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第84話 太陽 音弥 流生 大空

飛鳥井 太陽 3歳5カ月 太陽は可愛い 女の子と間違われる様に可愛い 太陽は自分の容姿のもたらす効果を3歳5ヶ月の癖して熟知していた ニコッと笑えば大概はまかり通る 要領の良さは榊原 笙 に似ていた 状況判断 空気を読む頭の回転 寡黙な大空や兄弟をフォローする為だけに発動されていた 太陽は兄弟が大好きだった 翔はお兄さんみたいに頼りになる 流生はムードメーカーで皆の中心にいる 音弥はいざとなったら頼りになるが、普段はお歌を歌ってくれ傍にいてくれる 大空は寡黙で何時もつまらなさそう でも兄弟の為に闘ってくれる強い半身 5人は何時も一緒だった それが当たり前だと想っていた 託児所にいる子のお兄さんがお迎えに来た時に流生達を見て 「顔が全然誓うのに5人兄弟って……変だね」 とか言った 何が変なのか……知りたくなかった 薄々は兄弟は気付いていた 顔が全然違うから…… でも……僕達は兄弟だ 誰が何を言おうと…… それは譲らない そんな時太陽は、馬鹿にした様に嗤って 「きゃんけいにゃい!」 と言い捨てる 兄弟を護る為に太陽は牙を研ぐ 『ゆるちゃにゃい!』 こんな時太陽の感情の起伏を見られる 人当たりの良いだけじゃないと伺える 翔が太陽の傍に行きギュッと抱き締めると、太陽は攻撃的な態度を改めた 「………かけゆ……」 「ちな……らいじょうび!」 翔が言うと大丈夫だと想える 流生も出て来て 「ちな!らめ!」と取り成した 「………りゅーちゃ……」 「みんないりゅ」 太陽は頷いた 音弥が太陽の頭を撫でた 大空が太陽の手を握った 何も言わなくても…… 大空の気持ちが伝わってくる 太陽は兄弟に守られて…… 兄弟の絆を身を持って体感していく 「ちなには みんにゃいりゅ」 そう言い太陽は笑った 皆がいれば大丈夫 乗り越えて行けない事はない このぬくもりがあれば…… 5人の兄弟の中の太陽だった 飛鳥井音弥 3歳6ヶ月 音弥は結構天然な子供だった 自分の興味があるのには率先して何かを始めるが、興味がないモノには動こうともしなかった 容姿は一条隼斗をギューッと濃縮して小さくした様な容姿をしていた 瞳がソックリだった 音弥はのんびりマイペース 兄弟はそんな音弥が大好きで、フォローしていた 保母さんに「音弥君 おはよう」 と声をかけられても好きな保母さんじゃなきゃ返事もしなかった 音弥が興味なさげに無視すると、流生と太陽が保母にサービスする 流生は「ちなえちぇんちぇい うちゅくちい!」とフォローを入れ 太陽が「ちぇんちぇい!おはちょう!」とペコッとお辞儀した 先生はすっかり流生と太陽の方を向いた 流生と太陽は「「ふぅー」」と息を吐き出した 流生はそんな音弥が好きだし 翔もマイペースで良いと想っていた 太陽は自分がフォローすれば良い……と思って 大空は怒られるなら一緒に怒られる!と決めていた お仕着せがましい先生が音弥は嫌いだった その先生に何を言われても音弥は無視した 「音弥君聞いてるの!」 感情的になるから余計嫌いだった ギャーギャー言う先生から翔は音弥を守った 太陽は「うるちゃい!」と怒り 流生は「だみゃれ!」と怒鳴った 大空は音弥を抱き締めた 5人兄弟は最強…… 先生はため息をついて……5人から離れた 音弥は兄弟に謝った 「………ぎょめん……」 翔は「きにちゅんな!」と言ってくれ 流生は「おとたん らいじょうび!」