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1-17-3 同好会のすすめ(3)

次の雅樹とのデート。 雅樹の唇を見て、氷室先輩のキスを思い出す。 そして、否が応にも、氷室先輩に指摘された事が頭に浮かぶ。 そうだ! 雅樹に聞いてみよう! 僕は、思い切って雅樹に問いかける。 「ねぇ、雅樹。ちょっと聞いていい?」 「ああ、いいよ。なに?」 「僕達が人前でキスをしないのはなぜだろうって」 「え? 唐突だな」 雅樹は、不思議がって僕を見る。 「うん。ちょっとね……」 なんだか、ちょっと後めたい。 雅樹から視線を外す。 「それは、言ったじゃないか、人前でいちゃいちゃするのは人を不快にするって」 予想していた答え。 「でも、それは本当かな? 本当に好きならそんなことさえ関係なくキスしちゃうんじゃないかって」 僕は食らいつく。 雅樹は、うーむ、と唸って言った。 「自制できないほどキスしたくなる、ってことか。まぁ、ずっと我慢してたら可能性はあるかもしれないけど。普通は、ないな」 「どうして?」 「たぶん、心がつながっているから。ほら、キスって『好き』っていう愛情表現だろ? でも、俺たちは、人前でキスして確かめ合わなきゃいけないほど、弱い絆じゃないだろ?」 雅樹の言葉には、うなずけるものが確かにある。 「うーん。なるほどね」 「きっと、人前で我慢できずにキスする人達は、不安なんじゃないのかな? 本当に好きなのかどうか、四六時中確認し合わないと居られない、みたいな」 腑に落ちた。 雅樹の考えに完全に同意。 「そっか。そうだね。さすが雅樹! 納得したよ!」 何日か経ったある日。 僕は、食堂に行く廊下でばったりと、氷室先輩に会った。 「よう! めぐむ!」 氷室先輩は、爽やかに手を上げる。 周りにいた女子生徒達が騒めく。 どうも、氷室先輩は、普段は女好きの女ったらしで通っているらしい。 注目を浴びる中、氷室先輩にヒソヒソ声で話しかける。 「氷室先輩、今ちょっといいですか? お話が有ります」 「いいぜ。俺に告白か? めぐむ」 氷室先輩は、慣れ慣れしく僕の肩を組む。 周りからは、キャーと声が上がる。 「ちっ、違います!」 僕は、氷室先輩とも周りの人とも取れるように声を荒げて言う。 「ははは」 そんな僕を氷室先輩は声高らかに笑った。 僕は、氷室先輩を中庭に連れ出した。 話を切り出す。 「氷室先輩! 僕は先輩に言いたいことがあります!」 「ん? どうした改まって? 俺としたいのか? いいぜ、俺のケツに突っ込んでこいよ」 氷室先輩は、ねっとりとした熱い視線を僕に向ける。 冗談でも、無駄にイケメンの氷室先輩に言われるとドキッとする。 「ちっ、違います! 何を言っているんですか!」 「ははは。冗談、冗談。同士めぐむよ」 氷室先輩は、僕をからかうのが楽しくて仕方がないようだ。 まったく。 腹が立つのを通り越して呆れる。 「同士じゃないです。あー、そんなことはどうでもいいんです」 「ん?」 「この間、言っていたことです」 「何だったかな? どこの筋肉が好きか?ってことか? 俺は腹筋は譲れないな」 「もう!」 「うそ、うそ。はい、どうぞ」 少し、しつこかったか、とでも言うように頭をかく。 はぁ。 ようやく本題に移れる。 まったく、面倒くさい人だ。 「えっと、僕が人前でキスしないのは、本当は彼を愛していないから、って言った先輩のセリフ」 「あー、そんなこと言ったな」 氷室先輩は、視線を空に向けた。 思い起こしているようだ。 「それは、違います。本当に愛しているから、人前でキスする必要がないんです。分かりますか」 「へぇ。