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第119話 Risata
「康太 今宵は外食に行きませんか?」
榊原が何でもない日に誘ってきた
「外食?連れて行ってくれるのかよ?」
「ええ。コオとイオリを連れて行きましょう!」
「………え?もしかしてRisata?」
「はい。先月一ノ瀬先生の所に診察に行った時に、久しぶりにRisataの食事を食べたくなりました」
「お!オレも行きてぇなって想ってた」
「一生達や榊原の両親、飛鳥井の両親を誘いました
ですので……今日は貸切になってしまいました……」
「お!貸切か、良く貸切にしてくれたよな?」
「店長にお願いしました
そしたら快く引き受けて下さいました」
「んな大人数で来るなら貸切じゃねぇと……他の客回せねぇよな……」
「父さん達にはもう伝えてあります
飛鳥井の家族にも伝えておきました」
「志津子呼んで良い?」
康太は問い掛けた
志津子とは飛鳥井義恭の妻だった
「志津子さん?……どうしてですか?」
「悦子と仲良いんだよ志津子は」
榊原は、あぁそう言う事ですか……と納得した
「真矢も母ちゃんも来るなら志津子と美緒を呼ばねぇとな……」
「………酒豪……カルテット……ですか?」
「そうそう、母ちゃんと真矢と美緒と志津子
この四人が揃ったら財布の中身は空になるぜ!」
康太はそう言い笑った
「楽しい時間が過ごせるなら……
それに超した事はありません」
「……伊織……オレ……伊織のそう言う所……
めちゃくそ大好きだ……」
寛容な物事の考え方に康太は嬉しくなる
「君を愛すればこそ……です」
「伊織……」
「愛してます……奥さん」
「オレも愛してるかんな……」
康太が言うと
「りゅーちゃ あいちてる!」と言い流生が榊原によじ上った
一生は呆れて……
「子供のいる前でやるな……」と止めた
「きゃにゃもあいちてる」
そう言い大空は榊原にチューした
「じゅるい!おとたんも!あいちてる!」
音弥も榊原にチューした
翔は何も言わずに……榊原に抱き着いた
「どうしました?」
「………とぅちゃ……」
「愛してますよ翔」
そう言い榊原は翔の頰にキスを落とした
「ねぇ、ちなは?」
太陽が榊原に問い掛ける
榊原は笑って太陽にもキスを落とした
「太陽も大好きですよ
五人の兄妹は僕の宝物です」
五人の子供は榊原に抱き着いた
とぅちゃの腕の中には……かぁちゃが幸せそうな顔して笑って抱かれていたから……
子ども達もとぅちゃに抱き着いた
榊原は康太と子ども達を抱き締めた
「お子様ランチ、特別に頼んだので出して貰えますよ?」
榊原が言うと流生の瞳がキラキラ光り榊原を見た
「ちょれ、ほんちょ?」
「ええ。流生達が大好きなお子様ランチですからね、頼むに決まってるでしょ?」
「ちょれ、うれちぃ」
流生は嬉しそうにデレッと笑った
子ども達と遊んでると、応接間のドアが開いた
康太はドアの方を見た
ドアを開けて入って来たのは兵藤だった
「………お前……何処から来たのよ?」
想わず康太が問い掛けた
「俺?俺は一生の部屋で寝てたんだよ」
「……え??何で一生?」
共通感が伺えれずに尋ねた
「昨夜遅く一生に呼ばれたんだよ……」
康太は一生を見た
一生は視線が痛くて……苦笑した
「俺は今OB会の仕事を無理矢理手伝わされてるんだよ」
「OB会?何かイベントやるのかよ?」
康太が言うと兵藤はカチンッと来て怒った
「………てめぇ……忘れたとは言わさねぇぜ…」
「OB会に出ろというアレか?」
「そうだよ!」
「それがあんで一生と関係あんだよ?」
「OB会の宛名を頼んでおいたんだよ
出来上がったって言うから夜遅かったけど来たんだよ
やっとこさ発送できる……」
「………OB会の招待状?」
「そうだ!」
「………顔は出すけど直ぐに還りてぇな……」
「あんでたよ?」兵藤は怒った
「…………お酒飲まされて拉致られて監禁されたくねぇからな……」
「………え?……それは……ねぇだろ?」
「………オレは……コレクションに陳列される気はねぇかんな……」
「………それって……誰を指してる?」
「五百島(いよじま)顕真(けんしん)」
「五百島……元華族とか言う……?
