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第110話 聡一郎見張られる‥

聡一郎は司禄に連れらて魔界へとやって来た 魔界に戻ると閻魔が鬼の形相で司命を待ち構えていた 「………閻魔大魔王……」 呟くと…… 閻魔は司命の頭を拳骨でポカンッと叩いた 「本当にこの子は……突如暴走するのは変わらないのですね!」 閻魔はボヤいた 司禄は苦笑して…… 「この子は理性の塊みたいな顔してますが…… 思い込んだら一直線な所がありますからね……」 とボヤいた 聡一郎はクシュンと項垂れた 「………我が主を………苦しめるつもりなどなかったのです……」 だけど許せなかった…… 悠太を傷付けた奴を許しておけなかった…… 司禄は「我は復讐すると想っておった……お主だからな……」と笑った 閻魔も「私も……司命ですからね……主と同じ倍返しが好きなのは解ってました」とボヤいた 「………虐めないで下さい……」 「……虐めてはおらぬ……… お主は当分崑崙山の洞窟に幽閉じゃ! 簡単に何処か逝けぬ様にな……」 「………閻魔大魔王……」 「これより炎帝は命を懸けて動く お主が下手に出たら総てがオジャンになる お主は炎帝が命を賭したら飛び出すであろう………」 「我が主は炎帝 唯一人! 我は炎帝の為ならば……この命賭してもよい!」 閻魔はポカンッと聡一郎を殴った 「炎帝は望んではおらぬ だからお主を魔界に連れて来た これよりお主は崑崙山の洞窟に幽閉じゃ! 司禄、司命を連れて逝け!」 司禄は「はっ!」とお辞儀をすると司命に手錠をはめた 「司禄!」 聡一郎は怒ったが構わずに司禄は連行して行った 崑崙山へと飛び八仙の所へ行くと、すでに八仙が出迎えていた 「司命、これよりお主を幽閉致す」 そう言うと聡一郎の体躯を……飛ばした 「総て終わるまでそこで視ておれ!」 聡一郎は断崖絶壁の洞窟の中にいた 八仙は呪文を唱えると鉄柵が洞窟を覆った 司禄は八仙に跪いた 「宜しくお願い致す」 「任しておれ! 飛び出したくとも出られはせぬ その場所で視ているが良い」 司禄は「では!お願い致す」と言い消えた 八仙は忙しく動いていた 洞窟は暇でうつらうつら……してると康太の声が聞こえた 聡一郎は鉄柵に飛び付き目を凝らした 康太と青龍が八仙と何かを離していた そして……誰かが姿を現した 闇に溶けそうな男を視ていた 漆黒の髪を靡かせ…… 漆黒の黒衣を身に纏っていた男は康太を抱き締めていた 「…………康太……康太………」 聡一郎は康太の姿に……呼び続けた 康太は聡一郎の方は向かなかった 漆黒の男が姿を消すと……康太は年若い男の子と話をしていた まだ育ってない男の子が5人…… まるで流生たちを見ている様だった ボーッと考えに耽っていると…… 「兄者に幽閉されたのかよ?」と言う声が聞こえた 前を向くと康太が青龍の頭に乗っていた 「………康太……何かするのですか?」 「おめぇは……そこで見てろ……」 康太はそう言い球体を聡一郎に放った 「………これは?」 「見届けてぇんだよ? ならそれを見てろよ」 「僕は君の傍で見ていたのです!」 「それは無理だ……お前は探りを入れすぎた お前が下手に動けば計画はすべて狂う 少しの失敗をも許されねぇんだよ聡一郎! たった一度のチャンスをモノにせねば二度と再びチャンスは来ねぇんだ! たがらおめぇを幽閉した…… 死なせたくねぇのと……下手に動かせたくなかったからだ……」 「………康太……僕は……邪魔でしたか?」 「邪魔にした事が一度でもあるか?」 聡一郎はポロポロ涙を流して…… 「………ありません……」 「少し閉じ籠もって呪術の勉強でもしてろ その後ろに書庫に行く扉がある」 「解りました……絶対に迎えに来て下さいね」 「解ってんよ! 