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第120話 聞きたい事が‥‥

前髪で顔が隠れて……前が見えてるのか解らない そんな地味な男は黒縁の眼鏡をはめていた ブツブツ言いながら歩いていると…… ぶっかった 「………痛い……」 「悪ぃ……よそ見してたわ……あれ? チビ、どうしたよ? 最近見かけなかったな」 「コタ君……久しぶり……」 「元気にしてたか?」 「してたよ……コタ君に中々逢えなくて寂しかった……」 「んな時には飛鳥井に来いって言ってるだろ?」 「……コタ君……聞きたい事があるんだけど?」 「おー!何でも言ってみろ!」 「………あの……二人で……が良いんだけど?」 前髪で顔は見えないが耳が真っ赤になってたから……恥ずかしがってるのが解った 「お!ならオレんち来るか?」 男は頷いた 康太は榊原に「先に家に帰るわ」と告げて大学を出て行った 榊原は一生に「誰ですか?」と問い掛けた 「康太の情報の方の仕事手伝ってる八雲紀里(きり)だ」 「………初めて見ますが?」 「………アイツは絶対に表に出ねぇ駒だからな……… 影は薄いけどIQ180超えてる天才だ シンクタンクに入ってたのを康太が引き抜いた」 「………そんな風には見えませんが……」 「見えなくても天才で康太の駒だ!」 康太と紀里はタクシーを拾うと帰宅の途に着いた 康太は敢えてリビングに紀里を通した ドカッとソファーに座って 「で、話はあんだよ?」 「………男同士って……どうやってセックスするの?」 「好きな奴出来たのか?」 「………僕は好き……でも相手は……面白半分かな?」 「………面白半分?」 「………こんなダサい奴……構う奴いないから……」 「それでも……おめぇはそいつとセックスしてぇんだな?」 「……うん……後悔したくないから……」 「男同士はな……ケツの穴使うんだよ」 「………!!……お尻の穴……痛いよそれは……」 「でも気持ち良いって感じる様になるんだよ!」 「………そっか……お尻の穴…… そうだよね……挿れる所ないもんね……」 「誰なんだよ紀里?」 「同じ大学の水谷瀬名って言う子…… バンドやってて…… 最近メジャーデビューした子だよ……」 「何処で知り合った?」 「剣持ゼミで一緒なんだ……」 康太は不安になる バンドやってる奴なんて… 遊びかも知れない…… 康太は心配になった 傷付けたい訳じゃない 恋をするなら良い 人として生きて欲しい…… 康太はずっとそう思って来たから…… 人としての感情も喜びも何もかも紀里にはなかった 育てられなかった子は…… 総てを諦めて過ごしてきた それが康太は常に心配だった 紀里は親に捨てられた子供だった だが、その能力の高さに里子に貰われた アメリカに行かされて、スキップしまくりで大学を出たのが10歳の時 その後シンクタンクに入って研究三昧 子供らしい事は一切なにもせずに…… 過ごした 人の感情も……無かった 感情なんて不要だったから…… 15歳の時…… 里子先の両親は他界した 両親は里子に来た時にはかなりの高齢だった…… その両親も病気で呆気なく他界した 後見人となってくれたのが……飛鳥井康太だった 「おめぇの両親に頼まれたからな! お前の行く末を見届けてやんよ!」 飛鳥井康太は紀里の前に姿を現した時にそう言った 康太は両親の想いを語ってくれた 里子に貰った子は…… 人より能力が長けていた 両親は最高の教育を………と想い留学させた それに応える様に…… 紀里はスキップしまくり、果てはシンクタンクに入る程……頑張った 両親は……アメリカなら気兼ねなく過ごせるかと想っただけだった…… 愛されずに育った子に…… 笑って欲しい 幸せを感じて笑ってて欲しい…… そう思っただけだった…… 『康太さん……あの子に年相応の生活をさせてやって下さい…… 幸せになって欲しい…… それが私達の願いです…… どうか……逝くしかない私達の願いをお聞き下さい』 八雲夫妻は康太に総てを頼んで………逝った 康太には託された義務があった…… 話をしていると榊原がリビングに入って来た 「………席を外した方が良いですか?」 榊原は康太に問い掛けた 康太は紀里に問い掛けた 「オレの伴侶だ! 