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第118話 城之内 優

城之内優は湘南では有名な暴走族として名を馳せていた 金髪の長い髪を靡かせて走る姿は…… ライオンが獲物を狙いに逝く時の姿に似ていた ライオンの鬣(たてがみ)と呼ばれる髪は見事な金髪だった 自分の人生は自分のモノと好き勝手生きてきた だが……父親が飛鳥井の菩提寺の僧侶を去る時…… 跡を継ぐと決意した 修行に出されひたすら仏道を学んだ 苦しい日々だった それも……目的の為に踏ん張った 晴れて菩提寺の住職に着いたとき…… 父親の背中を見て来た自分を思い出した 親父………あんたの背中は何時も真っ直ぐ先を歩いていた筈だ…… なのに何処で道を外した? 傍に正してくれる存在がいたら違ったのかも知れない…… 口惜しい 言ってもせんのない事だが…… 父親は大きな存在だった 「俺が道を誤らなかったのは…… やっぱしアイツのお陰だな……」 城之内は独り言ちた 絶対的な力と存在感を持った男 あんな男に出逢ったら、即座に敗北感を抱くしかない…… それが飛鳥井康太だった 『城之内、おめぇの進む道を用意してやんよ! だからお前は進め! 曲がったら直してやるかんな! 思う通りに歩いて行けよ!』 その言葉に後押しされて修行の道に入った 修行は血の吐くような辛い日々だった そんな時、康太の従兄弟の飛鳥井水萠(みなも)と出逢った 彼女は……康太の従兄弟だけあって…… 「城之内!今日は七五三の予定が詰まっておる! テキパキ働くがよい!」 ……有段者だわ……口より手が出る……怖い女だった 「うるさい水萠……言われなくてもやるわ」 寄ると触ると喧嘩ばかりしていた 水萠は美人だった 出逢った時は……25だった 飛鳥井の菩提寺の姫巫女に仕える巫女だった 気の強い年上の……水萠 修行を終えて菩提寺に還ったのは二十歳の時だった 必死に父親の名を穢さぬ様に生きて来た 気負いすぎると水萠が 「力みすぎだ そんなに力むと便秘になるぞ?」 と茶化して肩の力を抜かしてくれた 姫巫女よりも実力も力もある巫女だった 姫巫女は水萠がなると言われてたのに…… 桃香がなった事により…… 巫女の間で不協和音が鳴り響いた そんな時、水萠は豪快に笑った 「我は姫巫女など、なりとうもない! 飾りにされるのは御免だ!」 と言い捨て桃香をサポートして動いたそうだ 水萠にそう言われ他の巫女達はは姫巫女に仕えることにした 空気も詠める水萠は飛鳥井康太に絶大な信頼を寄せられる存在だと教えられた 菩提寺の総てを取り仕切っているのは水萠だったから…… 城之内は水萠に恋をした 実らぬ恋と…… 端っから諦める恋を……… 菩提寺の住職に上りつめて日々多忙な時間を送る そんな頃、飛鳥井康太が菩提寺を尋ねた 一人の少年を連れていた 少年の瞳は……すさみ……疲れ切っていた 城之内は康太と伴侶と少年を、敢えて自室に通した 「康太、久しぶりやん!」 やはり城之内は破戒僧なみの姿をしていた ツンツンの髪にサングラス……芸能人が身を隠してる? と言いたくなる姿をしていた 「城之内、今日は頼みがあってきた……」 「その少年か?」 「………そうだ……」 「中村竜吾、先の抗争の主犯格だろ?」 「…………知ってるのか?」 「門倉を動かしてたろ? 今でも情報は入って来るんだよ 中村竜吾、見かけなかったか?と連絡が入って来てた その後、門倉が事情を教えてくれた 俺は落ち着くまで出ねぇ方が良いと想って引っ込んでた 俺が出る時は……葬儀の袈裟を着ねぇといけねぇからな……用なしで良い」 「コイツは……もう中村竜吾じゃねぇ」 「…………え?