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第70話 コスプレ

飛鳥井康太はクローゼットの中にある桜林学園 高等部の制服を見ていた 紺のブレザーをストイックに着ていた榊原伊織を見つめていた 片思いだった 何時も…… 何時も…… 康太は桜林の制服をストイックに着ている榊原を見ていた 「………見たいなぁ……」 あの頃の榊原を見たい 恋人にるまで長い月日を片思いしていた 遠くから見つめる榊原は…… 役務服に身を包む青龍の様に…… 格好良かった 「………康太……それ、桜林の制服ですよ?」 榊原は背後から康太を抱き締めて、問い掛けた 「ん……この制服を着てた伊織は誰よりもストイックで格好良かった」 「………見たいですか?」 あの頃の自分でも康太を占領するのは許せなかった 「ん。見たい」 「なら君も着なさい」 「え!……オレも?」 「あの頃の君は可愛くて食べてしまいたかったです」 そう言われると……妬けるのは何故? あの頃の自分に妬ける だからか…… 康太はやっと理解した 2人して桜林学園 高等部の制服を着た 何だか照れる 目の前には…… 桜林学園 高等部 生徒会 執行部 部長の榊原伊織がいた 「………伊織……」 「何ですか?」 「………オレ……気絶しそう…」 「………そう言われると……複雑です……」 「伊織……ギュッと抱き着いて良い?」 「良いですよ」 康太は榊原の胸に飛び込んだ 「伊織だ……ずっと傍に行きたかった……伊織だ……」 榊原は強く康太を抱き締めた 見上げる康太に口吻た 「伊織……」 「愛してます奥さん」 「オレも愛してるかんな」 康太は左手を掴むと……掌に口吻た 榊原の左手首には伴侶の時計はなかった 「時計、メンテナンスだっけ?」 「そうです 明日取りに行きます」 「伊織の腕にないと変な感じだな」 「ええ。僕も変な感じです」 「時計を贈ってから3年か…」 「ええ。この制服を着てる時に貰いましたからね」 「何かドキドキする」 「僕も……この制服を着てる君を抱きたくて……焦がれてました……」 「伊織…」 「康太…」 抱き合ってるとドアがノックされた 榊原は「開いてます」と言うとドアが開けられた 開口一番……「何やってるの?」と言う声が降ってきた ドアの向こうには緑川一生と慎一兄弟が立っていた ドアを開けたら…… 高校時代の榊原伊織と飛鳥井康太がいた…… コスプレ? 何故? 一生は固まった 「康太がクローゼットを開けて制服を触ってたので着てみました」 榊原はニコッと笑って康太にキスを落とした 「伊織……格好良すぎて……近寄りがたい…」 康太はうっとりと……そう言った 「………で、制服着てる訳か…」 一生はやっと納得した 「伊織…愛してる」 「僕も愛してます康太」 目の前でイチャイチャと繰り広げられる 「……旦那……」 「何ですか?一生」 「………大学行く前に……高校に行く気か?」 大学の準備をしに部屋に行ったのが… 何をどうしたら……桜林の制服に辿り着くのか…… 「そうでした 着替えて下りて行きます」 「………嫌……今すぐ着替えろ! でねぇと、おめぇらは始めるじゃねぇか!」 一生はご立腹だった 康太は「一生」と名前を呼んだ 「あんだよ?」 康太は携帯を一生に渡した 「撮ってくれ」 その台詞に慎一と榊原は爆笑した やはり残しておくのか…… 一生は携帯を受け取ると康太と榊原のツーショットを撮った 「……やっぱし残しとくのか…」 「あたりめぇやんか 伊織の制服姿だせ? オレの伊織が一番格好良い!」 「………早く着替えろ! また留年する気かよ?」 康太は桜林の制服を脱いだ 榊原は笑って服を着せた そして自分も着替えると、康太を抱き締めた 「また見たいなら着てあげます」 「伊織…」 康太は榊原に抱き着いた 甘い……二人は幾年月経とうとも甘かった それじゃないと困る 一生はそう思っていた 二人が離れるのは恐怖だから…… 着替えて部屋を出た 康太は榊原を見上げた 榊原は康太を抱き締めた こんな日も良いかも 康太は幸せな気分で榊原の手を握り返した

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