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第131話 飛鳥井の休日

※この話は何も問題がなく  平凡な日常を書いてます   本編とは切り離して見て下さい 康太は大きなあくびをした 榊原は「眠いのですか?」と問い掛けた 「ん?何か平和すぎて…」 ……眠くなる……と康太は言った 榊原は笑って「良い事じゃないですか…」と言った 「……ん……だな」 康太はそう言い榊原の膝の上に転がった 日曜日に家族が全員揃って応接間にいるのは珍しい事だった 悠太は子供たちと笑って遊んでいた 「ゆーちゃ!ちゅみき!」 流生が悠太がくれた積み木で遊んでいた 「流生、おうち作って?」 悠太が言うと流生はおうちを積み木で作った そしてパチパチ手をたたいた 音弥は隼人の上で丸くなって寝ていた 隼人も眠っていた そうして寝ている顔を見れば親子だと解る…… 太陽と大空は瑛太の膝の上にいた 翔は玲香の上にいた 太陽が「えいちゃ!」と呼ぶ 「何ですか?」瑛太がニコニコ笑って答えた 大空が「らんどちぇる ほちい」と訴えた そして太陽と顔を見合わせて「ねぇ~」と笑った 瑛太は固まった…… 「ランドセル……欲しいのですか?」 「ちょう!」太陽が嬉しそうに答えて 「ほくちょ かじゅき かじゅま たのちちょう!」と大空が答えた ランドセルを背負うのがお兄さんに見えるお年頃だった 瑛太は困って榊原を見た 「………強請られたら買ってしまいそうです…」 榊原は苦笑した 「………義兄さん……まだ早いです……」 「解ってるんですがね…… 強請られたら買ってしまうんです」 と瑛太が言うと玲香が 「そうであったな! 康太がランドセル欲しいと太陽と大空の年の頃に言ったら、買ったものな バイトして最高に高いの買ったものな!」 と爆笑して思い出していた 瑛太はいやな顔をした 「………母さん……それは……」 「それは今も変わっておらぬであろうて」 「………否定はしませんが……」 改めて言わなくても……… 瑛太はブチブチ呟いた 流生も「らんどちぇる!ほちい!」と名乗りを上げた 寝ていた音弥も「おとたんもぉ!」と寝ぼけて言った そうなると翔も…… 「かけゆも!」とボソッと言った 康太は起き上がると 「ランドセル背負うとな学校に行かねぇとダメなんだぜ?」とダメだしした 「りゅーちゃ ちょうらっきょう いきゅ!」 「………行けねぇ……ってどう言ったら解るんだ?」 榊原も苦笑していると…… インターフォンが鳴った 慎一がカメラを作動すると、珍しい顔ぶれが立っていた 「康太、清四郎さんと真矢さんと貴史と堂嶋さんです」 「………え??どう言う組み合わせよ?」 康太は起き上がると自ら玄関に向かった ドアを開けて笑って出迎えた 「どうしたよ?珍しい顔ぶれやん」 康太が言うと兵藤が 「正義さんが兵藤の家に来てたんだよ ついでだから飛鳥井にも顔を出そうと来たら、清四郎さんたちがいたんだよ」 と説明した 慎一がスリッパを用意して招き入れた ドアを閉めようとしていたら、神野が飛鳥井に来ようとしていた 「晟雅、どうしたよ?」 「瑛太の顔を見に来ました」 「入れよ!」 神野を招き入れ応接間にいくと、音弥が堂嶋に飛びついていた 「ちぇいぎたん!」 「おお!音弥、元気か?」 「ぎぇんきらよ!」 音弥はそう言い堂嶋にキスした 「じゅるい!」 太陽と大空も堂嶋のズボンに掴まった 堂嶋はニコニコと太陽と大空を膝の上に乗せた 流生は「ひょーろーきゅん」と手を伸ばした 「流生、元気かよ?」 「りゅーちゃ ぎぇんき」 「そうか!良かった」 兵藤は流生を抱き上げて膝の上に乗せた 真矢は翔に声をかけた 「翔!ばぁちゃよ!」 「ばぁちゃ ぎぇんき?」 「元気よ!翔は?」 「かけゆ………らめなきょ……」 翔はそう言いクシュンと俯いた 真矢は翔を抱き上げてキスした 「翔は良い子よ? ダメな子なんて誰が言ったの? ばぁちゃ起こってあげるわ!」 