同席にしても良いか?」 「コタ君の旦那様ですね! 初めまして八雲紀里です!」 ニコニコ笑って紀里は答えた その瞳の澄み切った美しさに……榊原は気付いた 康太が絶対に表には出さず守り通している存在………を。 「榊原伊織です! 紀里、宜しくお願いしますね!」 「はい!………コタ君は……その………旦那様と?」 紀里は真っ赤な顔で問い掛けた 「してるぜ!」 「………そうなんだ……」 紀里はさらに真っ赤になった 康太は不安になって胸ポケットから携帯を取り出した 「神野、ちょっと聞きてぇ事がある」 『康太!何ですか?』 「バンドやってる奴で、水谷瀬名ってお前の事務所の奴だったよな?」 『crescendoのボーカルですね! うちの事務所の子達です 真野がスカウトして来たんですよ その子達がどうかしました?』 「水谷瀬名って奴と話がしてぇんだけど?」 『………今……事務所にいます デビュー作の打ち合わせに来てます』 「話できるか?」 『はい!可能です で、俺は何処へ向かえば宜しいのですか?』 「飛鳥井に来てくれ!」 『では、直ぐに行きます!』 神野は電話を切った 紀里は不安そうな瞳で康太を見ていた 「チビ、心配するな…… オレはお前を幸せにする義務がある オレの目で見て安心な奴にしかチビは渡せねぇ! オレは見極める義務がある! それがオレに託したお前の両親の願いだ!」 「………コタ君……怖いよ……」 「怖がるな……その瞳でちゃんと見極めろ!」 紀里は頷いた 「チビは本当に昔から……甘え下手だな もっと甘えろよ!」 「甘えてるよコタ君…… 不安だったからコタ君に相談したんじゃないか……」 「だったらオレが見極める義務があるよな?チビ」 「うん……コタ君が見てダメだったら諦めるよ……」 「馬鹿……そこは何とかしろ……だろ?」 「………コタ君……」 紀里は泣きそうな顔をしていた 榊原は紀里の頭を撫でた 「康太に任せておけば大丈夫です! そんな顔しなくても……大丈夫ですからね」 「………伴侶さん……」 「伊織で良いですよ?」 「なら伊織君で……」 榊原は笑った 一生がリビングに顔を出した 「神野が来てる おめぇが呼んだんだって?」 「おう!此処に呼んでくれ!」 「………俺らは同席しねぇ方が良いか?」 「構わねぇぜ! オレが殴りそうになったら止めろよ!」 康太はそう言い笑った 「………おめぇは……んとにお節介焼きだな」 一生は笑った 「それがオレだかんな!」 康太が笑うと一生はリビングを出て行った 「伊織、チビを寝室に連れて行ってくれ! で、話が始まったら……ドアを開けて聞かせてくれ」 「解りました!紀里、行きますよ」 榊原は紀里を連れて寝室に向かった それと入れ違えに神野が水谷瀬名を連れてやって来た 神野はソファーに座ると 「水谷瀬名を連れて来ました!」と言った 水谷瀬名は立ち上がって康太に挨拶した 「水谷瀬名です!宜しくお願いします」 礼儀正しく挨拶した 派手な金髪のかなりイケメンな顔は、大学のキャンパスを賑わせていた 顔なら互いに知っていた が………話した事は一度もなかった 「飛鳥井康太だ!」 「俺に聞きたい事があるとか?」 水谷は単刀直入に問い掛けた 「八雲紀里の事だ」 意外な事だったから……… 水谷の顔から……人当たりの良い装った仮面が剥がれた 「………キリ……? 彼がどうかしました?」 「付き合ってるのか?」 「…………付き合ってはいません」 「この先付き合う気があるのか?」 「キリが……受け入れてくれる気があるのなら………」 「おめぇは芸能界で生きて行くんだろ? なら………同性の恋人は……スキャンダルじゃねぇのか?」 「………貴方の真意は……何処にあるのですか?」 康太の質問には答えずに水谷は真意を問うた 「遊びなら……手を出すなと言ってる チビは遊びで付き合える程に慣れてねぇんだよ!」 康太も単刀直入に返した 「………遊びで男は口説きません」 「なら本気だと言うのか?」 「はい!」 「お前は……デビューすんだろ? そしたら……世界は変わるぜ? 今まで振り向きもしなかった奴らも振り向くぜ?」 「そんなのは要らない! 