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第61話 酔いどれの日々

飛鳥井瑛太は悪友の田代、佐野と神野晟雅と飲んでいた 何時になくハイペースで飲んでいた 「………あそこに座ってる子……康太に似てる……」 酔った瑛太は小さめの男の子を見ていた 「………康太……逢いたいな……」 瑛太は泣きながらお酒を飲んでいた 神野が「………瑛太……熱い視線送りすぎ……」と注意した 熱い視線を送られた小さめの男が瑛太を見ていた 「………康太……逢いたい……」 「ねぇ、僕を見てた?」 小さめの男は瑛太に近寄って来た その時、瑛太の胸ポケットが震えた 瑛太は「君を見てはいません!」と断った そして携帯の通話ボタンを押した 『瑛兄?』 電話の相手は……康太だった 「……康太……兄は……」 瑛太は泣き出した ベソベソ泣く瑛太に康太は 『瑛兄、今何処よ?』 「田代と佐野と晟雅と飲んでます」 『あんまし飲むなよ瑛兄』 「康太……兄は君に逢いたいです……」 『瑛兄、ニューヨークに来い!』 「解りました!今から行きます!」 瑛太は電話を切った 田代は「おい、何処に行くだよ!」と瑛太に問い掛けた 「康太がニューヨークに来いと言いました! 私はニューヨークに行きます!」 席を立つとスキップして行きそうだった 田代は瑛太を止めた 「こんな夜中に飛行機は飛びませんよ!」 「………田代……ニューヨークに行きたいよぉ……」 瑛太はグズグズ泣き出した 「……コイツ……こんな性格だったけ?」 田代はボヤいた 佐野は笑っていた 神野が「康太が不在だからだろ?チケット取ってやらないとダメだな」と酔っ払いの瑛太を見た 佐野が「飛鳥井に連れて行って、荷物持たせて羽田に送って行くか……」と諦めの境地で言う 泣いて情けなくても友だった 佐野はタクシーを停めると、田代と神野が瑛太を担いでタクシーに乗り込んだ 神野はチケットを取るためにPCを開いていた 田代は戸浪に電話を入れた 「社長、康太さんニューヨークにいるみたいですよ?」 『田代!私もニューヨークに行きます!』 「………想像通りで……なんと言って良いか……」 『田代、チケットを取って下さい!』 「社長、空港まで来ますか?」 『今から行きます!』 「社長!」 まだ夜中………と言うのに……電話が切れた 「………神野……」 「チケット取れって言うんだろ? 取っておいたよ 瑛太とお前と戸浪さんで良いか?」 「……俺……ニューヨーク行かなきゃダメだよな?」 「………社長が行くんだもんな……」 「………もっと酒飲んどけば良かった……」 田代がボヤくと佐野は爆笑した 「お前はセーブかけ過ぎるからな、損な性格だわ」 「………佐野……キスされたくなかったら黙ってろ!」 「………田代のキス……魘される……」 佐野は黙った 飛鳥井の家に一旦行って、瑛太の妻の京香が瑛太の荷造りをした タクシーを拾い田代は瑛太と共に空港まで向かった 神野と佐野とは飛鳥井の家で別れた 田代は空港に行く前に自宅に寄って貰って着替えを鞄に詰め込んだ そして瑛太の待つタクシー乗り込んで空港へと向かった 空港には戸浪が待っていた 「社長……夜中だって自覚ありますか?」 「……やけ酒飲んでたんだ……」 戸浪は赤い顔してそう言った 「誰と飲んでたんです?」 「相賀と須賀です」 戸浪の横には相賀と須賀もいた 「………2人も行く気ですか?」 田代が言うと相賀は 「康太が不足してます」と言った 須賀も「康太に逢いたいのです」と答えた すっかりニューヨークに行く気の相賀と須賀……そして戸浪に苦笑しつつ田代は瑛太を座らせた 戸浪は「瑛太君」と名前を呼んだ 「若旦那……お久しぶりです」 「……君も飲んでたの?」 「そうなんです学園時代の悪友と飲んでたら康太から電話がありました」 「1ヶ月ぶりだね……」 戸浪は感激していた 「若旦那……」 「瑛太君…」 2人はひしっと抱き合った 田代は「はいはい。手続きに行きますよ」と戸浪を止めた 酔いの浅い田代が酔っ払いを相手にニューヨークまで向かう 最悪の夜…… 田代は「もっと飲んどけば良かった…」と後悔した

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