「………かぁちゃ……」 「………康太が………」 真矢は言葉もなかった でも約束だから「康太!」と怒った 「翔の何処がダメなの!」 「翔は目に視えるモノしか視ねぇかんな… 少し怒ったんだよ…… 真贋は目に視えねぇ先を視ねぇと仕えねぇかんな!」 「………それでも……こんなに落ち込ませて……」 「オレが真贋だった頃は親と口をきく事すらさせて貰えなかった それに比べたら……随分甘い……と想うが?」 真矢は……言葉もなかった 兵藤が翔を抱き上げると 「おめぇはそうやって育ったかも知れねぇ だけど翔は、そうやって育ててねぇ なのに比べるのは……間違いじゃねぇのかよ? 翔は翔として修業させて行けば良いんじゃねぇのかよ? 欺瞞だよ?康太」 「………悪かった…… でも……翔を飛鳥井の真贋として継がせねぇといけねぇんだ……」 「俺は飛鳥井の家の事に口出しする気はねぇ………けどな康太…… こんな小さいうちに修業させて追い込むのはやめてやれ!」 「………そう想うんだけどな…… 修業に入るとつい厳しくなる……」 「お前は遺すが定め……だからな 翔を立派な真贋にする義務がある だけどお前と翔は違う…… お前が……そう育てたんじゃねぇのかよ?」 「………貴史……悪かった……」 言わせてしまった事に……康太は詫びを入れた 翔は康太のそばに行き 「かけゆ もっちょ ぎゃんびゃる!」 と宣言した 康太は翔を抱き締めた 「修業してねぇ時は頑張るな……」 「かけゆ ちんぎゃん!」 「飛鳥井を背負って立たねぇといけねぇんだよ…… おめぇに……苦しい想いや悲しい想いをさせても……果てを狂わす訳にはいかねぇんだ」 「わかっちぇる!かけゆ……やりゅ!」 康太は翔の頭を撫でた 康太は翔を膝の上に乗せると耳元で 「目を閉じろよ…」と言った 翔は目を瞑った 「心の目で視るんだ お前なら出来るだろ? 貴史を頭に浮かべろ」 翔は兵藤の姿を頭の中で浮かべた 「兵藤貴史……貴史の果てを視るんだ」 兵藤貴史の果てを……翔は視ようとした 頭の中の兵藤が歪んで……… スーツに身を包んだ兵藤が視えた 大きな建物の前に立つ兵藤が視えた 「かぁちゃ……」 「目を開けて……貴史を視ろ!」 目を開けて兵藤を視た 兵藤と果ての兵藤が……重なって視えた 目を凝らせば果ての兵藤は鮮明に視える 「お前にも視えたろ? それが貴史の果ての姿だ!」 「ちぇいじきゃ?」 「そうだ!政治家になるんだ これから……翔は多くの人の果てを視る事になるだろ? だけど…望むべき果てばかりじゃねぇ…… 心を強く持たねば……闇に捕らわれてしまう 闇に捕らわれれば……もう飛鳥井の真贋ではいられねぇ…… それは忘れるな……」 「かけゆ もっちょ ちゅぎょうちゅる!」 「頑張ろうな翔」 「あい!」 翔は返事した 堂嶋はそれを見ていて胸が痛んだ…… 飛鳥井と言う特殊な家庭に生まれた定めを…… 思い知らされた 日々鍛錬に励み生きて逝かねばならない…… 翔は堂嶋を視た もう無垢な子供の瞳はしていなかった 果てを視れる者だけの…… 瞳をしていた 「かぁちゃ ちぇいぎ ひょーろーきゅんといちる」 「だな……視える様になったら先の修行に行くぞ……良いな翔…」 「かけゆ ぎゃんびゃる……」 そう言い目を擦っていた 力を使うと眠くなる…… 翔は眠りに落ちた 流生は康太を睨み付けていた 一生が流生の頭をゴツンッ叩いた 「そんな目で……かぁちゃを視るな!」 「ちゅぎょう ごじんでちゅる!」 なのに何故翔だけに言うんだ……と流生は怒っていた 真矢は流生の傍まで行って抱き上げた 「流生、あら、オムツ取れたのね?」 抱き上げてオムツじゃない感覚に真矢は驚いた 「ちょう!りゅーちゃ おむちゅ なにゃにゃい!」 