……」 城之内は唖然とした 「コイツの生まれる瞬間に遡り、運命を変えて来た コイツは天涯孤独の身で施設に入ってる事になってる それがコイツの願いだからな……叶えてやった」 自分を殺して…… この世の軌跡を総て消してと頼んだというのか…… 城之内は竜吾を見た 暴走族をしていた頃……見かけた少年達みたいな瞳をしていた 非行に走る少年特有の瞳……を城之内は嗅ぎ取っていた 「で、俺にどうしろと?」 「コイツは隆之介と言う名前だ 苗字は孤児院の名前を取って如月隆之介 如月学園に入っていた 事件を起こしたからな、俺が引き取って第二の人生を与えようと想ってる」 「………第二の……人生?」 「そう。隆之介は視える奴なんだよ この瞳……修行させれば調伏も可能だ お前に預けるから修行させてくれねぇか?」 「………コイツ……お前の弟を襲った奴だろ? お前は……コイツを何故生かす?」 城之内の瞳が康太を射抜いた 康太は城之内の瞳をじっと見つめ 「オレは適材適所配置するが役目 隆之介は飛鳥井の菩提寺を継がせるつもりだ……」 「…………俺では役不足だというのか?」 城之内はがっくし……肩を落として呟いた 「違う!城之内はこの寺の住職をする 隆之介は調伏や視て祓う方をやって貰う そして行く行くはお前が隠居した後は隆之介が継ぐ お前の息子が継ぐまでの間、隆之介が跡を務める」 「………ソイツ……第二の人生……踏み出すのか?」 「……あぁ……自分も総て捨てたからな…… これからが隆之介の贖罪の日々になる」 「……俺の戸籍に入れようか?」 「………城之内……それは……止めといた方が良いかもな……」 「………何でだよ?」 「絶対に養子縁組と言う婚姻だと勘違いされる……」 「……そっか……ゲイは養子縁組するんだったよな? お前達は養子縁組しねぇのかよ?」 「してぇけどな、オレは捨てられねぇのが沢山あんだよ……」 康太はそう言い哀しそうに笑った 「………真贋は……飛鳥井から出られねぇもんな……悪かった……」 「城之内……隆之介を頼めるか?」 「あぁ、任しといてくれ! 俺の戸籍に入れて第二の人生送らせてやる! 誰がなんと言おうと構うか! 隆之介、今日から俺がお前の父親だ!」 そう言い城之内は隆之介の頭を撫でた 康太は天宮を送り正式に隆之介を城之内の戸籍に入れた その日から隆之介の修行は始まった 隆之介を預けて三年経った頃、康太は菩提寺を尋ねた この日飛鳥井康太は伴侶と伴侶の両親と飛鳥井の家族を連れてやって来た 大広間に紫雲龍騎や姫巫女の桃香も座っていた 他にも蒼々たる顔ぶれに城之内は言葉をなくした 「………これは……」 一族が広間に座っていた それだけに留まらず…… 弥勒高徳も顔を出していた 康太は真贋の衣装を着ていた 「城之内、隆之介を大学に通わせてるんだって?」 「あぁ……コイツは莫迦じゃない…… 色んな事を学ばせたかったからな…」 「城之内、一族の者はお前がゲイじゃないか心配している」 「………え?……まさか……」 「そのまさか……だ!」 「………俺はノーマルです」 城之内がそう言うと奥から先代の住職、即ち城之内の父親が顔を出した 今は穏やかな顔をしていた 「優(まさる)久しぶりですね」 父親は居住まいを正して礼を尽くした 「………何用で御座りますか?」 「お主が……婚姻したと聞いたからな……参った 別に反対はせぬ お主が選んだのなら構わぬ……」 「……おい!親父!俺は構うんだ!」 城之内は吠えた まるで火を吹かんばかりに……吠えた 「俺はノーマルじゃ! 隆之介は我が息子! 次代の菩提寺の住職になると真贋が言われた! だから戸籍に入れただけだ!」 「では証拠を見せろ!」 「………証拠……とは?」 「妻を娶って男であると証明するのだ」 「…………相手がいねぇのに…… どうやって証明するんだよ……」 「相手は用意した 飛鳥井水萠、彼女と結婚してこの菩提寺を盛り立てて逝くのじゃ」 「………親父……水萠が……そんなの了承する筈がない……」 「水萠は了承した! 