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第25話 じぃじ
流生は源右衛門のゴツゴツした手がお気に入りだった
そのゴツゴツした手で撫でられると嬉しくなるのだ
音弥は寡黙な源右衛門がお気に入りだった
寡黙な源右衛門は黙って音弥のお歌を聴いてくれるから
歌った後に撫で撫でしてくれるから
翔はそっと背中を撫でてくれる源右衛門がお気に入りだった
修行に入る翔に源右衛門は何時も優しかった
何も言わず背中を撫でてくれた
その手の優しさに翔は安心した
太陽は源右衛門のお膝がお気に入りだった
源右衛門のお膝に乗ると安心出来た
太陽と大空を間違う事なく呼んでくれ頭を撫でてくれる
そんな じぃじ が大好きだった
大空は伊織に似て不器用な男だった
何時も一歩出遅れる……
そんな時源右衛門が頭をポンポンとしてくれる
そんな時……泣きたくなる程に安心出来た
大空は源右衛門の背中によじ登った
この大きな背中が大好きだったから…
源右衛門は孫と過ごす時間が大好きだった
優しい曾祖父であろう……と想う
この子達の為なら……
この命を擲ってでも守ると決めていた
「愛しき子達よ……」
源右衛門は孫を抱き締めた
「じぃじ」
子供達は嬉しそうに源右衛門に擦り寄った
この……愛しき時間が止まれば良いのに……
人は寿命がある
人は死ぬ
老いた自分の時間が……
そう長くないのは知っていた
星詠みが……自分の終末を詠める時……
定めは覆らないと知る
なれば……わしは……
お前達を守り通して……
壁になろう
そう心に決めていた
愛する孫達よ……
源右衛門は手の中の愛しき子達を何時までも抱き締めていた
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