そう言いポンポンと叩いた 「………大きくなるのね……」 そのうち……遊びに来てもいなくなるんだろうな…… と真矢は淋しくなった 子供の成長は早い…… 愛して育てた子が……今では……大人のだ 真矢は榊原を見た 榊原は笑っていた 家では見た事もない笑顔で笑っていた 「母さん……翔達はまだオムツが取れたばかりです……」 と、そんな不安はまだ早いと言った 「なら、オネショが大変ね……」 真矢がそう言うと…… 子ども達はピキッと固まった 「……え?何?」 真矢が問い掛けると清隆が 「飛鳥井の三階のベランダにお布団が干してあったら……… それは子ども達がオネショしたのです」 笑ってネタバレを教えてあげた 子供らしい一面に真矢も堂嶋も笑った 神野はほのぼのとした会話にやはり笑っていた 流生は「ちょれ……らめ!」と走って清隆の口を押さえに行った 「じぃたん……らめ!」 「駄目でしたね! じぃたん……嫌いになりましたか?」 「りゅーちゃ じぃたん らいちゅき!」 「私も流生が大好きですよ」 清隆は流生の頭を撫でた 清隆の腕から抜け出て流生は康太の前に立った 「………かぁちゃ……」 「あんだよ?流生」 「………ぎょめん……」 「あんで謝るんだよ?」 「りゅーちゃ かぁちゃ にらんら」 「それは翔だけ怒ったからだろ?」 流生は頷いた 泣きそうな顔をすると、音弥と太陽と大空が流生を護る様に立った 「翔は次代の真贋だかんな…… もっと修業を積まねぇとダメなんだよ そのうちお前達とじゃ雲泥の差の修業となる……それが定めだ……」 「……ちょれれも……かけゆ……まもりゅにょ…」 「そうか……お前達は5人で仲良く成長するんだったな……」 「りゅーちゃ……まちゅぎゃい?」 「間違ってねぇよ…… お前達は翔を護ってやれ……」 康太が言うと流生と音弥と太陽と大空は頷いた 堂嶋は「……この子達の行く末は……厳しいですね……」と案じて言葉にした 「賽は投げられた…… 後は歯車が狂わねぇ様に油を差して導くだけだ…… この子達はある程度大きくなったら…… 会社の仕事をさせると決めてる… オレは…そんなに長くは生きられねぇから……我が息子に託さねぇとならねぇ事が沢山ある……時間が足らねぇんだよ……」 「………坊主……そんなことは言うな……」 堂嶋は康太を抱き締めた…… 「………お前が死ななくて良い方法があるなら……俺はどんな事でもしてやる…… だから……そんな事は言うな……」 「正義……悪かった……」 堂嶋は康太の頭を撫でた そして慎一に「お寿司を取って下さい」と言いカードを渡した 「正義さん……」 「飲み明かしましょう!瑛太」 「良いですね正義さん 晟雅も来てます 清四郎さんもいます 魔王と百年の孤独を戴いたんですよ!」 瑛太はそう言い応接間のサイドボードのドアを開けてお酒を取り出した 「ブランデーもウィスキーも焼酎も好きなの飲んで下さい!」 酒屋顔負けの品揃えだった わざわざ瑛太のお酒のコレクションを入れる為のサイドボードを作ったのだった そこに瑛太のお酒のコレクションを並べるのが……楽しみだった コレクションしたお酒を皆で飲む 最近の瑛太の楽しみだった 中々帰らない兵藤が気になり美緒が飛鳥井を尋ね…… 真矢と玲香と共に飲み始めた 栗田が恵太と茶太郎と共に遊びに来た 「楽しそうですね」 と上がり込んで堂嶋や神野と共にお酒を飲み始めた 源右衛門が生きてれば喜ぶであろう雰囲気だった 康太は応接間に飾ってある源右衛門の写真を見た じぃちゃん……人が集まれば飲んでたよな 康太が想いに耽っていると、慎一がお酒をグラスについで…… 何時も源右衛門が座る席にお酒を置いた 玲香はそれを目で追い…… グラスを掲げた お義父様……飛鳥井は今も…… 人が集まれば宴会を開いております   『酒は血と同じじゃ    共に飲めば血も混ざる    共に飲めば共に生きられる    酒は嘘はつかん    だから飲んで共に笑い……    共に泣こうじゃないか……』 源右衛門のしゃがれた声が……     聞こえた気がした

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