世界が変わろうとも…… 俺はキリが欲しい キリを手に入れたなら傷付けない様に護る! あんなに綺麗な……穢れなき魂を持つ子には逢ったことがない キリの傍にいられるだけで…… 泣きたくなる程に……幸せだって感じる キリの纏う優しい空気が好きだ…… キリが手に入るなら…… 俺は……総てを捨ててもいい」 「デビュー出来なくても良いと言うのか?」 水谷は真摯な瞳で康太を射抜いて「はい!」と答えた 「俺は歌を歌って来たから…… デビューと言うチャンスをモノにしたい だが……デビューした事によって…… 総てをなくすなら…… そのデビューは俺にとっては不本意だと言う事なので……長くは続かない ファンの人も……不本意な所に立ってる奴の歌なんて魅力も感じなくなる…… 俺は総てにおいて…… 責任を持てない事はしない 命に代えてもキリを幸せにしたいと想ったから……口説いた キリに笑っていて欲しい 悲しそうに笑う顔を幸せ一杯にしたい 何時も傍にいてやりたくて仕方がない…… デビューしたら…… 何時も傍にはいられないかも知れない…… でも時間が許す限りキリの傍にいてやるつもりです この先も……来年も再来年も……十年後も……二十年後も……ずっと……ずっと…… 傍にいてやりたい…… 一緒にいて欲しい こんな事……社長の前で言えば…… デビューは出来なくなるかも知れない…… それでも俺は嘘で自分を塗り固めたくないから………」 水谷は苦しそうに……そう言った 「チビ、良かったな 愛されてるじゃん!ちゃんと! 何が気まぐれだよ? お前ちゃんと水谷の話を信じてやれよ!」 康太はそう言い笑った 「キリ……いるのですか?」 「いるぜ!」 「………キリ……なんと言ったんですか?」 「チビは男同士のセックスってどうやるんだ?って聞いて来たんだよ!」 水谷は唖然とした瞳を康太に向けた 「………キリ……そんな事を貴方に聞いたのですか……」 「『僕は本気……でも相手は面白半分かも……』なんて言ってるんだからな…… お節介焼くのも当然だと想わねぇか?」 面白半分…… お節介焼くのも当然だと想った 「……俺……キリに信用ないんですね」 「……と言うか……チビは人としての感情も喜びも何一つ感じずに育ったからな…… アイツをアメリカのシンクタンクから呼び出したのは俺なんだよ…… アイツの両親に託されたからな…… オレはチビを幸せにする義務があんだよ だから不意打ちで悪かったが………試させて貰った」 「俺は……貴方のお眼鏡にかないましたか?」 「視えたからな……」 「………え?……」 「チビがお前の横で幸せそうに笑ってる姿が視えた お前のこの先の人生はキリと共に在る 伊織、チビを連れて来てくれ」 榊原は寝室から紀里を連れて来た 紀里を水谷の横に座らせると、榊原は康太の横に座った 康太が榊原を見ると、榊原は康太を膝の上に乗せた 康太は榊原の首に腕を回して甘えた 水谷は紀里を見た 「………遊びだと想ったの?」 「………人気者の君が……僕に興味を持つ方がおかしい……」 紀里は俯いた 康太は神野に「神野、チビの前髪上げてろよ 一生、ピンで止めてやれ!」 「あいよ!」 一生はポケットからピンを取り出すとペシッと前髪を止めた 一生は子供達の前髪が邪魔な時にピンで止めるから常にピンをポケットに入れてるのを知っていたのだ……… 水谷は可愛い顔した紀里を愛しそうに見つめていた 「チビ、慎一が髪を切ってくれる 前髪を隠すのは禁止な!」 「……え……コタ君……ひどい……」 「水谷、可愛いだろ?」 康太は水谷にふった 水谷は即答で「はい!」と答えた 「キリは総てが透き通って綺麗です 魂も…キリの持つオーラも総て綺麗です」 「文句がつけられねぇな…… チビ……そいつなら処女を捧げても良いぞ!」 「コタ君……恥ずかしいってば……」 「ところで水谷、男同士のセックス知ってる?」 男が好きそうには見えなかった 水谷は真っ赤な顔をした 「………その……この容姿に皆期待するみたいですが……俺は童貞です……すみません…… 愛がないセックスが嫌で……犯る気になれなかった……」 榊原は康太を見た 康太も榊原を見た 「………知識がないと流血……ですよ?」 「………伊織……オレらのエッチのDVD…… 水谷に持たせとけ……」 「………それが良いですね…… 康太、少し待ってて下さい」 榊原は康太の唇に口吻けを落とすと、康太を膝の上から下ろした 寝室へと消えた そしてDVDを手にすると水谷に渡した 「………これは?」 