…………あぁ……そうか……あの人が何億積んでも欲しい人間って……おめぇか?」
「…………OB会……オレは鬼門だからな…
しかも……先頃……OB会は代替えしやがった
厄介になって来てるのは否めねぇだろ?」
「………代替えしたから……躍起になってOB会の開催を押してる
そう言う訳か……クソ野郎だな……
おめぇを手に入れて世界征服でも狙う気か?」
兵藤が言うと一生が
「そう言うのとは違う……」と言った
「違うって?何処がだよ?」
「康太は言ったろ?
コレクションに陳列される気はねぇ……って…
あの人は……コレクションが欲しいんだ
自分の意のまま操れる人形が……
それをコレクションして眺めてる……
時にはコレクションを客人に与えて……もてなす……
タチが悪いっちゃ……最悪の部類だな」
「………飛鳥井家真贋を……コレクションにするって言うのかよ?」
「………だろ?」
「………確かに……OB会頑張ってるのは五百島だわ……そう言う思惑があったのね?」
「………と言う事だわ」
兵藤は呆れて言葉にならなかった
「ひょーろーきゅん」
流生が兵藤の膝の上によじ上っていた
兵藤は流生を抱き上げ膝の上に乗せた
「………康太……OB会……不参加で構わねぇわ……
子ども達から……おめぇを取り上げられねぇもんな……」
「………そう言う訳にもいかねぇかんな……
OB会に出て叩き潰してやろうかと想ってる……」
「………弊害……出てるのか?」
「………伊織が創りたがってる映画……
頓挫しそうなんだよ……
餌を撒いて……オレを誘き寄せてぇみてぇだな……」
「………やる事せこいな……」
「だな……OB会やるなら……九御(くおん)賢人(まさと)さん呼んでくれねぇか?」
「………その人OBか?」
「第三十期生の生徒会長だ!」
「そいつを呼べば……大丈夫なのか?」
「それは……当日のお楽しみ……って事だな
それより貴史、今夜外食に逝かねぇか?」
「お!良いな!何処へ逝くんだよ?」
「Risata」
「おー!良く席取れたな!
あの店、三年先まで予約一杯なんだろ?」
「それってXmasとかだろ?」
「そうなのか?」
「オレ等は結構あの店に行くぜ!
朝に予約入れて行けば席はあるぜ?」
「………それって……お前達だけだろ?
あの店、絶対に座らせねぇ席あるって言ってるからな……
その席なんじゃないのか?」
「………オレは知らねぇ…」
「そう言えば美緒もあの店好きだったな」
「今宵は貸切だかんな美緒も来るぜ」
「美緒……呼ぶのかよ?」
「母ちゃんが喜ぶからな」
「んとにお前はマザコンだな……」
「それはお前だろ?」
「……俺の何処がマザコンなんだよ?」
「………一生、貴史は自覚ねぇな…」
そう言うと笑った
「貴史だからな!」
一生は言った
夜になるまで適当に騒いで、子ども達と遊んで、Risataへと向かった
店の前に逝くと清四郎が真矢と笙といた
「あれ?明日菜は?」
康太がそう答えると真矢が
「………明日菜の父親が……入院致しました……
なので明日菜は病院へ行っております」
真矢が美智留と匠を連れていた
玲香と清隆は美緒と一緒にいた
京香は瑛智や瑛太といた
聡一郎は悠太と留守番を買って出た
魔界から還って来て、悠太は退院させた
飛鳥井の家に還って来たが、まだ歩けなかった
聡一郎は悠太に着きっきりで看病した
不安なのか……悠太から離れたがらなかった
康太は聡一郎の不安も納得できたから、好きにさせておいた
「ばぁたん」音弥が駆け寄ると真矢はニコッと笑った
「おとたん、元気だった?」
「おとたん ぎぇんき!」
「おとたんが元気だとばぁたんも嬉しいわ」
真矢は笑った
美緒も康太の子に手を差し出した
翔が「みおたん」と言い手を繋ぐと
「翔、修行は厳しいか?」と問い掛けた
「かけゆ ぎゃんびゃっちぇる!」
美緒はしゃがむと翔の頭を撫でた
「頑張らぬとも良い
大人になったら大変になるのだ
子供のうちは頑張らぬともよい」
そう言い翔を抱き締めた
Risataの店内から店長の江口陵二が顔を出した
「皆さん、いらっしゃい!
