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第92話 招待状
Xmasも迫った頃
兵藤貴史の所へ招待状が5通届いた
差出人は物凄い字で『りゅー』『ちな』『きゃにゃ』『かけゆ』『おとたん』と書いてあった
兵藤はそれを見て笑った
「アイツ等、字が書ける様になったのかよ?」
兵藤は嬉しそうに文字をなぞった
殴り書きしたのから、ちまっと書いたのから……様々に性格が出ていた
封を破くと
『ひょーろーきゅんへ』と書かれていた
「お!いっちょ前に!」
『クリマスちてね!』と流生は書いていた
他の封筒も破いて取り出した
『ひょーろーきゅんへ』は5人全員書いていた
『ちてね!』と太陽
『まっちてる!』と翔
「まっちてる……って何だよ?」
兵藤は笑った
『ちて ほちー』と大空
しかも、ちまっとした字で書いてあった
「性格出てるな」
兵藤は感心した
『きゅるんら!』音弥の文字を見て兵藤は笑った
流石役者の息子
七色の文字で書いてあった
「派手だな音弥!」
兵藤は招待状を封筒の中にしまうと、大切に引き出しの中にしまった
兵藤の宝物だった
飛鳥井の5人の子供を、ずっと見てきた
成長する子供は可愛かった
情が移ると尚更愛情がわいてきた
5人の子供はそれぞれに親が違う
だけど兄弟として育っている
曲がらないで育って欲しい
兵藤はそう願っていた
招待状の中に兵藤の似顔絵が入っていた
兵藤はそれを壁に貼りだした
5人の子供が書いてくれた兵藤だった
「……もっとイケメンに何故書けないかなぁ…」
似顔絵の兵藤はニコッと笑っていた
楽しそうに笑っていた
目が……⌒ ⌒……こんな感じで書かれていた
あの子達の前では、だらしのない顔のひょーろーきゅんで良い
兵藤はそう思った
この先……険しい道が待っている
5人で乗り越えて欲しいと兵藤は想う
あの5人兄弟をずっと見て行こうと兵藤は心に決めていた
Xmas当日
兵藤が飛鳥井の家を尋ねると……
今年も青い鼻のトナカイがピンクの帽子をかぶっていた
「今年はお前がトナカイかよ?」
兵藤は声をかけた
「おー!今年はサンタは一生にした!」
「伊織じゃなく?」
「おー!一生がサンタやりたそうだったかんな!」
康太が笑うと一生は吠えた
「無理矢理着せたんじゃねぇかよ!」
「お前もそろそろサンタの年だろ?」
意味が解らなかった……
サンタに年が関係あるのか?
「チクショウ!」
一生は唸って何も言わなかった
あれで納得したというのか?
兵藤は榊原に「サンタの年ってなによ?」とこそっと問い掛けた
「一生は今までサンタはやりませんでしたからね……
去年やるかと?と聞いたら逃げました
今年は意地でもやらせるしかねぇ!と康太が……サンタをやる年だと言ったんですよ」
なる程!
やっと理解できた
「来年はおめぇがトナカイだぜ!」
康太はそう言った
一生はヤケクソで
「鼻が赤いのならやってやるよ!」と宣言した
慎一は「では赤鼻のトナカイの衣装を用意しておきます」と冷静に述べた
「………おい……慎一……」
一生は慎一を呼んだが、慎一は無視をしていた
「うし!貴史も来たかんな!やるぜ!」
康太が言うと子ども達は兵藤に抱き着いた
「ひょーろーきゅん!」翔が名前を呼んだ
「よくちて きゅれまちた!」流生が深々と頭を下げて
「たのちんでくらちゃい!」と音弥が歓迎した
「ひょーろーきゅん あいがと!」太陽が御礼を述べた
「ひょーろーきゅん らいちゅき れちゅ!」
大空は兵藤に両手を広げた
兵藤は大空を抱き上げると……
大空は兵藤にチュッとした
「オレの子ども達からの想いだ
受け取ってやってくれ!」
康太が言うと子ども達は兵藤に抱き着いた
子ども達は兵藤に一番大きなケーキを差し出した
ケーキが苦手な兵藤は………顔を引きつらせて「ありがとな!」と礼を述べた
「ひょーろーきゅん あげゆ」
入れ替わり立ち替わり、子ども達が兵藤を構った
子ども達は兵藤が大好きだった
流生は兵藤にキーホルダーを差し出した
「きょれ!かぁちゃ おちょろい!」
流生は笑顔でそう言った
流生の手には……安くないキーホルダーが握られていた
天然石か宝石か……
キラキラ光る石が入ったクローバーのキーホルダーだった
「ばぁたん きゃってもらっちゃ!」
流生はニコニコと笑ってキーホルダーを兵藤に渡した
兵藤は榊原を見た
榊原は「貰ってあげて下さい」と言った
「安くねぇだろ?これ……」
「それは義母さんが流生に強請られて買ったんです」
「母さん……ってどっちよ?」
「飛鳥井の母です」
「え?……」兵藤は玲香を見た
玲香はニコニコと笑っていた
「流生がかぁちゃとお揃いであげゆ……って強請るからな……つい……」
つい……買ってしまえる恐ろしさ……
音弥は兵藤に大好きなミュージシャンのサイン入りの新譜を手渡した