榊原は康太を抱き上げ膝の上に再び乗せて 「僕と康太とのセックスしてる映像です そのDVDは康太のお尻の穴が溶けきるまで焦らした時のですから、参考になると想います 男同士のセックスで必需品はローションです! 舐めて解すなら最低は1時間は舐めまくる覚悟が必要です それが出来ないのならローションで柔らかくなるまで指を挿れて慣らす 一生、サイドボードの引き出しに新品のローションがあるので、差し上げて下さい」 一生は言われて嫌な顔をした でもサイドボードの引き出しからローションを出して水谷に渡した 神野は爆笑していた 一生は水谷に「おめぇさ……神野に聞けよ…」とボヤいた 水谷は「………え???」と焦った 「神野と小鳥遊は恋人同士だからな 事務所に入った奴がゲイでも許してくれるさ!なぁ神野?」 と一生は神野にふった 「………一生……バラすなよ……」 と神野はばつの悪い顔をした 「笙と隼人にバラされる前に言っといた方が良いぜ?」 「……まぁ……そうですがね…… 頼斗の件もあるからな……」 「頼斗、笙と隼人がバラしたんだよな?」 「ええ……んとに」 神野は腹を立てていた 隼人は笑って 「神野、大丈夫なのだ ノンケな奴には言ってないのだ! ノンケには刺激が強すぎるのだ」 と悪びれずに言ってのけた 康太は水谷に 「チビを泣かすなよ」と言った 水谷は康太の瞳を受けて 「泣かせません! 幸せにします!」と誓った 「なら、おめぇに託すな! やっと、おめぇを嫁に出せるな」 康太は笑って紀里を水谷に渡した 紀里は「コタ君……展開早すぎて……頭が着いてゆかないよぉ~」と泣き言いった 「水谷、連れて行って決めてこい!」 「はい!」 水谷は立ち上がると紀里の腕を掴んだ そして起ち上がらせると、引き摺って行った 嫁に出す親の気分を味わって……康太は榊原の胸に顔を埋めた 榊原は「本気で良かったですね」と言い康太を撫でた 一生は神野に「デビュー潰す事はねぇよな?」と問い掛けた 榊原はキランッ瞳を光らせて 「そんな事をしたら康太が怒りまくりますよ?」 と釘を刺した 神野は観念して「反対はしませんよ」と答えた 「俺は寧ろ有難いと思ってます 最初、水谷を見た時……受け付けないと想った…… 軽薄な容姿に……コイツ等の歌も薄っぺらい歌なんだと想った 聞いたらかなりの実力者です 他の事務所も目をつけてスカウトしてたみたいです 何故うちにしたのかは解りませんが…… うちに来てくれた」 神野が言うと隼人が 「水谷を誘ったのはオレ様なのだ ゼミで一緒になった時に、オレ様の事務所に来るか?と誘ったのだ そしたら来ると言うから真野に言ったのだ 真野は歌を聴きにライブに連れて行った時に惚れまくったみたいだがな」 と言い、神野が知らない裏事情を話した 神野は驚き…… 「………隼人が……珍しいな……」と意外な展開に喜んだ 「オレ様も最初は水谷が嫌いだったのだ 軽薄な容姿が受け付けなかった オレ様は昔……あんな奴等としか連まなかったからな……… 中身のない……奴なのかと想っていた そしたら、ちゃんと自分のポリシー持っているし、良い奴なのだ 地に足が着いてる奴だからな、事務所を紹介した そのうちアイツらは世界を賑わすらしいのだ」 「………誰が言ってたんだそれ?」 「真野!」 「真野か……真野は頼斗と水谷で手一杯だしな……事務所は人手不足だ……」 「ならチビ、バイトに入れろよ」 「………貴方の駒なのでは?」 「それは変わらないし、やれねぇが…… シンクタンクに入ってた程だからな頭脳明晰なんだよ 会計処理とかスケジュール管理なら片手間でやるだろ?チビなら」 「ではスカウトします!」 「結婚祝いにマンション贈らねぇとな 晟雅、半分だせよ!オレも半分だすからよぉ!」 康太が言うと隼人も 「オレ様も半分出すのだ!」と楽しそうに答えた 「うし!三等分でマンション買うか…… オレの持ってる物件を志津子か悟を動かすか……」 「では事務所の決済で三分の一ご用意します」 「晟雅、八雲紀里は……お前も知ってる八雲夫妻の養子だ……」 父…神野譲二の恩師という八雲夫妻は何かにつけて神野を気遣ってくれた 「………あぁ……八雲夫妻が里子に貰い受けた子………ですか?」 