迎えに来るまでいい子にしてろ!」 康太は聡一郎の頭を撫でた そして「またな!」と言うと龍に乗って遠くへ駆けていってしまった 聡一郎は幽閉された洞窟で過ごした 力をつける為に色んな本を読み モリモリ八仙の差し入れてくれる食事を食べて過ごした その日は朝から康太は精力的に動いていた 球体にはそんな康太が映し出されていた テレビ局へ入る康太を聡一郎は見ていた テレビの収録が終わると控え室に帰る 聡一郎は不安な面持ちで球体を見ていた 康太は榊原の鳩尾に拳を入れた そして一生と慎一を突き飛ばし…… 「康太!康太ぁ!」 聡一郎は声の限り叫んでいた 何故……傍にいなかった? 何故……離れてしまったんだ…… 傍にいたなら…… 康太を銃弾は貫いた 「ぎゃぁぁぁ……康太!康太!」 聡一郎は叫んだ 康太は銃弾に倒れる瞬間 呪文を唱えた 聡一郎は康太の唇に釘付けになった 銃弾に倒れた康太は……… 中身がなかった…… 聡一郎は泣いていた…… 康太……また貴方は自分の命を囮にしたのですね…… 僕にはしてはいけないと言う癖に…… 貴方は…… 榊原を想えば…… 生きた心地しないだろう…… 榊原が抱き着かねば…… 銃弾は康太の心臓を狙っていた…… 康太…… 伊織を苦しめて…… 駄目じゃないですか 還りたい…… 還りたい…… 康太…… 僕は君の傍に還りたいです…… 聡一郎は泣いた 球体に真っ赤な髪と真っ赤な瞳をした…… 皇帝炎帝が映し出された 何かをするのは…… 一目瞭然だった 東西南北 見た事もない神が門を護っていた 当然真っ赤な髪の炎帝も門を護っていた 炎帝は上空から墜ちてくる黒い塊目掛けて衝覇を送った そして門を開くと……黒い塊を門の中へと閉じ込めた 真っ赤な朱雀が炎帝の上空を回っていた 朱雀は「一柱遺らず門の中へと吸い込まれて行った!」と告げた 「そうか!悪かったな朱雀」 「俺は見届ける者だから、総てを見届ける義務がある!」 朱雀はそう言うと人のカタチに戻った 炎帝は東西南北同時に門を閉じる呪文を放った 門番のケルベロスが門の中へ吸い込まれて消えた 「親父殿……上手くいったな……」 「………皇帝炎帝……お主……本体に戻れなくなるかも知れぬのに……」 「命を賭して……やらねぇと……天界も魔界も……闇へと葬り去られるのは阻止しねぇとな」 「………それでも……リスクは大きすぎる…… 本体に戻れなかった時の事を考えた事はあるか?」 「……親父殿……あるよ…… オレが死ねば……共に逝くという奴がいるのも知ってる! でも今阻止しねぇと……世界は終わる 終わると解ってて手を拱いているのはオレの性に合わねぇんだよ!」 皇帝閻魔は息子を抱きしめた 「………伴侶殿の……想いも考えてやれ……」 「……愛する男を哀しませても…… やらねぇといけねぇ時があるんだよ」 「………炎帝……」 弥勒が炎帝の傍へと駆け寄った 「………炎帝……本体は……瀕死の重傷じゃ…… 本体に戻るのは至難の業かも……」 「………覚悟してた……」 「とにかく手を打たねばなるまい!」 弥勒は炎帝を引っ張って………消えた 朱雀も……自分の仕事を完遂すべく消えた 皇帝閻魔は……瞳を瞑り…… 我が子の幸せを祈っていた 総てが終わると…… 球体は何も映さなくなった すると司禄が迎えに来た 「司命、閻魔が仕事を片付けて炎帝が迎えに来るまで待っておれと申している」 「………炎帝は?………生きているのか?」 「炎帝は人の世を終えれば魔界に還って来られる! その時は伴侶の青龍も共に還られる 魔界のどこを探しても青龍殿はおらぬ お主は与えられた仕事を完遂しろ!」 「……司禄……お前は……視たのか?」 「魔界の者は総て目にした筈だ…… そんな事より仕事をやれ!」 「………僕はまだ還れないの?」 「炎帝が来るまで待つという約束がある!」 