と励ましてくれる 太陽は「おとたん まもっちぇあげゆ」と笑ってくれた 大空は「おとたん わりゅくにゃい」とかばってくれる こんな兄弟が大好きだった iPodで今日も歌を聴き 歌う また ひゃやとに入れてもらおうと想っていた 飛鳥井流生 3歳6カ月 流生はムードメーカーで常に皆の中心にいる 数ヵ月違いの兄弟にとって頼もしい存在だった 流生は結構誰からも愛される だが好き嫌いがハッキリと出る それをお人好しの性格でカバーしている 兄弟の為なら形振り構わず…… と言う所は見られるが、それさえも愛嬌で乗り越えていた 「かじゅ…」 流生は一生の背中によじ登った 「あんだよ?流生」 一生は何時も優しく接してくれる …………でも、それは……かぁちゃがいれば…… だった 一生は……かぁちゃがいないと……何も手に着かないし、ボーッとしている 他の事はどうでも良い…… とばかりに投げやりになる 「………かじゅ……ギュ……ちて」 一生は背中の流生を掴むと胸に抱いた リクエスト通り、ギュッと抱き締めた 「どうしたんだよ?落ち込んでるのか?」 「りゅーちゃ……」 「ん」 「やちゃちさ……たらにゃい……」 「………え?おめぇの何処が優しさが足らねぇんだよ?」 「………りゅーちゃ……ちゅき ちらい はげちゅい……」 「誰かに言われたのかよ?」 流生は頷いた 「ほちくえん……」 「流生は良い子だ! 好き嫌いあるのは仕方がねぇよ それは誰にでもあるんだからよぉ!」 「かじゅは……」 「ん?あんだよ?」 「かぁちゃ ちか……ちゅきらにゃい」 ズバリ……図星を刺す…… 子供って案外見てて怖い時がある…… 「だな、俺は康太以外……どうでも良いんだよ! 好きな奴だけ守れれば……俺はそれで良い」 「………りゅーちゃも……ちょれでいい?」 「おめぇは兄弟を守りてぇんだろ? それで良いさ! おめぇが好きなモノだけ守っていれば良い」 「………りゅーちゃ……ちゅめたく……にゃい?」 「………誰が言ったんだよ?それ?」 「ほちくえんの……ひめたん……」 「冷てぇって言われたのかよ?」 「ちゅき……いったにょ…… りゅーちゃ……ちらい……いったにょ…」 「好きじゃねぇ奴に媚びうる必要なんてねぇよ! 流生はそのままで良い…… しかし……その年でおめぇはモテるな」 「………かじゅは?もてちゃの?」 一生は幼稚舎時代を思い浮かべた あすかいこうた君のせいで散々な幼稚舎時代でモテたりしなかった…… 「………俺は……モテなかったな……」 一生は哀しそうに呟いた 人の顔見れば『みどりちぇんちぇにょ、ちゅかーと みゃくってこいよ!』と…… 言う悪ガキがいた 嫌がるとスカートを捲って来て、一生の後ろに隠れるから…… 先生に一緒に怒られた…… 散々な幼稚舎時代だったのを思い浮かべて、一生は笑った 兵藤と聡一郎と……あれは慎一が同じ幼稚舎にいた 馬鹿騒ぎして……はた迷惑な日々だったが…… それさえも愛しき日々だった あの時代……共にいた…… 一生は流生の頭を撫でた 流生も同じ時代に時を共にする兄弟がいる 羨ましい程の絆で結ばれた兄弟がいる 「大切な奴の為に生きられるって事は…… 中々出来ねぇ事だかんな……大切にしろ 自分を信じて……守り通せ!」 「……かじゅ……」 一生は流生の頭を撫でて笑った 「かじゅ……にゃかまいるね みゃもりちゃいやちゅ……いりゅね!」 「おう!俺の命よりも大切な奴の為に生きてんだからよぉ!」 「ちょれ、ちゃいこう!」 「おぉ!難しい言葉知ってるじゃねぇかよ!」 「りゅーちゃ てんちゃい!」 「自分で言うなよ! それは自分で言っちゃダメなんだぜ」 「にゃら、いわにゃい」 「うし!それでこそ男だ!」 一生は流生から離れて、他の兄弟の側に行った 「音弥、あに聞いてるんだよ?」 「あれきちゃんどろちゅ」 「…………」 それってAlexandrosの事か? 