表向きは病死となっているが……… 惨殺されて……屋敷に火を放ち焼き払った…… 飛鳥井康太の駒だと突き止めた……輩に討ち払われた…… 飛鳥井建設を護る為に…… 多くの犠牲を出した 水野千秋の両親もその一人だ…… 八雲夫妻は情報の操作を頼んでいた その情報の抹消のために…… 家ごと討ち払われた… 仇は取ったが……心優しい八雲夫妻は…… 従兄弟の子供を里子に貰い受け育てていた 何時も心残りは紀里の事だと…… 康太に頼んでいた 八雲夫妻から託された義務がある その言葉は……康太の贖罪だったのだ…… 康太は永久に表には出さぬと決めた駒でもある……紀里の幸せを祈った もう……無くさせたくない…… 幸せになれ…… 誰よりも幸せなれ… 康太は祈った 榊原は康太を強く抱き締めた 後日談 (初夜の後…) 隼人は事務所に還ると、水谷瀬名を見付け、声を掛けた 「瀬名、その後どうしたのか聞いてないのだ 康太も心配していたのだ」 隼人が声を掛けると水谷は真っ赤な顔をした 「……隼人……家にキリを連れて行ってDVDを見たんだ…… そしたら……すげぇのな… 初心者の俺に……なんちゅうもんを見せるんだよ……と想った で、刺激されて……DVDの通りに……犯っちまった……」 「………成功したのか? それは良かったのだ」 「…………良くない……」 「………え?何故なのだ?」 「だから初心者には刺激が強すぎたんだよ…… 止まれなくて……力の限りキリを犯っちまった……気絶しても止まれなかった……」 「愛が溢れてるのだ……仕方がないのだ 止まれない程に求められた方が…… 紀里も嬉しいと想うぞ」 「………そうかな?…… 康太さんの所には挨拶にいかねば…… と想いつつ飛鳥井の家の敷居は高かった…」 「ならオレ様と来れば良いのだ!」 「………隼人……お前って本当に良い奴だな 事務所も、お前の所を紹介して貰って本当に良かったと想っている 契約したら事務所の戦略で売り出されるケース多いって言うからな…… でも俺らは恵まれている 歌いたいモノを歌わさせて貰っている」 「康太が何時も言っている 仕事も運の一つ お前の持ってる運が良かっただけだ 見かけと同じじゃないからな……」 「………この髪……直した方が良いかな?」 「軽薄な莫迦にしか見えないのは確かだ だがお前はそんな容姿を超越する人徳ももっているのだ だからやりたい事をすれば良いとオレ様は想う 自分を曲げずやりたいモノになれば良いのだ なりたい自分になれば良いのだ」 「………隼人……やっぱりお前は……凄いな」 「これは康太の受け売りなのだ オレ様は……人を人と想わずに遊んで捨ててを繰り返していたのだ それを解らせてくれたのが飛鳥井康太なのだ 康太はオレ様に人生を教えてくれたのだ オレ様は康太の長男だから…… 曲がれないのだ」 「そっか!あの人が親じゃ曲がれねぇな」 「そうなのだ……蹴り上げられるのだ……」 「隼人、仕方がないさ 母親というのは最強のラスボスなんだから! 勝とうと想う方が間違いなんだよ!」 「その台詞……実感出すぎなのだ お前の母さん……厳しいのか?」 「めちゃくそ厳しいな………今は……いねぇけどな……」 「いない?………亡くなったのか?」 「違う……子育てが終わったから自分の世界に還ったんだよ 俺の母親はハリウッドで映画とかの衣装を作っていたんだ 結婚して子育てで離れたが、子供が成人したら自分の世界に還って行ったんだよ」 「それって素敵なのだ オレ様の母親はずっと女優だったのだ……」 「………一条小百合だっけ?」 「そうなのだ!産みの母親が一条小百合で、育ての母親が飛鳥井康太なのだ」 「それは最強に凄いと俺は想うぞ」 水谷は笑った 隼人は「今度、コンサートに康太と見に行く!」と告げた 「来てくれるの? なら関係者の席取っておくよ」 「関係者席は要らないのだ チケットはオレ様が真野に頼んで早めに取って貰う約束なのだ ちゃんとチケット取って見るのだ」 「………ありがとう……隼人……」 「瀬名、飛鳥井に行くとするのだ」 隼人が言うと水谷は真っ赤な顔をして頷いた 二人して事務所を後にしようとすると、笙が事務所に還って来た所だった 笙は「隼人」と名前を呼んだ 「笙、打ち合わせか?」 