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第85話 来客

飛鳥井の家に珍しい来客があった 慎一は康太の所へ行き耳打ちした 「………どうしますか?」 「通してくれ!俺の客だ」 「解りました」 慎一はそう言い玄関に向かった 一生はキッチンに向かいお茶の用意に向かった 応接間に入っていく人数を確かめてお茶の準備をする 客を通すと慎一もキッチンにやって来た 一生は「………誰よ?」と慎一に問い掛けた 「………龍ヶ崎斎王……知ってますか?」 「俺は逢った事はねぇわ 龍ヶ崎の家には康太は伊織しか連れて行かねぇからな」 「………そうですか……」 慎一はお茶とお茶菓子の用意をして一生と共に応接間へ向かった ドアをノックして応接間に入ると…… 飛鳥井清隆位の年のダンディーな男がソファーに座っていた 「斎王、すみれの件で来たのか?」 「それもありますが、中々君に逢えないので押し掛けて来ました 兵藤貴史に逢わせてやると言って、中々逢わせて貰えなかったのもあります」 「……一生、裏に行って貴史を呼んで来てくれ! その時に斎王が来てるのは言うな!解ったな」 「了解!貴史を連れて来れば良い訳だな」 一生は応接間を出て行った 「康太、伊織、鎌倉に美味しいお店を見つけました 今度誘っても構いませんか?」 「おう!誘ってくれ それより今日はすみれは?」 「………経済指標…の論文を書いてアメリカで賞を取ったらしく、行ってくるわ……と半年帰って来ません……」 「すみれらしいな…… すみれの描く経済指標は的確だからな 各国の公的機関等が発表する、経済状況を構成する要因(物価、金利、景気、貿易など)を数値化し、経済の現状や過去からの変化は、どの機関より正確に把握できるかんな」 「………海外を飛び回り……政府機関に利用される位なら……嫁に行って欲しいと願うのは親なれば…… 当たり前だと想います……」 斎王は本音を吐露した 幾ら才媛のだ、天才だと謂われても…… 女の幸せを掴んで欲しい…… 一生が兵藤を連れて応接間に帰って来た 兵藤は応接間に入って……… 直立不動で立っていた 康太は兵藤に問い掛けた 「貴史、この男……誰か解るか?」 兵藤はじっと斎王を見て、口にした 「龍ヶ崎斎王…」 「ビンゴだ!あんで解った?」 「瞳……だ! すみれと同じ色を放っていた」 「………流石ですね」 斎王は立ち上がると兵藤に手を差し出した 「龍ヶ崎斎王です 君がすみれの許嫁の兵藤貴史ですか?」 兵藤は斎王の手を取った 「そうです! 時が来れば正式に真贋を通して話を進めます 今暫くお待ちください!」 「………君は……すみれと結婚する気はあるのか?」 「飛鳥井康太が決めたのなら、俺の妻はすみれ以外は有り得ない!」 「………飛鳥井康太が決めなかったから?」 「俺は結婚することはない! 俺の果てを決めるは飛鳥井康太! 俺は飛鳥井康太が示す果てを逝く者! 果てに関わりなき者には目もくれる気はない!」 「………すみれが君に惚れるのも解ります… 貴史、すみれを日本に呼び寄せて下さい 出来ますか?」 兵藤はズボンのポケットから携帯を取り出すと、電話を掛けた 「時差は気にするな!俺だ!」 『……気にするわ!何時だと想ってる!』 「すみれ」 『何だ?』 「今すぐ日本に帰れ! でなかったら結婚しねぇぞ!」 『………えええ!帰る!今すぐ日本に帰る! だから結婚して貴史!』 「帰らなかったら……覚えとけよ!」 兵藤はそう言い携帯を斎王に渡した 『貴史!帰るから結婚して…… 我程に貴史を愛してるモノなどおらぬ! 