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第106話 逢いに逝くよ

一生は高速道路を飛ばしていた 少しでも早く…… 逢いたいから…… 一生はアクセルを踏み込んだ すると後ろから「伊織……オレ事故りたくねぇ」と声が聞こえて来た 「一生、スピード落としなさい 僕の奥さんが怖がってます」 後部座席からキツい眼差しが突き刺さる 「………あのさ……」 「何ですか?」 「………あんでお前らいるんだよ?」 一生はため息交じりに……そう言った 「………伊織……オレ達って…… ひょっとしてお邪魔虫だって一生言われてる?」 「………一生はそんな事言いませんよ! そうですね?一生!」 榊原のキツい眼差しが一層強くなり…… 「………はい……邪魔になんかしてません……」 と言うしかなかった 「なら良かった 慎一が隼人と聡一郎を乗せて後ろを着いて来てるかんな! 安全運転するんだぞ一生!」 「………了解!」 トホホ……な一生は、恋人に逢いに行く為に高速道路を飛ばしていた 一人で行く予定が…… 何故か……お邪魔虫が……ゾロゾロと…… 「伊織 今度は翔達を連れて来ねぇとな」 仲良く手を繋ぎ、うっとりと康太は呟いた 「そうですね 次に来る時は翔達を連れて来ましょう」 「伊織……愛してる」 康太が言うと榊原は繋いだ手を口元に持って来て口吻けた 「僕も未来永劫……君だけ愛してます」 一生は良くも恥ずかしくもなく…… そんな台詞を吐けるわ……と想った 最近は勢いで「力哉 愛してる」と言う様にはしてる だが……見つめ合って……常に言うのは恥ずかしくて……無理だった 青龍って……こんなに恥ずかしい奴だったけ? 秩序と法律と規律の法衣を身に付け 厳格な面持ちで常に冷淡な言葉を吐いてた それが青龍だと想っていた が……こんなに情熱的な奴だったとは……知らなかった 重い空気が…… 今じゃピンクい空気になってるし…… 流石と榊原みたくはなれなかった 愛の言葉を垂れ流し 愛を惜しみもなく与えて 釣った魚に餌も愛も与えすぎてる男……それが榊原伊織だった 康太は榊原の様にならなくて良い……と言う お前の愛し方で愛せば良い そう言ってくれるが…… 力哉は……どうなんだ? 四六時中愛の言葉を垂れ流しにした方が喜ぶのか? 考えてついついアクセルを踏み込む 「伊織、此処で死んだとしても…… オレは悔いがない位愛してるかんな!」 「ええ。僕も此処で死んでも悔いがない程に康太を愛してます」 二人は抱き合い……口吻けた 一生はスピードを落とした 流石と……これは無理だわ力哉…… 「伊織、大浴場を貸し切りにしたら、龍になった青龍の体躯を洗ってやろうか?」 「………人の世ですからね……龍は止めます その代わり君が泡で僕を洗って下さい」 「良いぞ!沢山気持ちよくしてやんよ!」 「康太!」 「伊織!」 二人は抱き合い口吻けた 絶対にわざとだ! 一生は想った 絶対にわざとやってる…… 本当に意地が悪い 康太は笑うと榊原の膝の上にゴロンッとなった 「………痛むのですか?」 「………ん……少し……伊織、おめぇは?」 「……僕も……痛みます……」 「早く治れば良いのに……」 「大丈夫です……良い温泉に浸かって治癒しましょう そしたら……君を思いっきり抱けます」 「………オレも治さねぇと……二人して痛ぇもんな……」 二人の会話を聞いていて一生は大怪我を負ってからエッチしてないんだと…… 初めて気付いた 「………旦那……」 「何ですか?」 「………康太と………その……犯ってねぇのかの?」 「康太も僕も満身創痍ですからね…… いざとなっても痛みの方が勝って……出来ません……」 「………なら……欲求不満なのかよ?」 