「違う!最近隼人に逢ってないから事務所にいるって聞いたから来た 元気だった?隼人」 笙は隼人を抱き締めグリグリ頭を撫でた 隼人は水谷に 「笙は伊織の兄さんなのだ」と教えた 「え!!兄弟なんですか?」 と水谷は驚いていた 笙は「隼人、紹介してくれないかな?」と隼人に問い掛けた 「笙、彼はcrescendoと言うバンドのボーカルしてる水谷瀬名だ 大学が同じなのだ 事務所を紹介したのはオレ様なのだ」 「隼人!crescendoのボーカルなの!」 笙は喜んで水谷の手を握った 「榊原 笙です! 役者をやってます crescendoは僕の奥さんが好きなバンドで家では君の歌声が流れてます!」 「………ありがとうございます! そんな風に言われて光栄です!」 笙は隼人に「………この子……見かけ倒しじゃないね」と笑って問い掛けた 「康太が認めた男なのだ」 「そうなんだ! こんな風貌だとさ、中身もそうなのかな?って想うけど…… この子は違うね……もっとさ軽薄じゃない髪にすると良いよ 君はそれで損してる部分多そうだからね 隼人と僕の行ってる美容室に行くかい? 人受けするのにしてくれると想うよ?」 隼人も「そうなのだ……でもごり押しは……出来ないのだ……」と笙に訴えた 笙は「少し時間良い?」と水谷に問い掛けた 「………えっと……隼人と飛鳥井に行くだけですので……」 「なら良いね! 隼人、美容室に電話入れといて!」 「解ったのだ」 隼人は事務所の電話で美容室に電話を入れた 「直ぐに来いと言ってるのだ」 「そう!なら行くよ! 神野、勝手にいじくり回すのNG?」 「本人の自由って事で…… 嫌がる事は絶対にするなよ!」 神野は釘を刺した 笙は笑って「了解」と言い事務所を後にした 笙の車に乗り込み美容室に向かう 美容室に到着すると笙と隼人の担当の美容師が出迎えてくれた 笙は美容師を見ると 「この子の髪を軽薄じゃない様にして欲しいんだけど? このままだと損してる部分が多すぎるからね!」と説明した 美容師は笑顔で 「crescendoのボーカルの子でしょう? この子をテレビで見て……いじくり回したい!と想っていたのよ! 何よ!この毛染めで痛みまくった髪! 髪の毛が毛染めで疲れ切ってるから、そこら辺の軽薄な感じになるのよ! 腕の見せ所ね! 笙、隼人!ありがとう! この美容師泣かせの髪を何とかしたかったのよ! 歌は良いのよ! でもボーカルが軽薄過ぎるの! こんなチャンスないわ!」 美容師は燃えていた 椅子に座らされて「今後は私の処へ通って下さいね!」とオカマみたいに迫られて…… 水谷は恐怖を感じていた…… 怖い…… 逃げ出したい気分だった まな板の鯉って…… こんな気持ちなんだ…… 水谷瀬名……二十歳を超えて……… 鯉の気持ちが解った……… 美容師の手により軽薄さが抜けた水谷は…… イケメン……としか言えなくなった…… 笙はその姿を見て…… 「………モテまくりだろうな……」と呟いた 「凄いのだ!」 隼人はあまりの変わりように興奮していた 水谷もこんなに変わるとは想っていなかった 隼人は写メを撮り神野に送った 写メを貰った神野は隼人に電話を掛けて来て 『隼人、水谷にジャケ写撮り直しと言っておいてくれ!』と伝言を頼んだ 電話を切ると隼人は 「瀬名、ジャケ写撮り直しなのだ 神野が言っていたのだ」と伝えた 笙は「やっぱしな!」と納得した 隼人はそんな事は知らないとばかりに 「飛鳥井に逝くのだ!」と告げた 美容師は隼人に 「康太と伊織に店に来るように言っておいてよ! そろそろ伸びる頃でしょう?」と嬉しそうに伝言を頼んだ 「伝えておくのだ! なら行くのだ!」 隼人はそう言いカードを美容師に渡した 美容師はカードを持って来て精算するとカードを渡した 美容室を後にすると飛鳥井の家に向かった 鍵を開けて家に入ると隼人は応接間のドアを開けた 康太がソファーに座ってると隼人は康太の傍に飛んでいき抱き着いた 「ただいま、は?隼人」 康太は笑って隼人を抱きしめた 「ただいまなのだ……」 「隼人、お客様だ!ご挨拶しろ!」 康太の横には綺麗な女性が座っていた 隼人は「初めまして!一条隼人です」と挨拶した 綺麗な女性は美しく笑って 「水谷世里奈です!