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第124話 綺麗の想い
みゃきゃい って所から還ってご飯を食べ終わると………
待ち構えていたかのように……
「お迎え」が来た
「お迎え」が来ると家にいられないのは、子ども達全員が知っていた
お迎えの車が来て……その車に乗せられた
ばぁちゃとじぃちゃは……見送りしてくれた
また……離れ離れで暮らさなきゃいけないんだと想った
流生は翔を見た
翔は笑って流生を抱き締め
「らいじょうぶ!おむきゃえくるにょ!」
翔はそう言った
音弥も翔に抱き着いた
太陽も大空も翔を抱き締めた
おにいちゃんの翔がいてくれるなら……
怖くはなかった
不安もなくなった
翔は兄弟の前では笑っていた
滅多と泣かない翔を見て……
綺麗は飛鳥井瑛太を見ているようだった
瑛太は泣かない……
辛い事があっても、悲しい事があっても……
絶対に泣かない
凜として立ち向かう姿しか見た事がなかった
親戚として時々見る飛鳥井瑛太は、まるでロボットかコンピュータのような奴だった
翔を見てると……
自分のことは後回しの瑛太を思い出す
今も………
弟のためだけに生きてる男を想う
綺麗の初恋の人だった……
東真の父親は……何処か瑛太に似ていた……
そんな淡い想いを思い出させた
綺麗は翔の頭を撫でた
「そんなに背負うでない……」
そう言うと翔が綺麗を見上げた
「かけゆ おにぃたん」
だから兄弟を護らなきゃ……
そう言う想いが伝わって来た
「兄さんでも弱音吐いて良いのだ
兄さんが強くなきゃダメだって誰が決めた?」
「………かけゆ……にゃいたら……みんにゃにゃく……」
「泣けばいい
子供は泣くのが商売であろうて!」
「………らめ!かけゆ いちゅびゃんおおちい!」
「大きかろうが小さかろうが、泣きたい時には泣け!
泣くのを我慢なんかすんじゃねぇ!
オムツしてるやつは泣けば良いんだよ!」
「かけゆ おむちゅ にゃいにゃい!」
翔はオムツが取れた事を伝えた
「お!翔、オムツ取れたのか!
偉いやん!でも頑張るな………
お前見てると……無茶して無理して我慢してる瑛太を想いだす……」
「えいちゃ?かけゆ えいちゃちゅきにょ?」
「そうか!翔は瑛太が好きか……」
「かけゆ ばぁちゃ じぃちゃ ばぁたん じぃたん ゆーちゃ らいちゅき」
「そうか……お前たちは愛されておるな」
「れも、いちびゃん かぁちゃ とぅちゃ!らいちゅき!」
翔はニコニコして言った
「かぁちゃは優しいか?」
綺麗が言うと翔は……笑顔をなくした
ん??と想ってると…
「かぁちゃ……おに……」
「………康太は厳しいのか?」
綺麗が聞くと翔は頷いた
「翔、康太はお前よりも辛い修行をして来たんだぜ?