愛しているからねぇ」 「そうです。愛しているからです!」 僕はハッキリと言い切った。 言った後で、気持ちがスッとする。 ふふふ。 そうなのだ。 氷室先輩と同じくくりにされた事が心外だった。 でも、これでハッキリした。 どう? 氷室先輩? 僕と氷室先輩は、まったく違うんですよ! あー、清清した。 僕が、爽やかな気持ちになっていると、氷室先輩は、何でもなかったかのように言った。 「まぁ、人それぞれだからな。要は、人前じゃなかったら、彼氏の体をむさぼるんだろ?」 「へっ??」 「だから、体を触ったり、チンコをしゃぶったり、チンコを入れてもらったりだよ」 氷室先輩は、エッチな事をサラッと言う。 「はっ、恥ずかしいなあ、もう! どうして、平然とそういう事を言うんですか!」 「ははは。恥ずかしがることないだろ。じゃあ、結局、俺と同じさ。やる場所が違うだけ。同士よ」 「やる場所って……えっ? もしかして、フェラとかエッチも人前でしているんですか?」 「えっ? 知りたいの、めぐむ? 俺がしているとこを覗こうってことか? さすがだな」 やばい……。 一転して旗色が悪くなる。 なんだか氷室先輩を調子づけてしまったようだ。 僕は慌てて応戦する。 「なんですか、それ。違います。そんなことをしちゃだめ! ってことです」 「さすがに俺だって、そこまではできないな。ちゃんと家に連れ込んでするよ」 「連れ込むとか……」 「まぁ、分かったよ。もう図書室でキスはやめる。同士の頼みだからな」 「同士じゃないです!」 でも、何とか図書室での不純異性交遊、いやこの場合、不純同性交遊がなくなるのなら……良かったかな。 氷室先輩は言った。 「代わりといってはなんだが、俺の悩みを聞いてほしいんだが?」 「悩みですか、いいですよ。聞くだけなら」 「よっしゃ! これで、同好会っぽくなってきたな」 「ぶっ。どうして同好会なんですか!」 「ははは。じゃあ、悩みだけどよ」 氷室先輩は、大笑いしたかと思うと、直ぐに真剣な眼差しを向ける。 そっか。 こんなにおちゃらけて不真面目に映る先輩だけど、悩みだってあるんだ。 男の筋肉大好きっていう変な性癖もあるから、きっと気を許せる友達も少ないのだろう。 そういう意味だと、本音を言える僕は氷室先輩にとって、親友と言えるのかも……。 何だか氷室先輩をむげに毛嫌うのは違う気がした。 氷室先輩が言うように、少なくとも男性を好き、という共通点はあるのだから……。 僕は、優しさを込めて答えた。 「はい。良いですよ、先輩」 氷室先輩の表情が明るくなる。 うん、先輩。 大丈夫です。 僕が力になりますから……。 先輩は、口を開いた。 「俺さ、3Pでエッチしたいんだけど、どうしたらいいかな? 二人とも俺を愛しているから言い出せないんだよ」 へっ? 「それにさ、3P出来たとして、二人とも絶対に俺のケツは譲らないと思うわけ。2本同時とか?……やべぇ……想像したら、チンコ勃起してきた……」 頭の中に描いていた、友情で固く結ばれるシーンがガラガラと崩れさる。 ……少しでも期待していた僕がバカだった。 「もう! 先輩の思った通り、勝手にすればいいです! 僕は、帰ります!」 「なるほどな、思った通りか……でも、やっぱり、代わり番こでぶち込んでほしいな……って、おい、めぐむ! 待てって! 真面目に相談しているんだって! めぐむ!」 僕は、ツカツカと廊下を歩き出す。 まったく……。 変な人と知り合いになってしまった。 しかも、僕の苦手なタイプ。 あまり関わりないようにしよう。 うん。 僕はそう心に思うのだった。

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