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第129話 慎一には敵わない‥‥

朝、5時に起床 洗顔して歯磨きして布団を畳む 子ども達が起きるから、そっと部屋を出てキッチンに向かう すると掃除中の榊原と出くわす 「慎一、おはよう」 足取り軽い榊原はご機嫌だった ………こんな時……康太はヘロヘロだろな…… と、主を想った だが主が幸せなら良い         慎一は主の幸せだけを願っていたから…… 「伊織、おはようございます」 挨拶をして、キッチンに行くと緑川綾香が大切にしていた【ぬか床】を搔き回す 365日 欠かす事なく慎一はぬか床を搔き回していた そして主の為だけに漬物を漬ける 井筒屋の沢庵を食べれない康太の為に消化の良い柔らかな漬物を、慎一自ら漬けていた 康太の朝食は和食だ 朝からご飯、味噌汁、漬物、納豆 を食べる その食生活は変わる事はない 榊原や瑛太、清隆、一生、聡一郎、隼人はサラダと珈琲だった 子ども達は食パン半分を焼いて食べていた 玲香と京香は康太と同じ和食を食べていた 「慎一、この漬物、めちゃくそ美味ぇな!」 ニコッと笑って言われると…… 慎一の苦労が報われた瞬間だった 京香も脱帽の料理の腕前だった 食えない時に殆どの仕事はやった慎一は料理の仕事もしていた だがそれだけではダメだと、康太に仕える様になって料理の勉強を始めた 料理教室にも通って料理を極める 味覚はプロ並みで教師も絶賛していた 有名料亭で働かないか……と言われたが断った 「俺は主の為だけにしか料理をする気はありません!」 と言ってのけた 料亭の主人は「君の思いは天晴れだ!」と言ってエールを贈った 料理教室始まって以来の快挙だったのに…… 惜しまれる声も大きかった 「主の元以外で生きる気は皆無ですので……」 言われれば引くしかない 惜しまれる程の腕を、せっせと主の為に使っていた 主の食事の支度をすると康太の子ども達を見に子供部屋に行く すると和希と和真と北斗が子ども達のパジャマを脱がせて着替えを手伝っていた 「じぶゅんでやりゅ!」 そう言うと和希達はやらせて見ていた そしてちゃんと出来ると褒めて、出来なくても凄かったよ…と褒めていた 慎一が部屋に入って来たのに気付くと嬉しそうに笑った 「父さん!」和希は笑って言われると 「おはよう」と和真は挨拶した 双子でも……和希と和真は性格が違っていた 明るい屈託のない性格の和希と 寡黙で有言実行の和真 静かだが……その芯は父親似で強い 北斗も「慎一君!おはよう」と挨拶した 慎一の事を北斗は頼りにしていた 北斗の言葉を聞く為にしゃがみ込んで聞いてくれる大人だった 叔父さん……とは言いたくなかった もっと近い存在だったから…… 慎一は北斗のおでこに手を当てた 「熱はありませんか?」 「大丈夫だよ!慎一君 オペ後は結構元気になったよ」 「無理はダメですよ?」 「無理してない……から……」 「なら良いです」 そう言い慎一は北斗の頭を撫でて、和希と和真の頭も撫でた 「父さん!授業参観来てね!」と和希が甘えた 和真も「僕、頑張って手を上げるね」と言い笑った 北斗は淋しそうな顔をすると和希と和真は 「北斗、父さんが来てくれるよ!」だから大丈夫……と笑った 北斗は頷いた 楽しい事も、哀しい事も、全部3等分 持ってるお菓子も、総て3等分にしていた 慎一は「北斗の教室もちゃんと顔を出します!ですので心配しなくて大丈夫です」と安心させた すると北斗は笑って 「なら僕も頑張るね」と言った 子ども達と一緒に康太の子供を連れて行こうとすると隼人と瑛太が顔を出した 瑛太は「私も連れて行きましょう」と協力してくれた 隼人が流生の手を取った 流生は上手に階段を下りて行った 「凄いのだ流生!」 「ひゃやと!りゅーちゃ ぎゃんびゃっちぇる!」 「ならオレ様も頑張るのだ!」 隼人はそう言い笑った 子ども達をキッチンに連れていき椅子に座らせた そして食事を置く 最近は自分達で食べる様になっていた 康太は和希と和真と北斗に 「授業参観、皆で行くかんな!」と伝えた 康太が言うと流生は手を上げて 「りゅーちゃも!」と名乗りを上げた 「……流生は保育園があるかんな……」 康太が言うと……流生は哀しそうに泣き出した 慎一は立ち上がり流生の顔を拭いた 「流生、幼稚舎の入園前の健康診断ありますよ? 自分で服を着れる様になりましたか?」 慎一は話題を変えた 「れちる!りゅーちゃ ふきゅ ちれる!」 「頑張ってますね!」 流生の頭を撫でて「翔は?」と問い掛けた 「かけゆ ちれる!」 「翔はバッチリですね 音弥と太陽と大空は?」 慎一が尋ねると音弥は頑張って鼻息荒く 「おとたん!ちれる!」と言いボタンを外した お腹を見せて……ボタンを一つずつはめ始めた それには家族が驚いていた 瑛太は「凄いですね」と呟いた 太陽と大空も「ちれる!」と叫んだ 子供の成長を…… 何気ない朝食の風景の中で見つけた 家族は笑顔で子ども達を見ていた 慎一も笑っていた 玲香は……そんなに何もかも出来て優しいなんて…… 誠……反則よのぉ~慎一は…… と想った モテそうな顔してるのに…… 眼中にあるのは主の事ばかり…… 慎一のパーフェクトさは…… 飛鳥井の誰一人敵わなかった……

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