泣いても叫んでも……家族も周りも手を出すな!と源右衛門が言ったから……
抱き締めてやる事も出来なかった……」
「ちってる!みんにゃ……ちょういう!」
「そうか……でも誰よりもお前たちを愛しているのだ………
それだけは覚えておくのだぞ?」
「わかっちぇる!かけゆ ちょれ、わちゅれにゃい!」
「そうか……翔は次代の真贋だものな……」
この子の背負うモノは大きい……
飛鳥井家真贋……
この世も動かせる力を手に入れる
曲がらぬように育てねばならぬ……
力を過信せず利用されずに育てねば……
康太の背負うモノは……
もっと重い……
この子たちや飛鳥井の未来……
果てはこの世の未来……
寸分違わず配置する為に……
康太……
康太……
お前の背負うモノを何一つ……
手助けはしてやれぬな……
綺麗は康太へと思いを馳せた
その時………
翔が唇の端を吊り上げて皮肉に嗤った
まるで康太のように……
綺麗は唖然として……翔を見た
「翔……」
『綺麗、オレは恵まれてると想うぜ……
お前みたいに手助けをしてくれる奴等に支えられて明日を築いている
綺麗 今幸せか?』
「………康太……我は幸せだ……
研究も出来る……好きに生きさせて貰っておる……
あの家にいたら……今も……巫女として生きねばならぬ……外の世界を知らずに……
巫女として生涯終えたくはなかった……」
『幸せなら良い
誰よりも幸せになれ!綺麗』
「……康太……」
優しい風が綺麗を撫でて……消えた
目の前の翔は……元に戻っていた
「………康太……」
綺麗が呟くと翔が
「かぁちゃ きえちゃ!」と言った
やはり康太の気配を翔も感づいていたのだ……
綺麗は流生、音弥、太陽、大空……そして翔を抱き締めた
「お前たちは……この命を擲ったとしても護ってやる!」
綺麗は子ども達を抱き締めて呟いた
子ども達は綺麗の胸に顔を埋めた
音弥が「ちれー!らいちゅき!」と言ってくれた
太陽も「ちれー!ちなもらいちゅき!」と続き
大空も「きゃにゃも!ちれーらいちゅき!」と続いた
流生は「かぁちゃととぅちゃのちゅぎ らいちゅき!」と言った
綺麗は笑った
「そうか……嬉しいぞ……」
綺麗は泣き笑いした
こんなに嬉しい言葉はない
翔は綺麗のほっぺにチュッとして
ニコッと笑った
綺麗は言葉が少なく寡黙な翔が案外……たらしなのだと思った
・・
あの……瑛太の子供だからな………
そう思い笑っていた
子ども達との時間は優しい
綺麗を優しく包みこみ……癒やしていた
あの子とも……
こんな時間を送っておけば良かった……
綺麗はそう思った
産んで直ぐに天宮に渡してしまった子を思う
翔が「あかちゃ!うむっにょ!」と言いお腹をポンポンと叩いた
流生も「ポンポン おっちくにゃるにょ!」と続き
太陽がシャツを捲ると大空がシャツの中に顔を突っ込んだ
そして二人揃えて「「あかちゃ!」」と言った
流生がトドメを刺した
「ちれー うむゅの!」
「………我が産むのか?」
そう言うと5人が頷いた
「それもよいな……
我だけの子を産むのも悪くない」
綺麗は美しく笑った
「そちたら、かけゆ きゃわいぎゃる!」
「お!赤ちゃん産んだら翔が可愛がってくれるのか?」
「ちょー!」
「………なら産もうかな……
よし!赤ちゃんを産もう!」
綺麗は笑っていた
この子たちのように可愛い子なら欲しい
「それには……相手がいるな……」
「ちれー てんちゃいのたねにゃらたくちゃんいる!」
「お!翔、凄いやん」
「ちれー あかちゃ かけゆといきりゅ」
「………翔と共に生きるのか?」
「ちょう!」
「それもよいな……なら我は頑張るな!」
「かけゆ ぎゃんびゃる!」
「お前は頑張らずともよい……」
「かけゆ おにいたん」
「………お前は……本当に手抜きと言う言葉を知らぬな……
我の研究室に欲しい程の性格だな……」
「らめ!かけゆ ちんぎゃん」
「飛鳥井家次代の真贋であったな……」
「ちょう!」
何か………翔と話してると子供と話してる気がしないのは……
気のせいか?
いや……この融通の利かない性格のせいだろ?
綺麗は笑った
康太の子供は皆、子供離れしている
子供らしいかと想えば……
見透かされそうな瞳で見られてドキッとする
子供騙しな事には引っ掛からない
子供でいて……中身は……通常の大人以上の……
いや……下手な大人より秀でてる
飛鳥井康太が育てる子というのは……
こう言う事を言うのか……
綺麗は烈を抱き上げた
この子も……転生した子供だから……
並みの子じゃないのであろう……
そんな子を護っているのが飛鳥井翔
彼の背中には……
逃れられない運命が乗っかっている……
綺麗は心配だった
だけどそんな心配……
受付させぬ程に……
翔は強かった
「れちゅ 」
お兄さんの顔をしてる翔が……
曲がらず育ちますように……
綺麗は祈った
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