康太ちゃんの次で良いと我慢出来るのは我だけだ!』 すみれは必死に捲し立てていた 斎王はクスッと笑った 「すみれ……」 声を掛けると、すみれは驚いた 父親の声だったから… 『……父者……』 「日本に帰って来るか?」 『貴史に結婚して貰えなくなる! 我はこれより支度をする! 父者……我は貴史の妻になりたいのだ…』 「……世界がお前を欲していてもか?』 「世界など勝手にやれば良い 我は貴史の妻になるのじゃ! 世界よりも我は貴史が大切なのじゃ 大変だ……父者……貴史に頼んでたもれ! 我はすぐに帰るが…遅れたら…… 嫁にして貰えなくなる… 遅れても嫁にしてくれる様に頼んでたもれ!』 すみれは泣きながら斎王に頼んだ 「………すみれ……お前……本気で兵藤貴史に惚れてるのか?」 『我の夫は兵藤貴史以外は有り得ない 貴史が嫁にはしないと言うなら…… 我は康太ちゃんを愛してこの先一人で生きてゆく……』 「………龍ヶ崎のじゃじゃ馬姫も……やっと嫁に行くのか…… 兵藤貴史は我の目にも合格と映った 流石、飛鳥井の真贋の選びし夫! 龍ヶ崎斎王の娘を娶るのですから、盛大に挙式を挙げましょう!」 『父者……それよりも我が日本に一分でも早く帰れる様にしてたもれ!』 すみれは叫んだ 「………では、水仙に伝えておきます 専用機を飛ばしてくれるでしょう それで帰っておいで…」 娘の本気を知り斎王はご機嫌だった 龍ヶ崎四姉妹 水仙 菜花 藤 すみれ すみれは龍ヶ崎四姉妹の中でも偏屈で秀才だった 全員が斎王の妻のつくしに似て美人なのだ ミスユニバースをぶっちぎりで獲得した美人だった 斎王に望まれて17で龍ヶ崎の家に嫁いだ その母にすみれは一番酷似していた ………いや……その母より上を行くか…… 斎王が真面目に… この子は……嫁げないかも…… と心配する程に…… 男に対して辛辣で容赦がない 大抵の男なら自信喪失するだろう…… その娘が目の色変えて…… 未来の夫に結婚して貰えなくなったら困る……と血相を変えて帰国するというのだ 信じられなかったが…… 信じるを得ない 目の前の男 兵藤貴史は兵藤丈一郎に酷似している容姿に……瞳の輝きを持っていた 日本を変えた男の瞳をしていた 「斎王、この男は未来の日本を変える礎になる 三木繁雄、堂嶋正義、そして兵藤貴史が日本を変える」 「………この男を目にすれば…… 君の謂う男の可能性が解る……」 「賽は投げられた 後は歯車になって進むしかねぇ! もう変わりはいねぇ駒に収まった」 「………でしょうね!」 「オレは……貴史を入れて闘い続ける政局を見続けてぇと想う……無理だけどな……」 「康太……それは謂わないで下さい……」 「龍ヶ崎斎王、兵藤貴史が政局に来る時 後ろ盾になりましょう! 我が娘の婿なれば……火の粉は決して降りかからせはしない!」 「おめぇは日本の頂点に立て……」 「………勝也が疲れたら変わりましょう!」 「お前は山になれ 決して動かぬ山になれ!」 「君と約束しましょう! 我は決して動かぬ山になる事を!」 どんな嵐が来たって 大雨が降り続こうとも 雷が鳴り響こうとも 決して動かぬ山になる 山が動く時… 日本は変わる その時までは死守しろと謂われるのか…… 「兵藤貴史、我はお主の後ろ盾になる そして総てをお主に託そうぞ!」 