「………解った……なら僕は……ここで待つよ」 炎帝が迎えに来てくれる日まで待つ だから……炎帝……迎えに来て下さい…… 僕は……待ってますから…… 聡一郎は…… 崑崙山を下りて魔界に戻った そして司禄がためにためた仕事を片付けた 「還れぬのか?司命?」 そう言い執務室にやって来たのは黒龍 「………黒龍……邪魔に来たなら帰れ!」 「んな事を言うなよ!」 「………君を見てると……赤いのを思い出します」 「……おい……よりによって赤いのかよ?」 「蒼いのは四龍の兄妹のどれにも似てません!」 「あれは親父殿にそっくりなのだ……」 「……へぇ……あぁ愛妻家の金龍…… 謂われてみれば青龍は愛妻家ですね!」 「………酷い言われようだわ俺……」 「黒龍、どうなさったのですか? 珍しいですね……君は司禄と仲がいいけど僕とはそうでもないでしょ?」 「我が弟に頼まれたのだ!」 「………赤いの?蒼いの?茶色いの?」 「蒼いのに頼まれたのだ! 司命を監視しておいてください兄さん!ってな! 逃がしたら……俺は蒼いのが怖い……」 「……長兄でしょ?黒龍!」 「そう!長兄だけど蒼いのは厄介だ…… アイツの妻が絡むと……降参するしかない……」 「……本当に炎帝に弱いんだから!」 「……仕方ないだろ? 遥か昔から見守って来たのだからな」 「………黒龍は……炎帝が青龍を好きなのを知っていたのですか? 知っていて……炎帝の傍にいたのですか?」 「知ってる……それを知ってるのは…… 閻魔と俺だけだった…… 炎帝の片想い……だったんだけどな……」 「………自分のにしようとは想わなかったのですか?」 「想わない! 俺は炎帝の唯一無二の親友でいい…… 刹那い位に……炎帝は青龍に恋していた 俺は炎帝の初恋が実って本当に良かったと想う…… 俺は炎帝の幸せしか願っちゃいない……」 「………赤いのと………同じですか……」 「兄弟だからな!」 黒龍はそう言い笑った 人懐っこい顔が……赤いのを思い起こさせる 「……君を見てたら………赤いのに逢いたくなります……」 「………赤いのは人の世で……てんてこ舞いだ 炎帝が……瀕死の重傷だからな……」 「………死にませんよね?」 「んなに弱くねぇだろ? 炎帝を生かす為に… 必死に転輪聖王中が錯綜してるだろ? 皆が飛鳥井康太を生かそうと動いてる 死なねぇだろ? まだ人の世でやらねばならぬ事がある」 「………黒龍……君とこうやって話す日が来るなんて想ってもいませんでした……」 「それはさ司命が変わったからさ 飛鳥井康太の傍で生きる様になり、柔和になって来たんだよ 人としての心を取り戻したのかも知れないな 遥か昔のお前は……トゲトゲだったからな… まずは嫌みを言わねば気が済まない そんな奴だったからな…」 「………きっと……今世には赤いのがいたから… 赤いのは僕の命を握っていますからね…… 僕は……赤いのに抱かれて逝き繋げて来た 赤いのは炎帝と蒼いのに抱かれて逝き繋げて来た…… 似たもの親子だと言って下さい」 黒龍は聡一郎の頭を撫でた 「炎帝が迎えに来るまで我が家で過ごすがいい」 「………僕に………新婚の金龍と銀龍を見ろと? その光景は……人の世の康太と伊織だけで十分です……」 「そう言うな!蒼いのに頼まれてるんだ」 聡一郎は笑っていた 魔界にいる時は口さえ聞かなかったのに…… こんなにも普通に話せるなんて… まるで一生と話してるんじゃないかって錯覚する程に…… 黒龍と赤龍は似ていた 聡一郎は金龍宅に泊まる事となり…… ゲロ甘な新婚を見せ付けられた まるで榊原と康太を見てるみたいで…… 余計……逢いたいと思った 龍族の優しさに触れて……過ごした日々だった

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