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1-17-2 同好会のすすめ(2)

僕は頃合いを見計らってその場に向かう。 一言いわないと気が済まない。 あの人は僕を待っているかのようにそこにいた。 「あの、もう図書室でそういうことやめてください!」 「どうして? いいじゃない?」 「ここは、いちゃいちゃするとこではないです。それに、いいですか、僕だったからいいものを、もし、他の図書委員だったら、大騒ぎになってますよ」 「ああ、君が当番って確認してたからね。だって、君は秘密にしてくれるんだろ?」 僕は空いた口が塞がらない。 「確かに、秘密にするっていいましたけど、それは、あの1度きりです。何度も、黙認するってわけじゃないです。それに、今日、キスしていた人、この間と違うひとだったじゃないですか」 「そうだよ。前は、ラグビー部のキャプテン。今日は、水泳部のエース。俺は、二人と付き合っているんだ」 「二股なんて……」 「あれ? いけない?」 「いけません! そんなの決まっています!」 「俺は、男の鍛え上げられた筋肉が大好きなんだ。ラグビーの鍛えられた太ももも好きだし、水泳部のムキムキの上半身も堪らなく好きだ」 その人は、うっとりした目で言う。 僕は、直ぐに言い返す。 「体が目的だなんて! 不潔です!」 「不潔? どうしてだ? こんなに純粋なのに。じゃあ、何か? 君は、体には惹かれないというのか?」 「そっ、それは……」 僕が口ごもっていると、ホラッという顔をする。 「だろ? 体を欲しがって何が悪い!」 「うぅ……」 その人は、そうだろ?っと、ウンウン頷く。 そのしたり顔が無性に悔しい。 「ところで、君は、男同士って所はいいのかい?」 へっ? 男同士? 突然の質問にたじろぐ。 確かに普通の人はまずそこを指摘するか……。 うっかり自分と重ねてしまい指摘しそびれてしまった。 僕は開き直って答えた。 「えっ、えっと……僕は、愛があれば構わないと思います」 「へぇ。男同士は問題ないか……愛があればか。なるほど、君は面白いね」 「そんなこと……」 「ところで、俺は3年の氷室 敦(ひむろ あつし)だ。君の名前は?」 氷室と名乗ったその人は僕を見つめる。 「名前を聞いてどうするんですか? 脅すんですか?」 「おいおい、そんなに警戒するなよ。別に、いいだろ? どっちかって言うと、秘密を見られた俺の方が、立場は弱いわけだし」 確かにそうだ。 僕は、何も悪い事はしていない。 名乗るのを躊躇する必要もないんだ。 僕は胸を張って答える。 「僕は、1年の青山 恵です」 「へぇ。めぐむね。なんか、君とは仲良くなれそうだな。ははは」 「そうでしょうか? もう、二度と、図書室であんなことをするのは止めてください。氷室先輩!」 「ははは。でもな。彼らが、俺を求めてくるんだよ」 「じゃあ、断ってください!」 突然、氷室先輩が言った。 「ところで、君、めぐむ、だったか、付き合っている人いるの?」 「えっ、どうしていきなり……」 僕は、氷室先輩を見返す。 「そりゃね。愛さえ有れば、男同士でもかまわないんだろ? つまり、めぐむは男と付き合っているんだろ? 違う?」 ドキっ! 鋭い所を突く。 「えっ……えっと」 氷室先輩は、嬉しそうに微笑む。 「図星だな。ははは。隠さなくてもいいよ。二人の秘密な」 氷室先輩は、僕を仲間扱いにして嬉しそうだ。 ああ、寄りによって。 氷室先輩みたいな変な人に秘密がバレてしまった。 気が滅入る……。 「で、見たところ、君は、俺と同じ匂いがするな」 「どんな、匂いですか!」 「ああ、君はされる側だね? する側じゃなくて?」 一瞬、何の事かと思考が止まる。 でも、氷室先輩のニヤッとする表情で直ぐに悟った。 エッチの事を言っているんだ。 恥ずかしくなって顔が猛烈に火照る。 「なっ、なにを……」 「ははは。君は面白いね。答えなくても、全部、顔にでちゃうんだ」 「うっ……」 悔しい……。 この人に、いいように弄ばれて。 氷室先輩は、あっ、そうだ!と言うと嬉しそうに指をパチンと鳴らす。 「よし! 俺たち二人で非公認の同好会を立ち上げないか? そうだな、名前は、『男の体をむさぼる同好会』、略して『オトムサ同好会』どう?」 氷室先輩は、嬉しそうに言う。 「何をいっているですか! 僕は、先輩とは違います。僕はそんな同好会はやらないです!」 「そっかな? 同じだと思うけど。男の体が堪らなく好きなんだろ?」 疑いの目の氷室先輩。 「違う!」 僕は、声を荒げる。 「どう違うんだい?」 「僕は、彼を心から愛しています。体だけの付き合いの先輩とは違います。第一、僕は誰かに見られてしまうような場所でキスなんて絶対にしません」 はぁ、はぁ。 息が切れる。 僕は、何でこんなにもムキになってしまっているんだ。 「体だけの付き合いか、言ってくれるな。まぁ、確かにそうだな。否定はしない。俺は、あの固い筋肉に触るだけで、興奮してくるんだ。でもな、向こうはきっと、俺にぞっこんだぞ。二人とも俺のケツに激しく突っ込んで来るからな。ははは」 氷室先輩は、得意になって腰を振る。 「激しいだなんて……」 僕は、氷室先輩の下ネタに耐えきれず目を逸らす。 「しかし、キスを誰かに見られるのが嫌っていうのは、どうなんだ? 本当に彼を愛しているのか? 愛しているなら、人前でもキスぐらいできなきゃ嘘だろ?」 「えっ……でも」 氷室先輩は、間髪入れずに畳み込んでくる。 「君は、口だけで愛しているなんて言って、やっぱり形だけの付き合い、いや、やっぱり体目当てなんじゃないか? うん。やっぱり、俺と同じ。ははは。男の体をむさぼっていこうぜ!」 僕は言い返す事ができずに唇を噛み締めた……。

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