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第49話 スィートバレンタイン

「うし!オレ、チョコ作る!」 康太は世の中のバレンタインに触発されて叫んだ 榊原に手作りチョコを渡すと決めた 一生が必死に康太を止めた 「止めときなはれ!」 一生が康太に飛び付いた 「チョコ食いてぇなら俺が作ってやるからよぉ!」 康太はブスッとふて腐れた 「………オレは伊織に手作りチョコを渡してぇんだよ!」 康太は叫んだ 手には…… 『スィートバレンタイン! 手作りチョコで彼氏の心を掴んで離さない!』 と言う本が握られていた 「………康太……」 「あんだよ?」 「この本……」 どうしたんだよ?……とは聞けなかった 「お!この本か? 東城が用があるって言ったからな、東都日報に行ったんだよ そしたら東都日報の入り口に大々的に貼ってあったんだよ 欲しい……って言ったら東城がくれたんだよ」 康太は嬉しそうに答えた 一生は……東城……恨むぞ…… と心の中で呟いた 過去に……バレンタインチョコで病院送りにされた…… 瑛太も一生も聡一郎も隼人も……入院した 食あたり……何を食べたんですか? と聞かれて…… 一生は康太に貰ったチョコを看護婦に見せた 看護婦はチョコを手に取り…… 「………すみません……これは何ですか?」 と尋ねた 「………バレンタインチョコです……」 「………ええ!こんな凶悪なバレンタインチョコは見た事はないです! 科捜研に成分の分析を依頼します!」 看護婦は真剣に言った 一生は……「おい……まぢかよ?」と倒れた… そんな経緯があって…… 康太が何か作ると言うと敏感になる 夏休みの工作で……先生に爆弾ですか? と聞かれた……蓄電池はやはり爆発した 体育館1つ……ぶっ放した 榊原は覚悟を決めた 「康太!君の愛のこもったチョコなら僕は残さずに食べます!」 「………止めとけ旦那……」 「止めなくても大丈夫です 愛があれば乗り切れます……」 「………愛があっても……無理だ旦那… 今回も俺が食う……」 一生が言うと聡一郎も 「ならば、僕も食べます 伊織、量が減るので君の分はないです」 と言った 隼人も覚悟を決めた 「オレ様も食べるのだ! 仕事は二週間位……休みを取る 月9が遺作になってもオレ様は本望なのだ」 康太は本をテーブルに放った 「もう良い……」 そう言い……応接間を出て行った 玄関のドアがバタンッと言って…… 榊原は慌てて後を追った 家を出ても康太はいなかった 「………え?直ぐに追ったのに……何処にもいません……」 榊原は慌てた その時、榊原の携帯に電話が入った 『兵藤だけど?』 「……貴史……どうしました?」 『康太が美緒と歌舞伎座に行ったからな、連絡入れといた』 「………歌舞伎座?」 『家の外に飛び出した所を美緒が拾ったと言ってたぜ』 あぁ…なる程…… 榊原は納得した 『今夜は帰らねぇと想うぞ』 「……え?…」 『美緒がホテルを取ったって言ってた 泣いてる康太を渡す気は皆無よ!と言っておけだってさ』 「………そうでしたか……」 『何があったんだよ? これから行くから聞かせろ!』 「貴史、来るならチョコを大量に持って来て下さい」 『……チョコを?解った!大量にだな!』 兵藤はそう言い電話を切った 暫くして兵藤は飛鳥井の家を尋ねて来た 段ボール箱何箱にもチョコを買ってやって来た 「これで足りるか?」 「足ります!貴史、君もチョコを作りますよ!」 「え~俺は甘いのは勘弁……」 「僕も甘いのは勘弁です でも康太を殺人者にする訳にはいかないんです! 手伝いなさい!」 「………おい……それは何の事よ?」 一生は今までの経緯を話した 「康太が夏休みの工作免除って……それでか……納得した アイツだけ依怙贔屓って思ってたけど、体育館1つぶっ放したんなら……学校側も二度と被害は避けたいよな……」 兵藤は納得した 「ならチョコを作るぞ! あんで俺が……」 兵藤がボヤくと一生が 「康太の為だ!」 