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第57話 ひょーろーきゅん②
ひょーろーきゅんは飛鳥井の家に良く顔を出してくれる
かぁちゃに逢う為もあるけど……
お留守番のボク達を心配して来てくれるんだ
「まだ康太は帰らねぇのかよ?」
ひょーろーきゅんが京香に声を掛ける
「康太だけじゃなく伊織も帰らなくなったのだ」
「………康太が帰らなきゃ伊織も消えるとは解っていたけどな…」
「1ヶ月堪えた……これ以上は限界だったのだろう……」
「康太……何処にいるんだ?」
「伊織は康太に逢いにフィンランドに行ったそうじゃ」
「フィンランドぉ!!
国内じゃなかったのかよ?」
兵藤は携帯を取り出すと電話を掛けた
「お久し振りです正義さん」
『貴史か?どうした?』
「康太、フィンランドにいるの、知ってました?」
『知ってる
伊織を政府専用機に乗せてフィンランドに連れて行ったのは叔父貴だ!』
堂嶋の叔父貴……と言う事は安曇勝也……現総理だ
堂嶋は兵藤を預かってる時に、色んな話をしてくれた
『俺はな貴史、康太が三木敦夫と兵藤丈一郎に託して一から叩き上げられた政治家なんだよ』
堂嶋は誇らしげにそう言った
『康太は俺を政治家にする為に三木敦夫と兵藤丈一郎に預けた
そして2人から叩き上げられ育てられた
そして三木敦夫が命と引き替えに安曇勝也に託した
………それが俺だ』
三木敦夫は安曇勝也に
『ある人から逢わせる時期が来たと言われました
彼は貴方の懐刀になり政界に立ちます
孤高の戦士として安曇勝也の懐刀に収まる時期が来たのです
安曇総太郞氏は全部ご存知です
運命を受け入れなさい!』
三木敦夫は安曇勝也に、堂嶋正義を預けて、その先を見届けて息を引き取った
『兵藤丈一郎は無念だった
私も無念だよ……堂嶋正義
康太君のいる時代に存在出来ない……それだけが無念で仕方ない……』
偉大な政治家と言われる男達に……
そこまで言わせる飛鳥井康太の傍に行きたかったんだ
堂嶋正義は兵藤にそう言った
安曇勝也に預けられて以来
堂嶋は安曇の事を叔父貴と慕っていた
『貴史、今暇か?』
「ええ。進級も決めました
暇なら沢山あります」
『なら、3日後、ロシアに行く着いて来い』
「………ロシア……ですか?」
渋る兵藤に餌を与える
『康太はロシアにいるぞ!
3日後にロシアに来いと呼ばれたんだからな』
「行きます!
何時に何処へ向かえば良いですか?」
するとパクッと食い付いた
堂嶋は苦笑した
『日時はまた電話する
じゃあな!』
堂嶋はそう言い電話を切った
兵藤は電話を切って笑った
何でロシアにいるかは解らないけど……
逢えるのは嬉しかった
子ども達は嬉しそうな顔をする兵藤に声を掛けた
翔が「ひょーろーきゅん」と呼んだ
「何だ?」
流生が「うれちぃきょとがあっちゃの?」と問い掛けた
………侮れねぇ……
小さいけど……康太の子供だ
音弥が「かぁちゃ にょ きょと?」とさらに鋭い突っ込みをする
太陽が「ちょうらよ!ひょーろーきゅんはかぁちゃ いのち らもん」
大空も「ちょう!かぁちゃちかみてにゃいもん」とトドメを刺した
兵藤は頭を抱えた
子供の癖に……
兵藤は流生を抱き上げると高い高いした
「きょわい…ひょーろーきゅん」
頑固な眉毛が下がってた
「くすぐってやる!」
兵藤は流生を下に下ろすと、5人の子供をくすぐった
「らめ!ひょーろーきゅん」
翔がギブアップした
「ひょーろーきゅん……ちぬ…」
音弥が死んだフリした
太陽と大空はおへそを見せて抵抗していた
翔は兵藤の背中に抱き着いていた
「ひょーろーきゅん」翔が呼んだ
「いっちょに」音弥が抱き着いて来て
「ねんね」太陽が訴えて来た
「ちゅるの」大空が兵藤のほっぺにチュッとした
「もぉはなちゃにゃい!」流生が兵藤を離さなかった
京香はそれを見て
「泊まって行ってあげて下さい」
と頼んだ
客間にお布団を敷いて、兵藤は子ども達と雑魚寝した
子供の体温は高くて……
兵藤は久し振りに深い眠りに落ちた
ひょーろーきゅん
5人はひょーきゅんにチュッとキスした
寂しそうなひょーきゅんを帰したくなったのだ
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