「ひょーろーきゅん あげゆ!」
「………音弥……この新譜はまだ売り出してねぇ……だろうが……」
「ひょーろーきゅん ちゅきって…」
聞いたからあげると言うのだ
「………どうして知ってる?」
兵藤が言うと隼人が
「音弥の前で口ずさんだのだ
音弥は絶対音感があるのだ
だからオレ様に訴えてきた
小鳥遊に何の歌か突き止めてくれたのだ!」
と説明した
「………凄すぎない?」
思わず兵藤は呟いた
康太が「お前のXmasプレゼントだからな、子ども達は気合いを入れて用意したんだよ」と教えた
「………サイン入り……良いのかよ?」
「音弥は貴史にあげる為に覚えてオレ様に伝えたのだ
音弥の希望に添えたいと想うのは飛鳥井の家族や榊原の家族は当たり前なのだ」
と告げた
兵藤は音弥に「ありがとう!凄く嬉しい」と伝えた
音弥はニコッと笑って康太に抱き着いた
太陽と大空は二人して兵藤に持ちきれない大きさの紙包みを渡した
「「ひょーろーきゅん あげゆ」」
太陽と大空は声をそろえて言った
大きな包みは2人で持っても大変で、慎一が手伝ってやっていた
それ程に大きな包みだった
半間の窓の片窓位はある包みだった
「これは……あんだよ?」
兵藤が問い開けると太陽と大空は飛び上がって「「かぁちゃ!!」」と答えた
「………康太……?」
恐ろしい気分で聞いた
「ちょう!ひょーろーきゅん ほいちの!」
太陽が興奮して言った
「かぁちゃ らけらもん」
大空も興奮して言った
兵藤は背中に冷たい滴を感じた
これは……何かの罰ゲームなのかよ?
飛鳥井の家族も、榊原の家族も、神野や小鳥遊も笑っていた
「………一生……これは拷問かよ?」
兵藤が呟やくと一生は笑った
「太陽と大空は悩んでたんだ
で、貴史の一番好きなのやろうぜ!と言ったんだ
そしたら太陽と大空は康太を捕まえて来たんだよ……
それはやれねぇから……と説得すると……
「ちゃちん!」と言ったからな……
隼人に手伝って貰って……スタジオを借りて……ちゃんとした写真を撮ったんだよ」
「………ちゃんとした写真?」
「そう!スタイリストを付けてプロのカメラマンが撮ったんだよ」
「………え……それは駄目やろ?」
流石に幾ら掛かった……と恐ろしくなった
小鳥遊が兵藤に
「安心して下さい!
隼人の写真も撮りました
康太が傍にいると色んな顔を魅せてくれるので、カメラマンは大喜びでした
そのついでに康太の写真を撮ったのです
Xmasプレゼントと言うのでサービスで太陽と大空に提供しました!」
と笑顔で説明した
「………ありがとうな……家に帰って見るからな!」
兵藤が言うと太陽は
「ひょーろーきゅん うれちい?」と聞いてきた
兵藤は太陽の頭を撫でて「嬉しいよ!ありがとう」と言った
大空も「ひょーろーきゅん よろきょんだ?」と問い掛けた
「めちゃくそ喜んだ!ありがとうな!」
大空の頭を撫でた
慎一が「帰る時、手伝います!」と兵藤に言った
「………頼むな…」
兵藤は疲れ切っていた
ラストは翔
「ひょーろーきゅん あげゆ」
翔は紙切れを兵藤に手渡した
「これは?」
「ぎょふ!ひょーろーきゅん まもりゅの!」
翔はそう言った
榊原が翔を抱き締めて
「その紙は翔が念を込めて書いた護符です
君が危ない時、その護符が発動されるそうです!
翔はそれを弥勒に手伝って貰って三日三晩寝ずに作り上げたのです」
兵藤はとうとう泣いた……
護符を握り締めて……
「ありがとう……」と泣いた
「翔は君に何かあるのが嫌なんです
ですから護符をXmasプレゼントにしました
それを身に付けておいて下さい
きっと君を助ける日はあると想います」
兵藤は涙で……何も言えなかった
康太は兵藤を抱き締めた
「オレが留守の時、子ども達に逢いに来てくれたんだって?
一緒に寝てくれたんだって?
ありがとうな貴史
子ども達はお前が大好きなんだ
そんなお前に唯一のモノを探したんだよ」
「………俺……」
何も言わなくて良い……と康太は兵藤の背中を撫でた
「今夜は貴史はお泊まりだぞ!
客間でお前達と寝てくれるって言ってるぞ!」
康太が言うと5人の子供は飛び上がった
「やっちゃぁ!」
「貴史、子供と寝てやってくれ!
一生や聡一郎や慎一も寝てくれる」
「お前は?」
「………オレは潰すかんな……一緒には寝ない」
「伊織とイチャイチャしてぇからだろ?」
「それもある!」
康太はそう言い笑った
榊原の家族と飛鳥井の家族は夜更けまで飲んでいた
神野や小鳥遊は瑛太と飲んでいた
兵藤は子ども達と雑魚寝をしに行った
子ども達に包まれて……兵藤は眠りに落ちた
ぬくぬくの子ども達の体温は兵藤を眠りに誘った
Xmasの夜は……こうしてふけて行った
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