64 / 163

第64話 何か違う コオ イオリ

ペットホテル暮らしが長くなって…… もう家に帰れないかな…… と悲しくなった頃 飛鳥井玲香と兵藤美緒がペットホテルにやって来た 玲香はコオとイオリを見ると頭を撫でてくれた 「元気にしておったか?」 玲香は優しく尋ねてくれた 「長い間こんな所へ入れて悪かった…… 今日からお前たちは兵藤の家で預かって貰う」 『……え!家に帰れないの……』 コオがキュンキュン鳴いた 「飛鳥井の家は……面倒を見れる人間がおらぬのじゃ…… 一生も聡一郎も隼人も慎一も今はおらぬ……」 『と言う事は飼い主康太と伊織もいないって事ですね』 イオリはそう呟いてコオを舐めた 飛鳥井玲香と兵藤美緒に抱き上げられて、ペットホテルを後にした 美緒はイオリを撫でていた 「やはりイオリの毛並みは兄弟犬の中で一番だわな」 美緒が呟くと玲香は 「………すまぬな……チャンピオン犬を……」 謝った 「………玲香のせいではない この犬が……伊織ソックリなのがいけないのじゃ…… 一目惚れじゃ……文句も言えまい……」 美緒はすっかり諦めていた 初恋を貫いた犬 イオリ イオリにとってコオは初恋の犬だった 出逢った瞬間 恋に落ちて…… コオの上に乗って犯した…… コオを見た瞬間 欲しい それしか考えられなかった…… 餌を食べず 死ぬ一歩手前まで自分を追い込み 飼い主美緒が……諦める…… そこまでしてコオの傍へ…… 行きたかった そして今 念願叶ってコオの傍にいる コオ 僕は君の傍にいられるなら…… 何も望みません イオリはコオに熱い視線を送っていた 美緒は呆れて、それを見ていた 「………伊織ソックリだわ」 美緒が呟くと玲香は笑った 「あの2人も離れてはおれぬからな……」 「今も‥‥一緒におるのであろう…」 玲香と美緒は離れられない恋人同士に想いを馳せた 離れられない恋人…… コオとイオリは兵藤の家に引き取られた 兵藤の家には、コオの母親コータがいた イオリの母親のタカシもいた イオリの兄弟犬 桃太郎(康太命名)もいた 桃太郎はイオリの匂いを嗅いだ ついでにコオの匂いを嗅ごうとした するとイオリは桃太郎の鼻先からコオを隠した 『僕の妻に触らないで下さい』 イオリは吠えた 桃太郎は『……コオ……オスだよ?』とマトモな発言をした 『僕の妻は未来永劫 コオだけです!』 『………ホモだ……』 桃太郎は呟いた 母タカシは桃太郎に 『………!言わないの!』 と怒った 『コオ 遊ぼうよ』 桃太郎はコオを誘った するとコオの前にイオリが陣取り 『僕のコオに近寄らないで下さい』 と警戒した 餌は美味しい いつも行く散歩は楽しい 猫のコタロウも優しい 兄弟犬の桃太郎は危険な奴だけと…… ペットホテルよりは寛げた なによりコオとイオリの母さんがいた だけど……兵藤の家…は… 僕達の家じゃない 飛鳥井に帰りたい 此処は………此処は飛鳥井の家じゃない 飼い主康太がいない…… 飼い主伊織がいない…… イオリは鳴きながらコオの横に丸くなった コオは優しくイオリを舐めた 『コオ……帰りたいね……』 『うん……帰りたいね……』 コオとイオリはキュンキュン鳴いた そんな時、兵藤貴史から電話が掛かってくる 『美緒、2匹の様子は?』 「………あれはホームシックだな……キュンキュン鳴いておる」 『ペットホテルから出してくれたんだよな?』 「我が家におる」 『ならハンズフリーにしてくれよ!』 「注文が多くないか?」 美緒はハンズフリーにした 「よいぞ!ハンズフリーにした」 『コオ!イオリ!あと少し待ってろよ!』 その声は…… 飼い主康太の声だった コオとイオリは電話めがけてワーワー鳴いた 美緒はコオとイオリに聞こえる様に受話器を持っていた 『コオ イオリ 待たせてしまいましたね』 飼い主伊織の声もした 『帰りたいよぉ』 コオは号泣だった イオリも我慢してたけど……号泣した 『帰りたいよぉ……』 イオリも鳴いた 兄 桃太郎はイオリを慰めようと舐めた 『コオ イオリ あと少しで迎えに行くかんな! 待てるな?』 飼い主康太の嬉しい声がする 『『待てるよ!待つよ!絶対に待ってる!!』』 コオとイオリは飼い主に聞こえる様に鳴いた 美緒は「康太、早く帰ってやってくれ……でなければ病気になってしまう…… ペットホテルの従業員が心配する程に衰弱しておるのだ だから……うちで引き取ったが……飼い主でなくばダメな様だ……」 『美緒、世話掛けるな あと少し……そしたら貴史と共に帰るかんな!』 「待っておる」 美緒はそう言い電話を切った 美緒は、コオとイオリをずっと黙って撫でていた 息子の不在に美緒も哀しいのが解る…… コオとイオリは美緒をペロペロ舐めた あと少し…… 待ってるからね! コオとイオリは久しぶりの声に…… 眠りに落ちた

ともだちにシェアしよう!