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第58話 貴史の許嫁

兵藤貴史には許嫁がいる 親や家が決めた許嫁ではない 飛鳥井家真贋が決めた許嫁だった 龍ヶ崎すみれ 政界ではかなり切れ者の龍ヶ崎斎王の次女だった 政略結婚……とかではない なんたって母親の美緒は 「嫌なら結婚しなくても良いではないか」 と、あっさり切り捨てる程に…… 兵藤の家はそんなに重くは考えてはいなかった 龍ヶ崎すみれは兵藤に 「貴史、子供だけ作れば後は好きにするがよい お前の愛する康太といても、我は何も申しはせぬ この世で最高に幸せな妻を演じてやるわい」 ガハハハッと嗤う顔は…… 男前だった 「すみれ」 「何だ?」 「俺、結婚する以上は愛し合って暮らしたい訳よ?」 「だがな、貴史 お前は常に康太一筋 それでは妻は妬くであろうて! 我にしとけばよい! 我は康太とじゃれてても妬いたりはせぬ」 「………お前……好きな男いねぇの?」 「我の好きなのは康太ちゃんだけだ! その康太ちゃんが貴史と結婚しろと言うなら我は結婚する 稀代の政治家の妻を務めて見せる!」 「………すみれ……お前は妻と言うより盟友だな……」 「なんでもよい 我と結婚するのだ貴史」 「はいはい。」 「我は貴史以外には股は開く気はない」 「はいはい………って? 俺には開くのかよ?」 「………夫なら子作りせねばならぬだろうが!」 「………はいはい!」 「貴史」 「何だよ?」 「我は真壁の 土地に建つマンションを買った 父上が結婚祝いだと買ってくれたのだ 5LDKで文句はあるまい!」 「………文句言ってもお前聞くのかよ?」 「………一応……夫なれば我は聞く 嫌われたくはないからな!」 「………すみれ……お前… 案外可愛い奴だったりする?」 「我は可愛いと康太ちゃんは何時も言ってくれる だから貴史……言わなくてもよいぞ!」 「………なんだよ?それは……」 「結婚式は盛大にな なんたってお前は龍ヶ崎の娘を娶るのだからな!」 「………面倒くせぇ……」 すみれは兵藤を蹴り上げた そして兵藤の所から泣きながら走って帰った すみれは飛鳥井に来ていた めそめそ泣いて康太に撫で撫でしてもらっていた 「………すみれ……貴史との結婚辞めるか?」 「厭だ!マンションまで父じゃに買わせたのに……」 「………斎王が喜んでたな あのじゃじゃ馬が嫁に行く気になってるって……」 「我は貴史が康太と離れられなくてもよいと言っておるのに…… 子供だけ作れば後は好きにしろと言っておるのに……」 「貴史は我が子を愛してぇんだよ!すみれ 我が子を愛して、我が子に親父の背中を見せて育ててぇんだよ!」 「………我も貴史と愛したいのじゃ… でも貴史は……そう言うの嫌いなんだと思っておった……」 「すみれ 良き妻にならなくても良いんだよ! 良き妻じゃなくて良い 如何に貴史を愛して支えてやれるか…… それだけ解ってれば良いんだよ」 康太は流生を抱き上げて、楽しそうに言った 「かぁちゃ ちゅき」 「流生、かぁちゃも大好きだぞ!」 康太は我が子を手にして笑っていた すみれは羨ましそうに…… その光景を見ていた 「ちゅみれ!」 翔がすみれの名前を呼んだ 「なんじゃ?翔?」 「らっこ!」 抱っこしろと翔は言った すみれは翔を抱っこした 「翔は男前だのぉ!」 スリスリしてると翔はすみれのホッペにチュッとした 「………この年で……たらしだ……」 すみれは呟いた 康太は爆笑した 康太は榊原に抱き着いて甘えていた 榊原は康太の頭をぽふぽふと撫でた 「……康太夫婦を見てると……我も愛されたいと思うのじゃ……」 すみれは羨ましそうに2人を見た 「愛してくれねぇのかよ?貴史は?」 「……どうなのだろ? 我は……康太しか好きじゃない…」 「すみれ、それは愛じゃねぇよ」 ………そんな事ない 康太が好きなのだ 何をしてても康太が一番なのだ…… 榊原は康太の唇にキスを落とした 「じゅるい!おとたんも」 とぅちゃがかぁちゃにキスすると子ども達も燃えた 音弥は康太にチュッとした 太陽と大空は左右からかぁちゃにチュッとした 流生はかぁちゃに抱き着き、お口にチュッとした 榊原はすぐさま「消毒」と執拗な接吻をした 翔はとぅちゃにチュッとした 流生は「とぅちゃ……じゅるい」と拗ねた 拗ねた眉毛が一生と一緒で笑えた 康太は流生をギュッと抱き締めた 「………康太……我も子供が欲しくなるな……」 すみれは呟いた 「貴史と作れよ」 「………無理な気がする……」 「………そのうち作ってくれるだろ?」 康太は笑った 飛鳥井のインターフォンが鳴り響くと慎一が出た 慎一が玄関のロックを解錠すると兵藤が応接間に入って来た 流生が兵藤に飛び付いた 音弥も兵藤に抱き着いて 「ひょーろーきゅん」と甘えだ すみれはそれを見て 「……やっぱり貴史はずるい……」 と拗ねた 「ひょーろーきゅん」翔が呼んだ 「あんだよ?」 「きゃのじょ 」音弥が怒って 「なかちたら」太陽も怒って 「らめにゃの!」と大空も怒った 流生が兵藤に「めっ!」とした 「………怒られちまったぜ!」 兵藤はボヤいた すみれは兵藤に「すまぬ…」と謝った 「すみれ!俺と結婚するんなら子供は5人は欲しいよな?」 兵藤が言うと、すみれは真っ赤な顔をした 康太と榊原は笑っていた 「伊織、オレ等も子作りしようぜ!」 榊原は康太を抱き締めた 手付きが……少しヤバい 榊原は康太の服の中に手を差し込み…… 「では奥さん、頑張りますか!」 と言った 「おい!此処で始めるなよ!」 兵藤が叫ぶと、一生が 「貴史……言ってて恥ずかしくねぇ?」と呟いた 「あんだよ一生!」 「この2人に言うだけ無駄なのに……」 聡一郎は気にもとめずに永遠と遊んでいた 流生が「とわちゃ」とチュッとする 永遠は喜んで流生に抱き着いた 「流生……美智留と瑛智を踏ん付けたら駄目です」 瑛智は流生に手を伸ばした 「えいちゃ」 美智留も流生を見て笑っていた 「みちゃ」 お兄さん気分で流生が2人の世話を焼く そして飽きると……兄妹の元へ帰って行く 疲れて帰って来た流生を音弥は撫で撫でしていた 翔は流生に抱き着いていた すみれは5人兄弟を見て羨ましかった 「貴史……」 「なんだよ?」 「………子供が欲しい……」 「大学出るまで待て そしたら嫁に貰ってやる」 「………貴史は落第しておるからな……」 「………それを言うなら貰ってやんねぇぞ!」 「……厭だ…」 「少し待て……」 「待ってるから嫁にしてたもれ」 兵藤は笑っていた 飛鳥井家真贋の決めた許嫁だった

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