今日は母も待ち遠しくしておりました」
榊原が陵二の前に逝くと
「騒がしくなりますが宜しくお願いします」
「何を差し置いても飛鳥井の方の為でしたら、優先させて戴きます
さぁ、どうぞ!」
陵二に促されて飛鳥井の家族も榊原の家族も店内に入って行った
榊原と康太はコオとイオリを店の入り口にリードを繋いだ
ボスはコオとイオリの姿を見ると嬉しそうだった
『ボス 久しぶり』
コオが甘えるとボスはコオを舐めた
『ボス 逢いたかったです』
イオリも言うとボスはイオリも舐めた
そして三匹並んで丸くなった
一ノ瀬聡哉は三匹に目を止めて写真を撮った
物凄く仲良く丸くなってる姿は……
微笑ましかった
聡哉は康太の所へ行くと
「康太君、事後承諾になるけど、犬たちの写真撮らさせて貰ったよ」と告げた
「構わねぇぜ!」
「小さなパネルにして店に飾って良い?」
「良いぜ、だったら店に合った額縁を装飾してくれる店あるぜ!」
「紹介してくれるかな?」
「良いぜ!伊織、店の名前と電話番号書いてくれ」
康太が言うと榊原は胸ポケットから手帳を取り出し、書いた
書き終えて聡哉にメモを渡した
「東雲……しののめって言うの?」
「そうだ!東雲可夏子だ」
康太の言葉に……玲香は固まった
恵太の妻の名前を聞こうとは……
想ってもいなかった
「可夏子は装飾デザインやってるんだよ
店の雰囲気に合った額縁や絵画などを専門に扱ってる
飛鳥井康太から紹介されてと言えば、頑張って似合ったのを見付けてくれる」
康太は当たり前の様な会話で流した
清隆も玲香も可夏子の事は気にならなかった訳じゃない……
だが真贋が決めた事だった
自分達が出るべきでないと……何も言わなかった
康太は可夏子の事も……
ちゃんと身の立つ様に……
してやっていたのだ……
今更ながらに……玲香は胸が熱くなった
「姉さん?どうしたんですか?」
真矢が尋ねると玲香は小さな声で……
東雲可夏子と言うのは恵太の元妻だと教えた
「………そうなんですか……
やはり康太ですね……関わった者の身の立つ様に……動いているのですね」
玲香は瑛太に
「お主は知っておったのかえ?」と問い掛けた
「…………はい……会社には来る事はありませんが……顧客のニューズに合わせて注文住宅の場合、部屋のレイアウトもするので、そんな時は受注しているのは知ってます」
「…………そうであったか……」玲香は呟いた
真矢は「やはり康太ですね……真似できない程の懐の広さです」と感心した
玲香は恵太に教えるつもりでメールを打っていた
恵太……お主も康太に甘えすぎなのじゃ……
玲香はほろ酔いで飲みまくっていた
心地よい酔いだった
子ども達はお子様ランチを出されて大喜びだった
翔が「かぁちゃ!」と呼んだ
流生が「とぅちゃ!」と続い
瞳を輝かせ
鼻息荒く
音弥が「ちゅごい!」と叫んだ
ファミレスのお子様ランチとかでなく、お子様のプレートに大人でも食べるようなエビフライやスパゲッティ、ハンバーグが入っていた
プリンは生クリームで綺麗に飾り付けされていた
太陽が「みちゃきょとにゃい!」と興奮して
大空が「ちゅぎょい!」と叫んだ
榊原は「食べなさい」と興奮する子ども達にご飯を食べさせていた
康太の膝の上には瑛智がいた
「酒は無理だぜ!」
乳飲み子に康太は言った
瑛智は康太を見て、唇の端を吊り上げて嗤った
「オムツしてるのはミルク飲め!」
そう言い哺乳瓶を口に突っ込んだ
瑛智は哺乳瓶をペッと外した
康太はエビフライを口に突っ込んだ
瑛智はエビフライをモグモグしていた
「…………綺麗なお姉さんの胸に顔を埋めてぇ……とか……スケベな事したら……お尻叩くぞ」
瑛智はあっかんべーとした
「んとによぉ……コイツ……お尻叩いてやる!」
康太は瑛智のお尻を出すとペシペシ叩いた
うわぁんと瑛智は泣いた
兵藤は瑛智を避難させた
「さり気なくやらねぇから叩かれるんだせ?」
兵藤の言葉に瑛智は頷いた
「今度大学に連れてってやる!