今宵、祝言を挙げるとする! お主は妻を娶って、我の代わりに…… 飛鳥井を護って逝ってくれ……」 父親に…手を握られた 父親は無念だったろう 御厨の血に……囚われ……康太の果てを狂わせた… 本当は……飛鳥井の菩提寺を護りたかったに違いない…… そう思ったから…… 父親の想いを継いだ でも祝言は別な話だった 躊躇する城之内に康太は 「夫婦の契りの見届け人は、オレと伊織がする事になった! しかと見届けてやるかんな! 濃いのを頼むぞ!」 「………俺は結婚するとは言ってない……」 「おめぇが焦れってぇかんな! オレが一族も父親も集めてやったんだよ 隆之介もお前が煮詰まってるのは言ってたしな!」 康太には水萠への想いはお見通しだった 隆之介がそれを知っていたのはビックリだが……… 「水萠の想いは無視なのかよ!」 「水萠の想いを知らねぇのはお前だろ? お前……水萠の縁談……喜んだんだってな……」 「………水萠が幸せになるなら……良いと想ったんだよ!」 「水萠には好いた男がいる」 「…………俺には関係ねぇ……」 「その男が鈍感で蹴り上げたい位に…… 腹が立つそうなんだ でな、水萠が押しかけ女房やるって言うからな協力したんだよ もう逃がさねぇかんな!」 「………康太…」 城之内が康太の名を呼ぶと…… スパーンと襖が開かれて 廊下を花嫁装束の水萠が……… ゆっくりと歩を進めて来た 慎一が城之内を捕まえると、裸に剥いて紋付き袴を着せた あれよあれよ……と言ううちに…… 紫雲龍騎の前に……水萠と二人で立っていた 祝詞をあげて祝辞を述べる 広間はすっかり婚礼の儀一色になった 「指輪の交換じゃ! 水萠、こやつに指輪はめてやるのじゃ!」 「あに様、水萠は嬉しゅう御座います」 はにかみ……城之内の指に指輪を無理矢理はめた! 「ほれ!わらわの指にも指輪をはめるのじゃ!」 「………水萠……不本意じゃねぇのかよ?」 「我の本意じゃ! ったく……愚鈍なお主には煮え湯を飲まされた…… 仕方ないからな100歩譲ってやる事にした 康太に話したら全面協力してくれると言うからな……して貰った さぁ、契りの口吻けをするのじゃ!」 迫られ……城之内は契りの接吻をした 晴れて夫婦になったと一族は盛大に喜んだ その夜……一族は婚礼を喜び宴会となった…… 城之内と水萠は二つ並べて敷かれた布団の上に正座していた 二人ともカチコチになっていた 康太はため息を着いた 「城之内、お前、女とエッチした事は?」 「…………ソープと風俗なら……」 「一般人とは?」 「………ない……」 この台詞に康太は榊原を見た 榊原は水萠に 「水萠は男と寝た事はありますか?」 「………ない…… 我は生まれた時から菩提寺の為に日々生きておった……そんな時間などなかった……」 康太と榊原は顔を見合わせた 「仕方ねぇな…見届け人だかんな…… 水萠、城之内、取り敢えず着物脱げよ…」 城之内と水萠は真っ赤な顔して着ている夜着を脱ぎ始めた 「下着も脱いどけよ!」 言われて二人は最後の砦を脱ぎ捨てた 「取り敢えず、チューしろ!」 二人は……ぎこちなく口吻けをした それを見て……康太は前途多難を知った… 「そんなチューじゃ……気持ち良くなれねぇよ!」 康太はそう言い榊原の頬を両手で挟んだ そして唇を合わせて……歯列を割って……舌を挿し込み……互いの舌を搦め……吸って……口腔を犯す様な接吻をした それを見て……城之内は股間に血が注がれる熱さを感じた 水萠も……もじっ……と頬を赤らめた 「やってみろ!」 