「ひゃやと…いれちぇくれた」 隼人……お前……子供に何聞かせてるんだよ お子様にはお子様用の歌ってのがあるだろ? iPodにAlexandrosかぁ…… 隼人……お前……子供心……解らねぇだろ? 一生はソファーに倒れ込んだ 流生が一生の頭を撫で撫でした 「おとたん うたちゅき」 だから文句を言うな…と暗に流生は言っていた 「でもな……子供が聞く音楽じゃねぇわな」 「おんぎゃくに とちも ちぇいべちゅも こくちぇきも きゃんけいにゃい!」 一生はノックアウトされた 「………それ、誰に教わったの?」 「とぅちゃ!」 一生は榊原を見た 榊原は静かに笑っていた 「………俺……流生に負けてるわ……」 「りゅーちゃ れきにゃい ちゃいこうにょ あきゃいのになりゅの!」 ギクッとして一生は流生を見た 「………それ……誰に教わった?」 「きゅろいの!」 「…………俺……お前怖いわ……」 一生の呟きに流生は笑って一生を撫でた 康太と榊原は黙って二人を見ていた 「かじゅ」 「あんだよ?」 「おれにほれりゅにゃよ!」 ニカッと笑って親指を立てた 一生は「………惚れてまうやろ……」と呟いた 流生は笑っていた 飛鳥井大空 3歳5ヶ月 寡黙で不器用な男だった 翔との違いは、その場に合わせて笑顔が作れる所と、物腰柔らかな所だった 体格の良い翔よりは華奢で細身の大空の顔は小さい癖にかなり良い 榊原伊織を彷彿させる容姿をしていた だから榊原は大空が考えそうな事が良く解った ニコニコしてるけど、実は瞳が笑ってないのも…… 優しそうにみせかけて面倒くさいと思ってるのも…… 自分を見てる様に解った 「………君……瞳が笑ってませんよ……」 榊原が苦言を呈すると 「………ちょれ……とぅちゃも、いっちょ!」 と返された 榊原は想わず額を押さえた 康太は爆笑していた 一生は榊原の肩に手を置いた 「………旦那……」 「………僕……瞳……笑ってませんか?」 「…………流生に『かじゅ かぁちゃらけたいちぇちゅ…』と言われた時のショックに似てるな……」 「………誤魔化されてくれる人の方が多いのに……」 「………旦那……」 大空は慰めあう榊原と一生を見て…… 「あちゅくるちぃ」 と一蹴した 榊原は康太に抱き着き……肩に顔を埋めた 「………康太……僕は暑苦しいですか?」 ショックを受けてる榊原の背中を撫でると康太は 「大空、とぅちゃイジメるんじゃねぇ!」 と怒った 「らぶゅらぶゅ……らもんね…」 「………それ……誰に教わった……」 「ちょお おちえてくりぇた」 「………兄さん……」 榊原は呟いた 一生は「………子供って怖ぇよな……」と呟いた 榊原は「………本当に…」一生に同調した 慎一が部屋に入って来ると、子供達は良い子に座っていた 「皆、良い子ですね ババロア作ったので持って来ますね」 慎一はおやつをくれる人 それはそれは良い子にしてみせなきゃ! と言う態度が見え見えだった 「ちんいち!びゃびゃろあ……」 流生がよどをたらんばかりに喜んだ 「おとたん……びゃびゃろあ……ちゅき」 「ちなも!びゃびゃろあ!ちゅき」 「かけゆも!らいちゅき」 「きゃにゃも!らいちゅき!」 こんな所は子供ぽっかった 大空はババロアを貰って、一口食べた後に 榊原の所に来た 「とぅちゃ あーん」 榊原はあ~んと口を開けた 「ぎょめん……とぅちゃ らいちゅき!」 大空はそう言い榊原にチューした ババロアの香りがするお口だった 榊原はお顔は少しババロアで汚れたけど…… 嬉しそうに笑っていた 軽口も悪口も……悪態も…… 少しずつ覚えて生意気になっていく それが成長の証だった 嬉しいような…… 悲しいような…… 腹も立つけど…… 子供の成長だった

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