宜しくね」と伝えた 笙は世里奈の傍に行くと 「伊織の兄の笙です! この子はうちの事務所からデビューした水谷瀬名………あれ?水谷一緒ですね」 笙は苗字が一緒なのに言った後に気付いた 水谷はばつの悪い顔をした 康太は笙に 「世里奈さんはハリウッド映画で衣装を手掛けてるんだ 伊織の脚本で映画を撮る時に衣装の担当をして貰えないかオファーしたら快諾して貰えたんだ だからどんな映画になるか資料を渡す為に家に着て貰った」 と紹介した 世里奈は笑って 「瀬名、久しぶりじゃない! この子は私の三男になる」 と息子である事を認めた 笙は「母さん使えばネームバリューは凄いなのに……」と呟いた 水谷は「母さんが凄くても俺の歌を聴いて貰えない!」と現実は甘くないと伝えた 笙は爆笑した 康太は水谷に 「その後どうしたよ? ちゃんと出来たのかよ?」と問い掛けた 水谷は真っ赤な顔をして……「はい!」と答えた 「泣かすなよ! 託された子だからな オレには責任があるんだよ!」 「幸せにします! 喧嘩して泣かす事はあるかも知れない…… でもその都度、解り合いたいし…… もっと強く結び付きたいと想っています ですので、絶対に離しません!」 水谷は康太に宣誓した 康太は安心したみたいに笑った 優しい笑顔だった 世里奈は康太の顔を見て、我が子が世話を焼かれたのだと想った 「瀬名、大切な子が出来たの?」 世里奈は我が子に問い掛けた 水谷は覚悟を決めた瞳を母に向けた 「はい!死ぬまで離したくない存在が出来ました」 「そう。貴方には恋愛とか人の想いが欠如していたから……良かったじゃない! いい顔する様になったわね そうしてみると貴方、父さんに似てるわ」 「………母さん……すみません!」 水谷は母に謝った 「何故謝るの?」 「俺が……永遠を誓った相手は……… 男です……なので……」 「貴方はその子を選んだのでしょ?」 「はい!」 「なら性別は必要じゃない 共に生きて逝けるか……逝けないか……でしょ? 貴方はその子と共に生きて逝きたいと想った なら私は祝福するわよ? 我が子が選んだ子ですもの! 家族も同然だわ! 頼朝も同じ事を言うと想うわ」 「………親父は……頑固だから……」 「あら?似たもの同士じゃない!」 世里奈は笑った 笙は「あの頼朝……って?」と質問した 「私の夫で、この子達の父親! 俳優の笹原高志……の本名は水谷頼朝なのよ!」 とネタバらしした 笙は今の共演者の笹原高志の本名を知って……唖然となった 「水谷……お前……笹原高志の息子か……」 「………親父は親父です」 「そりゃそうだ!」 笙は爆笑した 「僕の父親は榊 清四郎、母親は榊原真矢ですけどね、そんなの関係ないよね!」 二世タレントと言われ親と比べられる辛さなら誰より知ってるよ……… と、暗に言われた気がした 世里奈は「……あぁ、真矢の子供なんですね……」と納得した 笙の顔は母親に似ていたから…… 笙は「康太の横に座っているのが僕の弟の伊織です!」と紹介した 世里奈は「伊織は笙の弟でしたね」と言葉にした 世里奈は康太に 「この子が選んだ子は……どんな子なのですか?」と問い掛けた 「八雲夫妻の里子にした子だ」 「…………あの育児放棄された子?」 「そうだ……八雲夫妻が引き取り育てていた……」 「そう……何かの縁なのですね……」 「オレもそう思った 瀬名を視た時、お前が見えたからな…… 縁なんだと想った……」 「………なら……幸せにならなきゃ……ね」 「あぁ……チビを幸せにしてやる義務があるからな……オレには……」 世里奈は康太の手を優しく握った 「………康太の罪ではないのです…… 贖罪の日々など不要だと何時も言ってませんか?」 「………世里奈……」 「水野の子も……高坂の子も……八雲の子も…… 貴方が苦しむ必要などないと……言いますよ」 「……千秋とチビは嫁に出した 後は…… 海王と陸王が身の立つ様にしてやねぇとな……」 康太は呟いた 「高坂の子は……双子でしたね」 「無理心中……と言う事で夫婦は死んだ 酒を飲まされ無理矢理薬を流し込まされて殺されたのは明白だった…… 海王と陸王は死んだ母親のお腹から出された子だ………」 「………大丈夫……貴方がいるなら………そんなことなど乗り越えて逝けます……」 世里奈は康太を優しく抱き締めた 二人を見てると…… かなり古くからの付き合いだと解る…… 康太の瞳は憎しみに燃えていた 「……高坂を殺った奴は………今ものうのうと生きてやがる!」 