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第79話 風邪
「………おとたん……ちょーれんき!」
熱のせいかほっぺを真っ赤にした音弥が必死に元気だと言った
「熱あんだろうが!」
かぁちゃは怒鳴った
「おとたん らいじょうび」
「………このクソ……」
かぁちゃは音弥を無理無理抱き上げた
「……らめ!らめ!……」ゲホゲホ……
音弥は抵抗してゲホゲホむせた
「伊織、病院に連れてく」
「それが一番ですね」
榊原は車を玄関に着けると言って部屋を出て行った
「………かぁちゃ……きょわい……」
「ん?かぁちゃが怖いのかよ?」
「ちらう!うちゅー! ちゃちゅの!」
音弥は腕にブツッと刺す真似をした
「………注射はしねぇよ!」
「……うちょ!」
音弥は殴り倒したい程に頑固だった
流生が康太の足に飛び付いた
「………かぁちゃ……」
泣きながら……流生は母を見た
「あんだよ?流生」
「………おとたん……きゃわいちょう……」
「でもな、熱が高いと死んじまうんだ……
早く手当てしねぇと音弥が辛いんだぞ?」
「………おとたん……ぎゃんばれ!」
流生は死ぬと聞いて……泣きながら音弥を励ました
病院に行くと久遠が自ら診察してくれた
久遠は小児科の資格も持っていて、ご近所の奥様方の信頼を欲しいままに手にしていた
「……おい……何時から熱出した?」
「……昨日の夜に段々熱が高くなって来た」
「そう言う時は夜中でも連れて来いよ!
高熱は子供にとってどんな後遺症が出るか解らねぇからな!怖いんだぞ!」
「………音弥は……大丈夫なのか?」
康太は泣きそうな顔をして久遠に問い掛けた
「注射を打ってから点滴をする」
「……やっはし注射は避けられねぇか……」
「高熱だと感染症が怖いからな点滴する!」
「………しかも点滴まで……」
康太は榊原を見た
榊原は困った顔をした
榊原と康太は何度も音弥に謝った
音弥は少しだけ……
とうちゃとかぁちゃを恨んだ
でも泣きそうな顔のとうちゃとかぁちゃを見れば……
音弥は笑顔を作るのだった
「らいじょうび!おとたん…ちゅよい!」
康太と榊原をは音弥を強く抱きしめた
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