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初めての…(4)
「…っ待って…じゃあお仕置きって」
「ええ、尻叩き、又の名をスパンキングです」
にこっと微笑みながらわざわざ別名まで言い放ったすみれを恨めしい気持ちで見つめる。
DomとSubのプレイの一環でスパンキングがあるということは知っている。
しかし尻叩きなんて何年もされていない皐月にとっては羞恥でしかない。それこそ、皐月が幼かった頃には悪いことをした皐月を叱るためにされたこともあるが、もう何年も前の話だ。
「…嫌だ。それならこんな体調不良自力で治す。」
「何言ってるんですか。ずっともやもやしたような、ぐるぐると気持ち悪いような感覚になっているんですよね?私もSubだから分かりますが、その状態は放っておくとよくありません。悪化する一方です。
今だけ我慢して、その後ケアを受ければきっと良くなるはずですから。」
幼い頃から側にいて、色んなことを教えてくれた、Subの先輩でもあるすみれが言うのだからそうなのだと思う。頭では分かっていても皐月は素直にお仕置きを受けることは出来ない。
「もしもお仕置きとケアを受けないのであれば、この体調不良は長引くでしょうし、そうなった場合、その原因と経緯を旦那様に報告しなければなりません。」
「…っ」
ハッと皐月の顔が強ばる。
「…それは…その方が嫌だ。父上には内緒にして欲しい。」
皐月は父親に、自分がSubであるということを隠していた。海外出張が多くそれほど家にいない父親には気づかれないだろうと、自分がSubであると分かったその日から隠し続けている。
Domでなかった自分を恥じているのだ。
「…まあ、正直にお話したところで、旦那様は皐月様を責めたり軽蔑するようなことはないと思いますが、皐月様がそうしたいならまだ隠しておきましょう。」
皐月がSubであることを唯一知っているのはすみれだけであり、彼はこの屋敷唯一の使用人なので外部に漏れることもない。が、逆に言えば、すみれが本気で報告しようと思えば皐月には止めることは出来ない。
まだ父上には隠しておきたい。皐月の矜持が許せなかった。
「それではお仕置きを始めましょうか。」
にこっとしながらそう言ったすみれを見て、父上に報告すると言ったのはただの脅しだったな?こいつ謀ったな?と気づいた時には遅かった。
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