と言い康太の持ってた本を手渡した 「康太はこれを見て作ろうと決めたんだ…… この出版社は潰すしかねぇぜ!」 兵藤は本の裏を見た 東都日報と書かれたロゴに 「……東都日報ですがな……」 と一生に見せた 「東都日報は無理だわ……」 潰したら……怒られる…… 兵藤は黙々とチョコを作り始めた 榊原もチョコを湯煎して溶かしていた 一晩掛けて……榊原達は康太へのチョコを作った 一生は「……疲れた……康太呼ばねぇとな」と呟いた 兵藤は母親に電話して康太を連れて来て貰う様に頼んだ 暫くすると康太が家に帰って来た 榊原や兵藤は康太にチョコを見せた 一生、聡一郎、隼人も康太に必死に作ったと伝えた 康太は何も言わず……部屋に帰った 寝室のドアを開けてベッドに潜り込んだ 作って欲しいんじゃない…… 作って贈りたかったのだ…… だけど……病院送りにしたのは事実だ 作るなと言うなら…作る訳にはいかなかった 康太は涙を拭いた 榊原は康太を追って寝室のドアを開けようとした だがドアには鍵が掛かっていた 榊原は呆然とした 慎一が榊原に 「康太は貴方の為に作りたかったんです……」 と康太の想いを告げた 「……康太と話します 貴方は席を外して下さい」 慎一はそう言った 榊原は応接間へと向かった 「康太、俺です慎一です 俺しかいないので開けて下さい」 慎一が言うと康太は部屋を開けた 「………泣いていたんですか?」 康太はそっぽを向いた 「康太、一緒にチョコを作りませんか?」 康太は涙で濡れた瞳を慎一に向けた 「……オレが作ると病院送りになる……」 「なりません!一緒に作るんです! 病院送りになんかさせません!」 「慎一 オレ……」 康太は泣いた 慎一は康太を抱き寄せた 「俺が言う通りに作れば……大丈夫です! 康太が作るんですよ?良いですね!」 康太は何度も頷いた 康太は慎一と一緒にチョコを作った 慎一の言う通りに手伝って貰ってチョコを作った 綺麗にラッピングして康太は笑顔だった 「慎一ありがとう……」 「康太の心がこもってますからね…喜ばれると想います」 「慎一、ありがとう 心を込めて慎一に!」 康太は出来たてのチョコを慎一に渡した 子供達に渡して…… 「おしまい!」と言った 榊原や一生、聡一郎、隼人には……チョコはなかった 「……康太……僕にはないのですか?」 「……ん。伊織達にはチョコが沢山あるじゃねぇかよ!」 兵藤に買いに行かせて作ったチョコがあった 榊原は「あのチョコは社員に配ります!」と言い康太に迫った 「僕は康太からのチョコが欲しいのです」 「………無理しなくても良い…… 伊織も聡一郎も一生も隼人も……無理すんな!」 康太はそう言い…… 寝室に帰ろうとした 榊原はその手を掴んだ 「僕にはないのですか?」 「………伊織……」 「君が作るのでしたら……病院送りになっても食べます!」 「……伊織……」 「慎一には渡して……何で僕にはないのです?」 康太は…小さな箱を榊原に差し出した 「僕にですか?」 康太は頷いた 「嬉しいです! 康太…食べさせて下さい」 康太はリボンを解いて……箱を開けた そして一粒摘まんで榊原の口に入れた ビターな味のチョコだった 甘いのが食べれない榊原の為のチョコだった 「康太、美味しいです…」 榊原は康太に口吻た 一生は「ズルい俺は?」と問い掛けた 聡一郎も「僕も欲しいです!」と注文した 隼人も「オレ様の分は?」と催促した 康太は3人に……箱を渡した 榊原は康太を抱き上げて寝室に向かった 「このチョコが溶ける程のキスをしてあげます」 ベッドに押し倒され……口の中にチョコを入れられた 榊原は康太の唇に口吻た 口の中のチョコが溶けて……口から流れた 甘い……スィートバレンタインだった 溶かされて……乱されて…… 愛し合う恋人達の時間だった

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