいね」 グサっ! ユータは、僕のペニスをまじまじ見つめて言う。 「何言ってるの! ユータよりは大きいでしょ!」 僕は、ユータのペニスをちょんと突いて言う。 「そんなの当たり前だよ。僕、まだ幼稚園生だもん」 正論だ。 ぐぅの根も出ない。 「パパのチンチンは、もっともっと大きいよ」 「あー、なんだ、パパと比べてかぁ。うん、そりゃ、僕は小さいよ。だって、まだ高校生だもん!」 「それにしても、小さくてかわいい!」 「なっ、生意気め!」 ユータは、へへへっと目を輝かすと、僕のペニスをぎゅうぎゅうと握る。 「あっ、ユータ、いじんないでよ! お兄ちゃんのチンチン……」 「ピクピク動いて面白い!」 ユータは面白がって、両手を使いだす。 「こら! 怒るよ!」 「お先ー!」 ジャポン! ユータは逃げるように湯舟に浸かった。 僕は、ユータを睨む。 ユータは、へっちゃらだよ、っていう態度。 「まったく、悪戯っ子なんだから!」 ふぅ。 でも、よかった。 勃起しないで。 僕のペニスは、ユータがちょっといじったぐらいじゃ、勃起したりしないんだから。 でも、雅樹にちょっとでも触られると、すぐに反応しちゃうんだ。 ああ、雅樹にいじられたいな。 ちょっと、乱暴で荒々しいんだけど、それがすごく感じちゃう。 雅樹の手の温もり……。 はぁ、はぁ……。 「ねぇ、お兄ちゃん。凄いや! チンチン、そんなにおっきく出来るんだ! それなら、パパと同じくらいかも!」 「えっ!」 僕は、慌てて自分の股間を確認する。 しっ、しまった! 見事に勃起している。 僕は、サッと股間を抑える。 つい、雅樹に愛撫される想像してたら、自然と勃起しっちゃったんだ。 「ユータ! 見ないの! エッチ!」 「なんで、エッチなの? どうして?」 「どうしても!」 湯船に一緒に浸かる。 「ねぇ、ユータ」 「何? お兄ちゃん」 「幼稚園楽しい?」 「うん! 楽しいよ!」 「よかった。ユータは、運動得意だから何でも出来るもんね?」 「うん。僕、足速いよ。走るの得意!」 ユータは、得意げな表情。 走ることに関しては、全くと言っていいほどいい思い出がない。 僕は、水面を見つめながらつぶやく。 「へぇ、いいなぁ。お兄ちゃんなんて、いっつもビリだったよ」 「そうなんだ……じゃあ今度、競争しようよ! 僕、お兄ちゃんに勝てるかも!」 ユータは、嬉しそうに言う。 うーん。 競争したらどうなるんだろう。 まさか、ユータに負けたりして……。 まさかね。 いくらなんでも……高校生と幼稚園生だから。 僕は、動揺を悟られないように言った。 「ははは、お兄ちゃんがいくら遅いって言っても、流石にユータには負けないよ!」 「それもそうだね! あはは」 ユータはすんなり同意する。 ほっ。 じゃあ、競争しよう!って言われなくて良かった……。 まったく、ヒヤヒヤする……。 「ところでユータ。足が速いなら、女の子にモテるんじゃない?」 「どうかな。僕はそんなの、興味ないもん」 「ふふふ、そっか。そうだよね。幼稚園生じゃ、好きとか嫌いとか恋愛は早いもんね」 僕は、ユータの鼻の頭をちょんと触る。 「あー! いま、幼稚園生をバカにした!」 ユータは僕の指を払いのける。 「そんな事ないよ。あれ、もしかしてユータ、好きな子いるの?」 「いるよ!」 ユータは、ムキになって頬を膨らませる。 「へぇ、いるんだ。どんな子?」 「優しくて、その、笑うと可愛いんだ」 「そうだよね。優しい子に惹かれるよね。うん」 そっか。 ということは、ユータは初恋は済ませているのか。 最近の子は、本当にませているんだなぁ。 僕がそんな事をしみじみ考えていると、ユータが言った。 「ところで、明日、行きたいところがあるんだ」 「いいよ。どこ?」 「幼稚園の近くの公園。ストロベリー公園って言うんだ」 ユータの幼稚園の近くか。 隣駅。 大人の足だと歩けない事は無いけど、ユータと一緒だったら、電車かな。 「オーケー、じゃあ、電車に乗って行こっか?」 「うん!」 明日の計画はできたっと。 「さて、そろそろお風呂あがろう!」 僕とユータはザバッと立ち上がり脱衣所へ向かった。

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