「………そうですね……最近……挿れてないので……康太のアソコは処女の様に閉じてるでしょうね……」 それ程……… 一生は言葉を失った 「親父殿が……金龍が……湯治に来いと言って来てるので、少しの間行こうと想ってます」 「………また……子ども達と離れるのかよ?」 「いえ……今度は連れて行きます…… 金龍が孫の顔を見せろと五月蠅いので…… 5人連れて逝く予定です」 「………湯治……か? 龍族の秘境に行くのかよ?」 「そうです……そこには流生達は逝けないので……どうしようかと想ってますけどね…」 「慎一も連れて行って面倒見させれば良い 俺も聡一郎も隼人も逝けば手は足りる」 「そうですね……思いっ切り康太を抱きたいです……」 その言葉は淋しそうだった 一緒にいられれば良い…… だけど愛してるから…… やはり体躯を繋げたい 恋人同士なら当然の欲求だった 「予定立てとこうぜ! 俺が黒龍と予定を立てるかんな」 「………そうですね……少しゆっくりしましょうか……」 「だな……身を削り過ぎだ……休まねぇとな」 一生は刹那の恋人に…… 胸が痛んだ それでも康太は……炎帝は逝く その歩みは……止まることなく果てへと続く 血を吐き…… 銃弾に倒れようとも…… その歩みは……怯まず……突き進む どれだけの代償を払い…… 傷付き倒れようとも…… それでも逝く…… そんな奴だから…… 自分達は着いて逝くのだ ズルく逃げ道ばかり用意する奴じゃないから…… 共に逝く…… それしか考えてないのだ…… 力哉……俺達も……愛し合える限り愛し合おうな…… 明日……果てようとも…… 悔いなんか遺さねぇ様に…… 生きて逝こうな…… 一生は心に誓った 力哉……今逢いに行くから…… 逸る想いを押さえて一生は車を走らせた やっと到着すると力哉は駐車場まで夏生と共に迎えに出ていた 一生が車を下りると…… 力哉が駆け出した 一生は力哉が胸に飛び込んで来るのを待った ……………が力哉は康太に飛び付いて泣いていた 「康太……貴方が撃たれた映像を見て…… 僕は……死ぬ事ばかり考えてました…… 康太のいない世界では生きられません……」 康太に抱き着いて力哉は泣いていた 一生は苦笑した まぁ………康太には勝てない 多分……自分も離れてて康太と逢えば…… 力哉ではなく康太に飛び付くだろう…… 「力哉……恋人が迎えに来てるんだぜ」 康太はそう言い力哉を一生の方に…… 押しやった 一生は力哉を抱き締めた 「………炎帝……此方へ……」 夏生は敢えて炎帝と呼び…… 康太と共に……白馬の源右衛門の生家へと向かった 慎一も聡一郎も隼人も車から下りると 「「「一生、そのまま力哉とベッドへ行って良いから!飛鳥井の使う部屋へと逝くと良いよ!」」」 と言われた あれよあれよと言ううちに…… 聡一郎達も源右衛門の生家の方へと向かって行った 一生と力哉は飛鳥井の所有する最上階の部屋へと向かった 力哉と愛し合い満足して源右衛門の生家へと向かうと…… ピキッと空気が凍る雰囲気を醸し出して…… 康太は夏生と話していた 榊原と聡一郎も難しい顔をして……話を聞いていた 時々、PCを駆使して夏生と話していた 力哉と一生は入り込めれず部屋を出た 応接室に行くと隼人が寝ていた 「隼人…」 一生が声をかけると隼人は目を開けた 「一生、ちゃんと愛し合ったのか?」 「あぁ、ちゃんと愛し合ってから来たんだよ! そしたら……あれは……何だ?」 康太達がいる方を指差して一生は言った 「康太は遊びで来てる訳じゃないのだ ましてや一生の邪魔に来た訳でもないのだ 用事と目的があって来てるから忙しいのだ オレ様は空気の良い所で寝たかったから来たのだ ずっと海外ロケで……ガスマスクしてやろうかという空気だったからな……」 成る程……納得がいった 「慎一は?」 