42 / 163
第42話 コオ イオリ
コオは体調を崩していた
毛並みも悪くなり……
康太はコオを病院に連れて行った
イオリが一緒に行こうとしたが、イオリは置いて
コオだけ抱き上げて榊原と共に動物病院へと向かった
「……コオ……おめぇ……イオリを遺して逝ったら……
イオリも後を追うだろうが…」
康太が言うとコオは哀しそうな顔をして…
キュンキュン鳴いた
康太は榊原に「拾い食いしたのかよ?」と問い掛けた
「……康太…拾い食いなんてさせてませんよ…」
「なら……あんでコイツはこんなに体調崩してんだよ…」
「解りません……医者はもう直ぐです」
榊原はアクセルを踏み込んだ
コオはグタッとして……胃液を吐いていた
康太はブランケットで包み暖かくして抱き締めていた
車が 動物病院へ着くと、康太は車から下りた
獣医にコオを見せる
この動物病院はコオとイオリの掛かり付けの病院だった
検診から予防接種まで受け持って貰っていた
獣医はコオを貰い受けると、寝台の上に寝かせた
「何時から?」
「昨日寝る前は元気だった
今朝、散歩に行こうとすると…グタッとしていた」
獣医はあれこれコオに検査して、処置に当たった
「君んち子供いる?」
「います」
「子供ってチョコレート好きだよね?」
「ええ。昨日はチョコレート与えてました」
「犬もねチョコレート好きなんだよ
でも犬がチョコレートを多量に摂取すると、嘔吐や下痢、多尿、興奮、発熱、不整脈、運動失調、筋肉のけいれん、発作などの症状が見られ、また腹痛や血尿、脱水を引きおこす場合もあるんだよ
君んちの犬……モロ、その症状だね」
「………コオがチョコレート食べたんですか?」
「チョコレート中毒症だと想うよ
今夜は処置しておくから入院させて様子を見るよ」
「……先生……」
「何ですか?」
「この犬には恋人がいるんです……
恋人の犬を……傍に置いてたら……ダメですか?」
「………イオリですか?」
「………知ってましたか?」
「あの犬……此処でも盛ってました……」
康太は想わず…顔を覆った
「ならイオリを連れて来て下さい
一日様子を見て、明日、戻ったら連れ帰って構いません」
「ありがとうございます」
「これからコオを胃が空っぽになるまで吐かせます
30分位後に連れて来て下さい」
「解りました」
榊原と康太は家に一旦帰った
家に帰ると玲香に
「母ちゃん、オレの子供がコオにチョコレートを食わせたらしいんだ」
と告げた
そう言えば昨日は週に一度のチョコレートの日だった……
と玲香は思い浮かべた
「……犬はチョコレートダメなのかえ?」
「チョコレート中毒症だと言われた……
今後、チョコレート食わせるならコオとイオリのいない場所じゃねぇとな……」
「……コオはお人好しだからのぉ……」
「貴史から託された犬だかんな……死なせる訳にはいかねぇんだよ…」
「解った……チョコレートを与える時は犬とは引き離して、徹底しようぞ!」
「……チョコレート禁止するか……
虫歯にもなるしな……」
「……それは……可哀想すぎる」
「……ならチョコレートは見てる時に与える
それを徹底しねぇと、コオとイオリは死ぬぜ」
「………イオリはチャンピオン犬なのを貰い受けた……
死なせれはせぬ……」
「コオだって貴史が託した犬だぜ」
「……二匹とも……何かあったら兵藤に顔向け出来ぬわな…」
「だろ?コオは今日は病院で泊まりだ
イオリも連れて行く」
「二匹は離れなれぬからのぉ…」
「母ちゃん、オレの子を頼むな」
「任せておくと良い
子供を見る手は沢山ある」
榊原はイオリにリードを付けるとゲージから出した
イオリは鳴きながら歩いていた
瞳から涙を流して……
今にも倒れそうだった
榊原はイオリを抱き上げると、康太に
「行きますよ」
と告げた
動物病院へ行くと、待合室で待たされた
イオリは気が気じゃなかった
コオに何かあったら……
自分も死のう……
そう決めていた
年上のコオの方が早く老いる
だけど生涯愛するのはコオだけと決めた
コオ以外とは番わない
番(つがい)はコオだけ
亡くしたら……死のう……
そう決めていた
待合室で待ってると獣医が
「入って良いですよ」
コオは泊まり用のゲージの中に意識をなくして寝ていた
獣医はイオリを持ち上げると様子を見た
「コイツは食ってねぇのかよ?」
あれこれ検査して解放された
止めろよ……
ボクを早くコオの所へ行かせてよ!
イオリは唸った
「大丈夫みたいだな」
解放されてコオのゲージの中へ入れられた
イオリはコオをペロペロ舐めた
コオ
コオ
コオ……
呼びかけるようにペロペロ舐めた
コオは安心したような顔でイオリの匂いを嗅いだ
そしてキューンと鳴いた
イオリはコオを護って寝そべった
康太と榊原はそれを見て、安心した
「明日、迎えに来て下さい」
獣医に言われて、康太と榊原は帰って行った
コオ……愛してます
コオ…愛してます
キュンキュンとイオリは想いを告げた
獣医はそれを見て
「んとに♂同士なのに……
仲良いよな…おめぇらは」
と言い笑った
イオリの前にドックフードを置いて、獣医は出て行った
イオリはコオをペロペロ舐めた
コオの大切さを確認した日だった
ともだちにシェアしよう!