11 / 163

第11話 苦しみ

日々…… 弱る……夏海だが…… 気丈に振る舞っていた 一分一秒が惜しい…… と……想い出を作る 体躯は……しんどいのに…… 夏海の笑顔は…… 元気な頃のままだった 自分がしっかりせねば… そう想うのに…… 雅龍は辛くて仕方がなった 苦しくて… 息が出来ない 涙が……溢れて…… 泣いちゃダメなのに…… 泣きそうだった…… 雅龍は……飛鳥井の家を尋ねた 対応に出たのは榊原だった 「雅龍……こっちにいらっしゃい…」 榊原は雅龍をリビングまで連れて行った 飛鳥井の人の目に触れない様に…… 雅龍の前に慎一はお茶を出した お茶を出すと慎一はリビングから出て行った リビングには榊原と雅龍だけになった 「夏海……どうですか?」 榊原が尋ねると…… 雅龍は泣き出した ずっと我慢していたのだ…… 堰を切って…… 雅龍は泣いた 「………雅龍…夏海は相当悪くなりましたか?」 雅龍は頷いた 「………日々弱って行くのに…… 元気な頃のままの顔をされるとね…… 胸が痛んで来るんですね…… 何故?……何故……そんな想いばかり募って…… 僕も泣き暮らしました… それを知ってか……あの人は……無理して……元気に振る舞う… もういい……何度も抱き締めたのに……一分一秒大切にするんてすよね……」 「………青龍……」 「……人の世の炎帝の寿命は短い…… 僕は何度も…炎帝を送りました 腕の中で冷たくなる炎帝を抱き締めるしか出来ない…… 自分の無力を呪った事もあります… それでも……側を離れられないのは……愛してるから…… そうでしょ?」 「……ええ……夏海を愛してます…… 我が愛したから…… 夏海は寿命を縮めた…… 我と 出逢わねば……そう想うのに……出逢って良かったと想うんです……」 リビングに康太が来て…… 雅龍の台詞を聞いていた 康太は壁にもたれて何も言わずに……聞いていた 雅龍の鳴き声が… 部屋に響き渡った 「雅龍……僕は…炎帝と出逢えて良かったと……想ってます…… 炎帝を愛せて…本当に良かったと想うんです 炎帝と出逢えねば解らぬ……痛みでした 炎帝と出逢えたからこそ……愛している想いが解りました… そうでしょ?雅龍……」 「………ええ……夏海と知り合えたからこそ…… 命は……限りあると知りました 愛する想いも、大切にする想いも……総て夏海が我に教えてくれた事です……」 「………愛していれば…… 乗り越えれぬ壁はないのですよ…… 互いがいれば…乗り越えれる壁だと……僕は想います… 雅龍……泣きなさい… そして涙が……止まったら…… 愛する人を抱き締めに行きなさい」 雅龍は何度も頷いた 「………死にてぇ奴なんて…… 誰もいねぇよ……」 康太は呟いた 「……愛する奴と離れてぇ奴なんていねぇ…… 我が子と離れて生きなきゃいけねぇ現実を呪っても……羨んでも……変わらねぇならな…… 精一杯……一分一秒を生きるしかねぇじゃねぇかよ…… 悔いなんか遺すかよ! ぜってぇにな!……だから精一杯生きてんだよ……」 榊原は立ち上がると康太を抱き締めた 康太を抱き締める腕が……震えていた 「………雅龍……思いっ切り泣いたら……夏海を支えてやってくれ…」 「……はい……」 「凰星と煌星がある程度……軌道に乗るまでは見届けてやる ………オレはそんなに長生き出来ねぇからな……」 「………炎帝……」 「………雅龍……夏海は悔いなんか遺すかよ…… おめぇを選んだ時点で総てを受け止めてるんだ」 「………炎帝……ありがとうございます…」 雅龍はもう泣いてはいなかった 「……帰ります……」 「慎一に送らせる」 「炎帝……また来ても良いですか?」 「おう!何時でも来い」 雅龍はペコッとお辞儀をして、慎一と共にリビングを出て行った 榊原は康太を抱き締めた 「………伊織……ごめん……」 「何で謝るんですか?」 「………伊織を苦しめるのは……オレだから……」 「……君がいるから僕は生きていけるんです 君の命は…短くとも精一杯一分一秒を大切にして生きて来た そんな君との日々は……僕にとって大切な日々です 君と出逢わねば知らなかった痛みでした…… こんなに愛せるのは……君しかいません 君と出会えて……本当に良かったと想います 愛してます……炎帝……」 共に…… その想いしかない 死しても共に…… 未来永劫……共に…… 炎帝…… 僕は君のいない世界に…… 一分一秒生きるつもりはないんです 二人は何時までも抱き合っていた 互いのぬくもりを確かめるように……

ともだちにシェアしよう!