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第35話 予防接種

康太は慎一と一生に手伝って貰って子供達を保健所に連れて来た 予防接種の為だった 子供達は緊張していた 「かぁちゃ……」 流生がかぁちゃを呼ぶ 「あんだよ?流生」 かぁちゃの笑顔は何時も安心する………が、今日は違った 何されるのか解らないから怖かった 子供達の顔は強ばって……泣きそうだった 康太は子供達を抱き締めた 「あすかいかけるくん」 可愛いエプロンをした看護師さんが翔を呼ぶ 翔は泣きそうな顔をして、かぁちゃに手を伸ばした かぁちゃは翔を抱き上げると呼ばれた方へ向かった 「はい!かけるくん、これ何かな?」 看護師さんが縫いぐるを持って子供達の意識を引く 医者はその間に袖を捲り上げ消毒した そしてブスッ…… 「……いゃぁい……いゃぁい……」 翔は泣いた 慎一が翔を連れにやって来た そして外に出て行った 「あすかいりゅうせいくん」 看護師さんが流生を呼ぶ 流生は猛ダッシュで逃げ出した 「こら流生!」 一生が捕獲に向かい、呆気なく御用になった 「………かじゅ……」 涙ながらに同情を引く作戦に出た流生を…… 一生は康太に渡した 「すみません……往生際悪くて……」 康太は流生を抱き上げると椅子に座った 「りゅうせいくん、これ何かな?」 看護師さんが必死に流生の気を引く 流生は騙されないぞ……とばかりに……そっぽを向いた 康太は「ひと思いにやって下さい……」と医者に頼んだ 医者は流生の袖を捲り上げて……ブスッと注射した 「…ぎゃぁ…いにゃい……」 流生は泣いた 泣きながら……かぁちゃを見た 「流生が変な病気にならねぇ為なんだぜ 流生が変な病気になったら……かぁちゃ……悲しくて死にたくなるだろ?」 「……りゅーちゃ……らいじ?」 「大事だ!オレの宝物だからな」 「……かぁちゃ……」 流生は泣いた…… 康太は流生を一生に渡そうとした 「かじゅ……」と名前を呼んで……プンッとした 助けてくれると想っていたから…… 絶対に一生は助けてくれると想っていた…… 「ごめんな……りゅー でも予防接種打たねぇとかぁちゃ泣くぜ」 「ちょれ……やら……」 一生は流生の頭を撫でた 翔は流生を抱き締めた 「……かけゆ……」 「りゅーちゃ…らいじょうぶ」 流生は翔に抱き着いた 「あすかいおとやくん」 看護師さんが音弥を呼ぶ 音弥は太陽と大空の後ろに隠れた 「音弥、隠れてもダメ」 「……おとたん……ゃら……」 抵抗する 康太は音弥を抱き上げると医者の前に連れて行った 医者は手早く袖を捲り上げると、消毒してブスッと注射を刺した 「らめぇ……いにゃい……やら…」 音弥は暴れた 泣いて暴れた…… 康太は疲れ果てていた 子供達に恨まれる…… ても予防接種はしないとダメだし…… 康太が泣きたくなって来た そこへ榊原が顔を出した 「康太」 名前を呼ばれて康太は泣き出した 榊原は康太を抱き締めた 「後は僕も手伝います」 「………こんな痛い想い……させたくねぇ……」 「でも必要なんですよ 子供達の為です……」 「あすかいひなたくん」 看護師に呼ばれて榊原が太陽を連れて行った 太陽は脅えていた 腕を捲り上げると……消毒してブスッと注射した 「………いにゃい…いにゃい……」 榊原は太陽を抱き締めた 予防接種を打った腕を服の上から撫でてやる 精神的に追い詰められて行く…… 子供達に痛い想いをさせたくないのに…… 榊原は太陽を慎一に渡した 「あすかいかなたくん」 大空が呼ばれた 大空は 覚悟を決めた 「うち!きゃな、ぎゃんびゃる!」 「………大空……良い子ですね」 榊原は医者の処へ大空を連れて行った 腕を捲り上げると消毒をして ブスッと注射した 「……ぎゃぁ……らめ……」 大空はあまりの痛さに叫んだ そして泣き出した 「……いらい……」 大空は泣いていた 榊原はゲッソリと疲れて大空を抱っこして待合室に向かった 康太が榊原を見上げた 「…伊織……大丈夫か?」 「…目の前で泣かれると……痛い想いなんてさせたくないと想いますね……」 「………伊織……オレ達……嫌われたよな……」 「……痛い想いさせたんですものね……」 榊原と康太は抱き合った 一生が「恨んだりしねぇだろ? アイツらは、かぁちゃもとぅちゃも大好きなんだからよぉ」 と慰めた 子供達は康太と榊原の処へ駆けて行った 「「「「「かぁちゃ……とぅちゃ……」」」」」 必死の顔で駆け寄って来る 榊原と康太はしゃがんで我が子を抱き締めた 康太は子供達の頭を撫でた 「頑張ったな! 偉かったな」 かぁちゃは優しい顔で撫でてくれた 「流石です、よく我慢出来ましたね とぅちゃの子供達です!」 と撫でてくれた 子供達はとぅちゃとかぁちゃに抱き着いた そして泣いた 痛い……より…… 嬉しかった 予防接種の日 子供達は必死に耐えて頑張った 両親は子供達の頑張りが誇らしくもあり…… 痛い想いをさせた……罪悪感に泣きたくなった 恨まれたら…… 嫌われたら…… そう思うだけで……予防接種なんか辞めたくなった…… 親なれば解る…… 思いだった 榊原と康太は…… そんな想いを噛み締めた

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