「慎一は何時でも何処でもマイペースなのだ 食事の材料を買いに行ってるのだ 一緒に行かないかと言われたが、オレ様はゴロゴロしたかったのだ」 「………なら俺もゴロゴロするか!」 「それが良いのだ 力哉は歩くの辛そうなのだ…… 挟まってる感が抜けないなら歩かせない方が良いのだ……」 隼人の露骨な言い方に力哉は赤面した 「………隼人……お前……露骨すぎ……」 「そうか?最近はこんなんなのだオレ様は」 「………お前……今後も恋人……作らねぇのか?」 「今は……康太に甘えていたし…… オレ様はこの先……誰も要らないのだ……」 「………隼人……」 「それでも……オレ様は結婚すると康太が言うからな…… そんな相手に出逢うまでは無理なく生きていたいのだ……」 一生は隼人を抱き締めた 「………大人になった隼人……」 「康太が育ててるからな」 隼人はそう言い笑った 一生は隼人を抱き締めて……知らないうちに寝てた 力哉はそんな一生を見て笑っていた 康太が応接室に顔を出すと一生は隼人を抱き締めて寝ていた 「……力哉、こいつは満足させてくれたのかよ?」 康太が聞くと力哉は顔を真っ赤にして頷いた 「なら良かった!愛して貰え そして幸せそうに笑ってろ!」 康太はそう言うと力哉を撫でた 榊原は康太を引き寄せると 「少し寝てきます……」と言い応接室を後にした 慎一が帰って来て「康太は?」と聞くと力哉は寝に行ったと告げた 「まだ二人とも無理は出来ないので…… 仕方ありませんね」 「………治ってないの?」 「銃創は治りが遅いのです あの二人は……まだ痛みが酷くて愛し合う事さえままならないと想います」 平気に見えたのに…… そんなに酷いなんて…… 「本当ならまだ入院してないといけないんですが…… 康太は反撃に出るつもりなんでしょうね 倍返し……する算段に余念がない…… 仕方ないてすよね……伊織まで撃たれてるんですから……」 愛する者を傷付けられれば…… 黙ってなどいない…… それが飛鳥井康太なのだから…… 力哉は決意の瞳をして慎一を見た 「僕も動くよ! 僕は飛鳥井康太の秘書なんだからね! 康太の秘書がこんな事でへたばってられないよ!」 そう言い力哉は笑った 慎一はその顔を見て安堵の息を吐き出した 「………元気そうで良かった……」 「慎一……」 「一生は単細胞で康太命だが…… 誰よりも力哉を愛してる……それだけは解ってやってくれ……」 「解ってるよ……慎一」 「その想いさえなくさなきゃ大丈夫だ 生きてるなら……何度でも確かめ合える」 「慎一………」 愛するものを失った者の言葉が胸に突き刺さる 「慎一……君はもう誰も愛さないの?」 「俺は主に仕えるのが忙しい 目を離せば……逝ってしまおうとされるからな……目を離せない…… 愛とか……そんな想いより俺は主に仕える…… その為だけに……今世転生したのだからな……」 重い言葉だった 誰よりも重い言葉を放ち…… 主に仕える揺るぎない思いを知る 「夕飯、皆で食べるんだろ? 手伝うよ!」 「では頼みます」 慎一と力哉は二人してキッチンへと向かった 愛する人が迎えに来てくれた もう……殻の中で泣いてなんかいられない 血反吐を吐いても……歩みを止めない主に仕えるのは自分も同じなのだから…… 力哉は笑っていた 誰よりも幸せそうに…… 笑みを零していた 康太はそんな力哉を優しい瞳で見ていた 大丈夫…… 僕にはこんなに愛すべき人がいる 力哉は愛を抱き決意を固めた

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