それが悔しいと…… 康太は奥歯を噛み締めた 「繁雄がトドメを刺してくれます 我等は援護射撃を致します……」 「…………世里奈……お前はもう……出なくて良い……それよりも伴侶が書き上げる脚本の映画を成功させてくれ」 「解っております! 絶対に!何者にも介入などさせません! それは笹原も腹を決めております!」 「………世里奈……」 「それよりも康太、私は逢わせて貰えないのですか?」 「お!逢いたいか?」 「もちろん!」 「伊織、慎一に頼んでチビを連れて来て貰ってくれ」 「解りました」 榊原は立ち上がった 世里奈は息子の顔を見た 「随分……イケメンにして貰ったのですね あの軽薄な感じよりは宜しいです」 「………母さん……何時日本に帰られたのですか?」 「康太が呼べば日本の裏側にいても駆け付けます! あ!当分日本にいます! 高志さんと子作り出来そうな勢いで頑張らなきゃ!」 世里奈は夫にべた惚れだった 子供達が引くほどに…… 「………その年で子供を産むというのですか?」 「そしたらお前達にあげるわ! 真矢の様に……ね!」 世里奈は菩薩のように優しい笑みを零した 慎一に連れられて紀里が入って来ると、世里奈は紀里に抱き着いた 「………あの……あれ?……どうしよう……」 紀里は突然過ぎて……どうして良いか解らないでいた 水谷は母親から紀里を引き剝がすと…… 紀里を抱きしめた 「………母さん……突然は止めてやってくれ…… キリがパニックになるから……」 「だってこんなに可愛いんだもん! 良いじゃない!ケチ!」 ケチ………あまりの言い分に水谷は……絶句した 世里奈は「私ね、康太とお友達で瀬名の母親の世里奈ね!ヨロシク!」そう言い手を差し出した 紀里はその手を取り 「……あの……八雲紀里です」 「君のご両親の八雲夫妻とは仲良くさせて貰っていたわ 夫妻が何時も気に懸けていたのは君なんだね!逢えて良かった」 紀里は何も言わず世里奈を見つめた 「瀬名に幸せにして貰うのよ!」 「………良いんですか?」 「良いのよ……誰よりも幸せになりなさい それが……貴方を引き取った八雲夫妻の願いだから………」 紀里はその言葉を胸に抱いた 康太が教えてくれた里親の愛…… 里親の愛が沢山の人を手繰り寄せて…… 愛を教えてくれた 「………僕……幸せです」 「もっと……もっと……幸せになるのよ?」 紀里は頷いた 康太は紀里に 「ちゃんと出来たのかよ?」と問い掛けた 紀里は真っ赤な顔になって頷いた 「……コタ君……あれは……刺激強すぎだってば……」 「流血……したのかよ?」 「流血なんてしないよぉ…… 止まれなくて……凄い事になった……」 「なら良いじゃねぇか 止まれねぇ位夢中になって抱いて貰うなら良い…… セーブかけられて抱かれるより良いに決まってるじゃん」 「………そうだけど……翌朝……起きられなかった」 「慣れたら起きれる!」 「そうなの?」 「………起きれなくても……愛だろ?」 「そうなんだけどね……体躯が持たないよ…」 康太は爆笑した 「愛されて疲れるなら幸せだろ? 見向きもされねぇより良いだろ?」 「うん……」 「ならもっと夢中にさせろ!」 「………させ方解らないよぉ~」 「お前がニコッと笑えば良いんだよ」 「そーなの?」 「チビは誰よりも可愛いからな、それで大丈夫だ!」 「なら笑ってるね」 紀里はニコッと笑って水谷を見上げた 水谷は真っ赤な顔になり…… 「……キリ…それは今しちゃダメ……」と止めた 「……そーなの?難しいね」 水谷は紀里の耳元で「勃っちゃうでしょ?」と言った 紀里は真っ赤な顔になった そんな二人を康太と世里奈は見ていた 世里奈は康太を見た そして頷いた 罪深き………贖罪は終わらない…… こんな程度じゃ終われない…… 康太は胸に刻んでいた 仇を…… まだ討ってない 総てが終わり 総てが幸せになってない まだ終われない 康太は果てを見ていた 榊原は優しく康太を抱き締めた

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