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第90話 桃太郎 恋をする

ズキューン! 僕のハートを射抜いたのは…… 栗毛のあの子だった ちまちまと可愛いトイプードルのリンちゃん 何時も散歩で見掛けるあの子は…… 小さくて 目がクリクリで 体躯から良い臭いがした 僕の兄弟犬は…… はっきし言って…… 趣味が悪い 年上で、足が短くて、体躯から良い臭いがするコーギーのコオ そりゃぁ、可愛いけど、リンちゃんには負ける しかもコオは♂ イオリも♂ ♂同士は赤ちゃんが産まれないじゃないか! 僕はリンちゃんと沢山赤ちゃん作るんだ るんるん 朝の散歩がめちゃくちゃ楽しい リンちゃん あぁ……リンちゃん…… 朝、散歩に行くとコオとイオリが仲良く走っていた 飼い主も仲良く手を繋いでいた 二人の飼い主もラブラブだ 『コオ イオリ おはよう』 コオは桃太郎に近寄った 『桃ちゃん おはよう』 フレンドリーなコオに比べてイオリは邪魔するな!オーラ半端ない 『桃太郎、愛しのリンちゃん……来ましたよ』 『イオリ……愛しのリンちゃん……だなんて…』 桃太郎は恥ずかしがった 桃太郎 純情な青春真っ只中を生きていた 『何で知ってるの?』 桃太郎は慌てた 『桃太郎はリンちゃんの前だと俄然張り切りますからね……みえみえです』 ガーン……そんなに解りやすかった??? 桃太郎はリンちゃんの傍に駆け寄った リンちゃんは…… 事もあろうか…… 桃太郎の前で片足を上げてショーっとしていた え? …………え? ………………………えええ!!! リンちゃん…… 今……片足………上げてなかった???? 『………まさか……リンちゃん♂?』 桃太郎が呟くとイオリが 『林太郎がフルネームだもん♂でしょ?』 …………え? リンちゃん……フルネーム林太郎なの?? 『………知らなかった……』 『リンちゃん、フルネームで呼ばれるの嫌いますからね……』 イオリはやけに冷静だった 桃太郎は……心神喪失の状態だった 『………僕の初恋が……』 リンちゃんと結婚して沢山の赤ちゃん作るんだ…… 『………僕の夢が……』 リンちゃんは桃太郎の傍に寄ってきてキューンと鳴いた 『桃ちゃん……どうしたの?』 悲しそうに聞かれて桃太郎は…… 性別なんてどうでも良い!と想った イオリだって性別を超えたんだ 僕だって性別を超えても良いよね! 『桃ちゃん結婚して!』 『………ごめん……桃ちゃん……好みじゃないわ』 ガーン…… 好みじゃないわ…… なにそれ! 『私、グレードデンのタマちゃんみたいな凛々しい犬が好きなの』 グレードデン……逆立ちしても勝てないよ…… シュナウザーの僕じゃ…… 駄目なんだ…… 桃太郎は鳴きながら……走った リードを持ってる兵藤が辟易する程に走った 走って…… 走って…… 兵藤はリードを離した 「勝手に走ってろ!馬鹿野郎!」 はぁはぁ……息を乱して兵藤は叫んだ 康太は桃太郎のリードを掴むと 「桃太郎!」と名を呼んだ 「そのうちリンよりキュートな子を嫁に貰ってやるから……泣くな……」 康太の声は優しかった 桃太郎は鼻水を垂らしながら…… キューンキューン鳴いた 桃太郎の恋が散った日…… オスにときめいた自分が怖くなった 僕は………沢山赤ちゃん作るんだぁぁぁぁ!

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