そしたらピチピチの大学生が一杯いるぜ!」
兵藤の言葉に瑛智は「きゃはっ!」と笑った
「んとに……おめぇは巨乳が好きだな……」
兵藤は呆れて言った
すると一生が「康太と正反対だな」と笑った
「あぁ……康太は巨乳が大嫌いなんだっけ?」
「窒息するから嫌なんだって」
一生はそう言い笑った
「………そりゃぁ……康太の伴侶は平たい胸だもんな
巨乳なんて……苦手なのも解るわ」
「モテるのにな康太」
「結婚してと迫る女は……後を絶たない」
二人はため息を着いた
瑛智は巨乳を揉む仕草をした
指が妖しい……
変態的な乳飲み子……飛鳥井瑛智……だった
瑛太は「………私の前でそれやったら………ベビーベッドに閉じこめます!」と嫌な顔をした
美智留はご機嫌だった
手を叩いて笑っていた
ブーブー言って笑う
真矢は榊原の子供時代を想い出していた
手の掛からない子だった
美智留も転生した子だから物分かりが良いのだろうか……
物分かりが良い大人しい子だった
「美智留、プリン食ったか?」
美智留はうんうん!と頷いた
江口悦子が玲香の所へ現れた
志津子と美緒と真矢は喜んだ
四人で盛り上がる頃には……
閉店の時間を超えていた
「伊織……還らねぇと……」
きゃはは!と笑ってるタチの悪い酔っぱらいが四人……
「そうなんですがね……」
榊原も困り果てていた
榊原は陵二に「………すみませんでした…」と謝った
陵二は「うちの母も……混ざってるので……気にしなくて良いです」と困惑した顔をした
榊原は薬指に指輪をしていた
しかも2本重ね付けしていた
それ指輪が康太とペアなのは見ていれば解った
そして耳にもブリリアントカットのダイヤのピアスが入っていた
お揃いなのは一目瞭然
仲の良さが伺えれた
この二人は……テレビで伴侶だと宣言した
飛鳥井家真贋の伴侶 榊原伊織として世間に広めた
羨ましい限りだった
康太は立ち上がると陵二に手を差し出した
「楽しいひとときをありがとう!」
「また、いらして下さい
貴方達の席は何時でも用意しております」
「ありがとう!」
陵二は嬉しそうに笑った
聡哉は康太に「早速電話します」と伝えた
「あぁ、贔屓にしてやってくれると本人も喜ぶと想う……」
「康太君、コオとイオリの写真、飾らせて貰うね」
「聡哉」
「何ですか?」
「イオリには兄妹犬の桃太郎と言うのがいる
近所にはグレードデンの玉三郎もいる
コオの母親のコータも年だし……遺してやりてぇ……今度飛鳥井に遊びに来いよ
そしたら家に呼んでやる」
「本当に!なら遊びに行かさせて貰うよ!」
「社交辞令じゃねぇぞ?」
「解ってますよ!
慎一にキャラメルプリンを教えるって陵二が言ってたし、遊びに行くよ!絶対に!」
聡哉と次の約束して、帰る事にした
玲香と真矢と美緒を何とか車に乗せ
お腹が膨れて眠った子ども達を車に乗せて
コオとイオリも車に乗せた
「じゃ、また食べに来るかんな!」
康太が言うと陵二と聡哉は深々と頭を下げ
「「お待ちしております」」と口を揃えて言った
店を後にして飛鳥井に帰った
清四郎と真矢は客間に泊まる事にした
美緒と志津子も客間の布団に倒れ込んで
眠りについた
楽しい夜だった
Risata 笑いが絶えない場所
と言う意味の店だけあった
家族で過ごす楽しい夜だった
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