斎王は兵藤の手を強く握った 斎王はまさか……兵藤の鶴の一声ですみれが日本に帰ると言うとは想ってもいなかった 本気で夫を娶ろうと想っているか…… 真意を探るために飛鳥井に来た 斎王はにこやかに笑った すみれの夫が日本を変える布石になるとは…… どの娘も……優秀で美人だが…… 婿になる男は……平凡で凡才だ…… それだけが口惜しかった どの子か1人でも…… 日本を変える男と結婚してくれたら…… そう思っていた まさか……一番天才でじゃじゃ馬のすみれが…… 兵藤貴史の様な男を手にするとは…… 諦めなくても良いと言うのか…… 斎王は嗤った 金持ちだの社長だの…… そんな男じゃなく稀代の政治家と謂われる兵藤丈一郎の孫であり、兵藤丈一郎に近い政治家 彼の行く末が楽しみである 「康太、我はまだ世の中に退屈する年ではなかった!」 「だろ?だから言ったじゃねぇか! 血が騒ぐ男がいるって! 貴史は既に正義の元で政治哲学は叩き込まれてる 繁雄にはどぶ板選挙のやり方を叩き込まれてる 何事にも屈指ねぇ強靱な政治家になる!」 「………欲しい……」 その力も未来も……斎王は欲しいと申し出た 「すみれと結婚すれば、おめぇの婿になる すみれは近いうちに美緒の傍で政治家の妻のノウハウを叩き込んで貰うつもりだ」 「……兵藤美緒 三木敦夫の秘書として、三木敦夫を支えた影のフィクサー」 「すみれは化けるぜ!」 「それは楽しみだ」 斎王は兵藤を抱き締めた 「我が婿殿! 我は君を誰よりも大切にする」 「時が来たら……宜しくお願いします」 兵藤は立ち上がり深々と頭を下げた 「斎王、いい男だろ?」 「ええ。この上ない幸せに御座います」 「総ては……決められし理なり!」 斎王は康太に深々と頭を下げた 「康太、伴侶殿、鎌倉に美味しいお店を見つけました 近いうちに是非ご一緒させて下さい」 「おう!誘ってくれ!」 「その時、貴史君と美緒さんも是非ご一緒にどうですか?」 「………光栄です!是非ご一緒させて下さい」 斎王はご機嫌で飛鳥井の家を還って行った 取り残された兵藤は深々と息を吐き出した 「………龍ヶ崎斎王がいるなんて聞いてねぇぜ?」 「細かい事だ気にするな」 「気にするわ!」 兵藤は噛み付いた 「行く行くは身内になるんだろ?」 「………どうだが? 蓋は開けねぇと中身なんて解らねぇよ!」 「蓋ならもう開いた…後は中身を詰めるだけだ……」 「………その時が来たらな……」 「あぁ……まだ……その時じゃねぇかんな…」 「それよりもおめぇの前にあるケーキ、俺にも食わせろよ!」 「………お前……何処から来たんだ?」 「俺は今桜林にいんだよ! OB会の名簿作ったり、てぇへんなんだよ!」 「………?あんでOB会?」 「おめぇに逢いたい奴等が逢わせろとうるせぇんだよ」 「………オレ、OB会は出ねぇぜ?」 「………それは無理だ……藤森と清家も委員会やってるんだよ」 「………藤森と同級生にはなりたくなかったな…」 「………それを言うのは……俺の方だわ!」 兵藤は怒って拗ねた 「……仕方ねぇな……出てやっても良いが人選は四季に確認させてくれ!」 「おめぇをコレクションにしたい輩がいるんだったか‥‥」 「それだけじゃねぇ、オレは神龍の玉みてぇに願いが叶うと想ってる奴多いからな 神龍なら青龍に頼めば良いのによぉ!」 康太は笑った 「何気に惚気てねぇか?」 「気にするな貴史」 「康太、四季に聞けばヤバい輩は排除は可能か?」 「どうだろうな? スーツケースに入れて還ろうとする輩は‥‥多いと想うぞ?」 だからOB会には関わらないのだと謂われたも同然の言葉だった 「んな顔をするな、それより飲むか?貴史?」 「良いな!飲もうぜ康太」 慎一が酒の準備をした するとお酒に釣られて飛鳥井の家族が現れた 何故か……美緒も楽しそうに飲んでいた 朝まで飲み明かして……雑魚寝する それさえも楽しき日々だった

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