康太に言われて、二人はねちゃっこい接吻を見よう見まねで始めた 康太は城之内の手を持って……水萠の乳房に触れさせた 乳頭を掴み……捏ね回し……揉み上げた すると水萠の口から「……んっ……ん……んんっ……」と甘い喘ぎが漏れて来た 康太は水萠を布団に押し押した そして閉じてる股を開かせた 康太の指が……水萠の秘部に触れた 「濡れてるな……」 そう言い膣に指を挿し込んだ 「……狭いな……伊織……城之内のサイズは?」 康太が問い掛けると榊原は城之内のペニスを掴んだ 「………かなり大きいですよ…… 挿れられますかね?」 そう言い榊原も水萠の膣に指を挿し込んだ 「城之内、舐めろ!」 「……え?……何処を?」 「水萠の……穴を舐めまくれ……」 「………え……舐めるのかよ?」 「婚姻の見届け人が何故存在すると想うよ?」 康太は突拍子もなく問い掛けた 「……え?解らねぇ……」 「性に知識のない二人にセックスを教える為にいるんだよ!」 「………そうなのか?……」 「と言う事で舐めろ!」 榊原は水萠の股を広げた 腰に枕を挿し込む事によって……より舐めやすく……した 城之内は水萠の……性器を舐め始めた 水萠の口から甘い喘ぎが洩れる 「水萠、教えてやっから、城之内の性器を舐めろ!」 康太は榊原の性器を取り出すと…… 美味しそうに舐め始めた 上目遣いで榊原を見上げながら……康太は舐めた 亀頭やエラ……肉棒の部分から陰嚢までくまなく舐めた 水萠も城之内の性器をまねしながら……舐めた 「城之内、そうしてる間に乳首触れるやん 他にも舐めてられるだろ?」 言われて城之内は乳首を触り揉んだ 「水萠、開いて見せてみろよ」 「………それは……恥ずかしゅう御座います」 「セックスは恥も外聞も捨てるんだよ! 装ってなんてやれねぇぞ?」 言われて水萠は………開いて見せた 真っ赤な……割れ目を見て……城之内はイキそうになった 「少しずつ挿れろよ」 言われて……城之内は挿入を試みるが…… 上手くはいかなかった 「水萠……仕方がねぇ……見本を見せるから…… お前……城之内を押し倒せ!」 「はい!努力します!」 康太は榊原を押し倒すと、自分のズボンを下着ごと脱ぎ捨てた ポケットに忍ばせたローションを榊原の性器に垂らすと… 自分のお尻の穴にも……塗り込んだ 「オレは男だかんな濡れねぇんだよ 水萠はもう濡れ濡れだろ? オレは男だからな濡れる事はねぇんだよ」 康太が哀しそうに言うと…… 榊原は康太に接吻を送った 「愛してます奥さん」 そう言われ康太は嬉しそうな顔で笑った 「水萠、挿入らねぇならな挿入れるんだよ!」 康太はそう言い榊原の肉棒を挿れ始めた 仰け反る康太は妖艶で……妖しげな腰付きが………股間を熱く滾らせた 「伊織……もっと奥……」 榊原は康太の腰を引いた 「水萠、城之内の上に乗って挿入れろ!」 水萠は言われた通りに城之内の上に乗って…… 性器を受け入れた 城之内の肉棒を膣に迎え入れると…… ドクンッと嵩を増した 榊原は康太の中に挿入して……我慢できなくなっていた 乳首に吸い付き腰を動かすと康太は喘いだ それに刺激され……城之内も頑張った 何度も意識を手放し…… 目を醒ますと康太と榊原がセックスをしていた 見てると堪らなくなり……水萠を求めた 尽きるまで……水萠と交わり…… 二人は意識を手放した 榊原は思いっ切り康太の中を堪能すると、康太の中から性器を抜いた 精液を掻き出して身なりを整えると…… 初夜の寝室から出て行った 広間に戻り康太は一族の者に 「二人は、しかと契り夫婦になった」と宣言した 城之内の父親は「それはようごさいました」と胸をなで下ろした 「………風俗とソープしか行ってねぇからな……実践で教えたら……疲れた……」 「………それは……それは……お手数お掛け致しました…… 無事契れて、我も見届けれて本当に嬉しゅう御座います」 康太は何も言わず城之内の父親の肩を叩いた 「弥勒、還るなら乗せてく」 「お疲れだな康太」 弥勒は笑った 「………まさかね……新婚の夫婦の前で……エッチ見せるなんて考えてもいなかったもんよー!」 