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第13話 不器用な男ですから‥

榊原伊織は不器用な男だった 妻に気の利いた言葉を言おうとしても…… すんなり出て来ない…… 『可愛いですよ』とか 『君の○○な処、素敵です』 こんな台詞…… 簡単に言えない…… 康太は何も言わない 伊織の全部愛してる と言ってくれる でも……こんや不器用な男…… 何時か見切りを付けられないか…… 不安だった 考え込んでると、康太が背後から抱き締めてくれた 「どうしたよ?伊織?」 康太は女性には優しいフェミニストだ 炎帝の時から女性には優しかった 『その衣、似合ってるよ』 すんなり言うから…… 妬けた時もあった 「……康太……」 「あに考え込んでるんだよ?」 「………康太は僕で満足してますか?」 「してるぜ! オレはお前しか愛せねぇかんな!」 「………君の喜ぶ事も言えないのに……?」 「オレはおめぇがいてくれれば、それで良いんだ 何も言わなくても、抱き締めてくれれば良い…… そして愛してるって言ってくれ……」 榊原は康太を抱き締めて 「愛してます康太…」 と何度も言った 康太は嬉しそうに榊原の胸に顔を埋めた 「………僕は……君を喜ばす事も言えません…… 気の利いた台詞も言えません… 君を愛してる……しか言えません…… スマートにエスコートも出来ない…… 会話にしても…… 僕は……君を………」 榊原は……耐えきれなくなり…… 康太の肩に顔を埋めた 榊原の肩が震えていた 「……君は……炎帝は何時も皆の人気者です…… 君の周りには何時も人が集まり…… 君の為なら……その命さえ擲って……しまう人達がいる 君を愛してる人達は多い…… 何故……こんな男を選んだのか……解らなくなります」 康太は榊原の顔を上げさせると…… 頬を叩いた 「他なんて……100人来ようが……要らねぇんだよ! オレは青龍だけいれば生きて行けるんだ!」 康太は叫んだ 「……あんで解らねぇんだよ…… 望まれても……心底オレを必要とはしねぇだろ? オレの眼は…飛鳥井康太でなくなっても……視れるんだからな 皇帝閻魔がオレに授けた眼だ……オレの瞳は特別なんだ そんななんでもかんでも視れる眼なんて……堪えれるかよ ………もう良い……」 康太は榊原を離して立ち上がろうとした 榊原は康太を抱き締めて離さなかった 「………ごめん……康太……」 「……伊織?」 「………僕は気の利いた言葉も言えなくて…落ち込んでいました……」 康太は榊原を抱き締めた 「伊織……」 「何ですか?」 「100の言葉より…… お前の愛してる…の言葉の方がオレは嬉しいんだ…… おめぇに愛してるって言われてぇんだ……」 「……康太……愛してます…」 「オレも愛してる伊織…… 何も話さなくて良い…… 傍にいてくれれば……それで良いんだ オレはそれだけで生きて行けるんだ…」 「……康太……落ち込んでました 僕は不器用な男ですから…… 君に何をしたら喜んで貰えるか解らないんです……」 「手を伸ばして伊織がいてくれるだけでオレは嬉しい…」 「……愛してる……しか言えませんよ?」 「もっと言って…… オレをだけを愛してるって言って…… そしたらオレも言うから…… 伊織だけ愛してるって言うから……」 「………康太……愛しています 君だけを愛しています……」 榊原は泣いていた 康太は榊原の涙を拭って、口吻を落とした 「オレも愛してる伊織 伊織だけ愛してる だから離れないで…… オレを離さないで……」 「……離しません……絶対に……」 榊原は康太を抱き締めた 君は僕の統べてです 亡くしたら……生きていけない程に…… 言葉はなくて…… 互いの体温があれば良い 不器用な男が伝える精一杯の愛を受け止めるから…… 「……オレの全部は伊織のもんだ……」 榊原は康太をベッドに押し倒した 精一杯の愛を伝える為に……

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