123 / 163
第123話 桃太郎の日常
ボク、桃太郎
ボクは兵藤さんちという所に住むシュナウザーと言う犬なんだ
母さん犬はタカシと言うんだ
♀なのにタカシ……
内緒だけど……母さんはこの名前気に入らないみたいなんだ
内緒だよ!
コタローと言う猫とコータと言う犬がいて
コータはコオの母さん犬なんだ
何かね貴史の猫と犬はコータとかコタローとか似た名前が多いんだ
コータと言う犬の母さん犬はコウタと言うんだって
美緒ちゃんが玲香ちゃんに言ってた
「コータの母さんコウタと言うのだ
貴史が飼ってて死んだ時は号泣しておった」
「………我は言葉もないわ」
玲香ちゃんは苦笑していたんだ
何でだろうね?
そんなボクは何時も母さん犬と一緒にお散歩に連れて行って貰うんだ
すると毎日コオとイオリと逢うんだ
ボクにとったら楽しい時間なんだ
でもボクは知ってるんだ
美緒ちゃんはイオリを兵藤の家に置いておきたかった事を………
イオリは何かの犬のコンテストでチャンピオンをとったらしくて……
イオリがコオに惚れなきゃ………
ボクが飛鳥井に行く筈だった……って…
美緒ちゃんは今も……
イオリが欲しそう
ボクは要らないのかな?
そう考えるとね……少し寂しくなるの
でもボクは……何処へも逝けないから……
そんな時は丸くなるの
するとコータが舐めてくれる
コータはコオに似てて優しいんだ
もうおばあちゃん犬だから散歩もゆっくりしか出来ないらしくて一緒に散歩は出来ないけどね……
『桃太郎、元気ないね』
コータは何時も聞いてくれる
『コータ、ボクは元気だけが取り柄だもん
元気だよ!』
『桃太郎は皆を楽しくさせてるよ
だから元気じゃないと心配……』
『コータ……』
『桃太郎は良い子だね』
そう言って舐めてくれるのは決まってコータなの
時々猫のコタローが
『元気出せよ桃太郎』と声をかけてくれる
『コタローちゃん』
『ほら、横で寝なさい』
コタローは何時も顔を埋めさせてくれるんだ
母さん犬のタカシも優しいよ
時々怖いけどね……
『桃太郎、我の隠して置いた骨は?』
『知らないよ……』
『知らない筈はない!』
そう言い追ってくる顔は……
怖すぎだよ……
コオがチビっちゃったもん
でも兵藤の家は平和だ
時々、貴史の部屋に行く
爪でカリカリやるとドアを開けてくれる
「桃太郎、どうしたよ?」
ペロペロ飛び掛かって舐めると貴史は部屋に入れてくれるんだ
部屋の中には………
コオとイオリの飼い主康太の写真が……あるんだ
だから時々、貴史と散歩に行く時は……
飼い主康太と話してる時に飛び掛かるんだ
すると貴史は飼い主康太に抱き付くだろ?
ボク、良いことしちゃってる!
貴史は「このバカ犬!」って怒るけど……
あれは照れ隠しだってボクは知ってるんだ
素直じゃないよね
キュ~ンと悲しい顔をすると貴史は優しく頭を撫でてくれるんだ
優しいよ貴史は……
でも飼い主康太には……ダーリンいるもんな……
貴史が可哀相だから……
明日もボクは貴史に飛び掛かるんだ
そしてコオに隠して置いた骨をあげるんだ
ワン!
と吼えると飼い主康太は
「元気だな桃は」と優しく撫でてくれた
『飼い主康太……ボクは……何時か貰われていくのかな?
ボクは……コオやイオリといたいんだ……
嫌われてても……いたいんだ』
「誰も嫌っちゃいねぇぞ桃?
ずっといて良いに決まってるだろ?
桃はずっとコオとイオリと散歩してろ!」
『………良いの?』
桃太郎は涙と鼻水でデロデロになった
榊原が涙と鼻を拭いてやるとお礼に榊原の顔をぺろぺろ舐めた
「桃、君は元気じゃないと心配になります
一生みたいな存在ですね君は……」
榊原はそう言い桃太郎を撫でた
桃太郎は『一生』と言う名を胸に刻んだ
そして飛鳥井に遊びに行った日に……
一生に飛び掛かって舐め回した
「あんだよ?この犬……」
驚く一生に隠し持っていた骨をあげた
「………え?……俺にか?」
桃太郎は元気に『ワン!』と吠えた
一生はお返しに……
松阪牛を桃太郎に送った
美緒は気を利かして一生に松阪牛のすき焼きを差し入れた
その目の前で……桃太郎は松阪牛を食べていた
「………あんだよ?これは……」
一生が呟くと桃太郎は『ワン!』と吠えた
似てるのがいて嬉しい、桃太郎だった
一生の部屋には骨が大切に置いてあった
桃太郎に貰った骨だった
その横にビー玉が輝いていた
ともだちにシェアしよう!