「風俗とソープで使ったのなら… その勢いで抱けばよいものを……」 「弥勒、そう言うおめぇも風俗好きだったよな? キャバレーも行きまくってたな……」 「康太!今言わぬとも……」 「その癖……子供を作るエッチはしなかったかんな…」 「………悪かった……あやつと……似たり寄ったりであった……」 「と、言う事だ……オレは疲れ果ててるかんな……寝る……」 康太はそう言うと榊原に抱き着いて眠りに落ちた 見事夫婦の契りをした城之内と水萠は、正式な夫婦になった 城之内が妻を娶った瞬間だった 城之内は隆之介に 「妻は娶った だがお前は俺の長男だ! お前が寺を継げ!いいな!」 と宣言した 水萠も「飛鳥井家真贋の言う事は絶対じゃ!お主が長男じゃ! 隆之介、甘えてよいのじゃ! 継母とはいえど我はお主の母親じゃ!」と宣言した 二人に時には厳しく、時には甘やかされ 隆之介は過ごした この時がなくば……隆之介は何処か不完全な人間にしかなれなかったと想う そして……両親や……兄を想う…… あの人達に……孝行出来なかった日々を想う 朝 日が昇る前から本堂を庭、正門付近の掃除を始め忙しく動きまわる この寺に来てから隆之介はずっとそうして贖罪して来た 大学に通わさせて貰ってる自分の…… 守られてる立場に…… 感謝して隆之介は日々生きてきた 城之内は隆之介を預かって5年目に 「お前、飛鳥井に就職しろ!」と言った 「……父さん……俺は寺を継ぐ使命があります」 「お前が寺を継ぐのは、俺が隠居してからだ! 俺を隠居させるな! おめぇは俺の自慢の長男だからな! 何処へ出しても恥ずかしくない! だからな、お前は飛鳥井建設に入社して康太の仕事を手伝え 隆之介……もう贖罪の日々はしなくても良いんだ……」 「………父さん……」 「隆之介、奥さん見つけて離れで暮らせ 俺はな隆之介、おめぇがいてくれて良かったと想う 俺にお前を与えてくれて本当に康太には感謝している」 「………父さん……俺は……罪を犯しました……」 「お前を……飛鳥井の会社に少し預ける そこで慎一に面倒を見て貰えと言う事だ」 「………何故……」 「俺も暴走族だった お前と一緒だな……そこは でも俺等の時代には飛鳥井康太がいた 慎一の生きてる時代には……いなかった…… 道を違えて……慎一はやり直したそうだ 人はやり直せる それを……慎一に教えて貰えと……康太が言ってる 俺達はお前の両親なのは変わらねぇ…… お前を何処にも逝かせねぇし、渡さねぇ… なぁ水萠、隆之介は俺とお前の子供だよな?」 「何当たり前の事を言っておる 我は隆之介の卒業式に出るから! お前の母として見届けさせて貰う」 「………母さん……大学生の母親じゃ若すぎます……」 「些細な事だ!気にするな 入社式のスーツを作らねばな その前に卒業式のスーツか…… 採寸は一緒に行く!よいな?」 「はい母さん!」 隆之介は二人の子供でいたいと想う 苦しませた両親への想いの分も…… 二人を大切にしたいと思った 水萠は……飛鳥井建設に入社すれば…… 隆之介の実の兄がいるのを知っていた そうすれば…… 隆之介は……二度と……還ってこない気がした 「……優……子離れせねばならぬのか?」 「………血は……水より濃い…… 親子だった……事までは消えねぇからな……」 「……我は……長男を必死で育てた この先も……隆之介が長男じゃ……」 城之内は水萠を抱き締めた 「………見守っていこう……」 「………解っておる……」 幸せに……隆之介 人より……幸せでなかった分 幸せにな…… それが両親の願いだった

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