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第128話 京香は心配性
京香は体調を崩して入院していた
だが家の事が気になって……落ち着かなかった
見舞いに来る瑛太に
「我はもう帰りたい……
退院の手続きをして参れ!」と迫る程だった
「京香……」
「なんじゃ?」
「君の退院の手続きは康太がするそうです
なので私が手続きをしたら恨まれるので嫌です!」
「少し位恨まれよ!
愛する妻であろうて!」
「愛してますが……京香
……康太は怖いのです
多分君も私が入院してて退院を迫ったら同じ台詞言うと想いますよ?」
「………それを言われると……言い返せぬ……
卑怯だぞ?瑛太……」
「卑怯と言われてもね京香
君が無理するよりは良いと想います
日頃飛鳥井の為に生きてくれてる君ですが……少し位息抜きも必要だと日頃から想ってます」
「…………瑛太……悪いモノでも食べたのか?」
何時もより饒舌な瑛太に……
京香は照れ臭くなって茶化した
「京香、茶化さずに聞きなさい!」
「………はい!」
「君は私の妻だという自覚がなさ過ぎます」
「………我は瑛太の妻にしかならぬ
他の男のモノになるなら……我は死ぬ」
何という殺し文句……
瑛太は赤面した
珍しい事だった
「京香、共に……飛鳥井の行く末を見届けましょう!
それは君としか出来ぬ事です!
なので、日頃から無理をせず……
時には手抜きも必要だと言う事です!」
「………瑛太……嬉しい……」
京香は泣いた……
一目惚れしたのは京香だった
瑛太を見た日に一目惚れした
瑛太の妻になれた日
天にも昇る気分だった
穢れた自分を愛してくれた人……
瑛太は京香の涙を拭った
瑛太は京香に口吻けた
「君が退院したら……
もう一人位子供を作る勢いで頑張りますか?
今度は女の子が良いです………
琴音の……様な女の子を生んで下さい」
「………瑛太……琴音の事………
恨んでおるか?」
「………君を家から出したのは私です……
私は何故……あの時君を出したのか……
悔やんでます……
自分が不甲斐ない……
だから琴音は召されてしまった……と。」
「………瑛太……琴音を逝かせたのは……」
瑛太は京香の唇に手を当てて黙らせた
「悔やんだら……琴音が哀しみます
琴音は音弥の中で生きているのですから……
時々……音弥を見てると……
家を出て行った時の琴音に重なります……
私は康太が一番だった
我が子より……康太が一番だった……
もっと琴音と遊んでやれば良かった……
悔いなら私の方が強いかも知れません
でも……悔やむのは止めましょう……
悔やんだら琴音が生きていた軌跡を……
悔やませてしまう事になる」
「………瑛太……翔は……性格も考え方も総てが……お主に似ている……
見ないフリをしようとしても……
一緒にいれば……重ねてしまう……
我は……責任感の強い翔が心配じゃ……」
「康太の子ですから……心配せずともよいのです
それより私の方が男前です!
性格も私の方が柔和です!」
対して変わらないのに……
対抗意識を燃やす
京香は笑った
「瑛太……お主程の男前はおらぬ
我は……一目惚れであった……」
「私も君に一目惚れでしたよ?
凜として君は美しい……
私の自慢の妻です!」
「………瑛太……我は嬉しい……」
瑛太は京香を抱き締めた
その時ドアをノックされた
放っておいたら……
「瑛兄……京香は病人だぞ……」と言う声がした
振り返らずとも解る……康太だった
「妻を労っているだけです!
京香は日頃から飛鳥井の為に惜しみなく働いています
そんな妻を労っているだけです」
「夫婦仲……いいやん」
「当たり前です!
瑛智の妹を作る勢いなのですから!」
瑛太が言うと康太は嬉しそうに笑った
「女の子……作れよ瑛兄…」
琴音の様に可愛い女の子を……
康太は想った……
「飛鳥井の女なら……勇ましい女性にしかなりません…」
榊原は……可愛いの下りが絶対に無理だと想った
綺麗の様に勇ましい女性にしかならない気がしてならない……
瑛太は笑っていた
京香も笑っていた
二人はよく似た笑みを浮かべて康太を見ていた
共に生きる盟友よ
この先も共に護ろう……
そんな瞳で二人は見つめ合っていた
康太は京香に
「もっと甘えてイチャイチャしろよ!」と言った
「………え?しておろう……」
「んとに、女の子を作る勢いで励めよ!」
「………そう言われると恥ずかしいであろうが!」
「……あ………視えちまった……」
「何がじゃ?」
「翔は……京香によく似た女を選ぶな……
アイツはマザコンか?」
言う気がないと解ると京香は
「康太に似たのを選ばねばマザコンにはならぬ!
翔は誰よりもマザコンなのに……上手く甘えられないのじゃ……」
「瑛兄に似てるかんな」
康太はそう言い笑った
瑛太は嫌な顔をした
「京香も元気そうだしな
オレは帰るかんな!」
「康太……ありがとうなのだ……」
康太は片手をあげて笑うと……帰って行った
瑛太は何も言わずに京香を抱き締めた
京香は「追いかけて食事を奢るのだ瑛太…」と言った
瑛太は瞳で『良いのですか?』と問い掛けた
「我の一番とお主の一番は同じで在ろう!
なれば、此処は追いかけて行ってお腹一杯に食べさせて欲しいと想うのじゃ」
「では追い掛けます
また明日来ます」
瑛太はそう言い康太を追いかけた
京香は笑ってそれを見送った
幸せだと京香は胸一杯幸せを噛み締めていた
飛鳥井康太がくれた幸せだった
「康太……我は幸せじゃ……
だからお主のくれた幸せを噛み締めて……
笑っていたいのじゃ……」
京香はそう呟き笑った
優しい慈愛に満ちた笑みだった
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